第108回
108AM007|第108回 保健師国家試験 過去問
プリシード・プロシードモデルの説明で正しいのはどれか。
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正解1
正答
1.地区活動の評価に活用できる。
この問題のポイント
プリシード・プロシードモデルの構造を問う問題です。押さえるべき点は、最終目標、各段階の役割、他の健康行動理論との違いの3つです。「最終目標はQOL」「前半はアセスメント(診断)、後半は評価」「計画から評価までを一続きで扱う」の3点が分かっていれば、地区活動の評価に使えるという記述を選べます。
解説
モデルの成り立ちと全体像
プリシード・プロシードモデルは、グリーン(Green, L.W.)らが提唱したヘルスプロモーションの計画・評価モデルです。前半のプリシード(PRECEDE)は、地域の課題を診断して計画を立てる部分です。後半のプロシード(PROCEED)は、政策・組織面の手当てをしながら事業を実施し、評価する部分です。名称は、前半が準備・強化・実現の3要因、後半が政策・規制・組織的要因を含む頭字語であることに由来します。
日本の教科書で広く使われている8段階版(第4版)の構成は次のとおりです。
- 第1段階 社会アセスメント:住民が望む生活の姿、QOL、地域の関心事を把握します。
- 第2段階 疫学アセスメント:QOLを妨げている健康問題を特定し、それに関わる行動・ライフスタイルと環境要因を明らかにします。
- 第3段階 教育・エコロジカルアセスメント:行動と環境に影響する準備要因(知識・態度・信念・価値観)、強化要因(家族・仲間・専門職からの励ましや評価)、実現要因(技術、資源、サービスの利用しやすさ)を分析します。
- 第4段階 運営・政策アセスメントと介入の調整:予算・人材・組織・政策の条件を検討し、介入を組み立てます。
- 第5段階 実施
- 第6段階 経過評価:計画どおりに実施できたかをみます。
- 第7段階 影響評価:3要因や行動・環境が変化したかをみます。
- 第8段階 結果評価:健康状態とQOLが改善したかをみます。
以前の9段階版では、行動・環境の診断が独立した段階でした。そのため第1〜5段階が診断、第6段階が実施、第7〜9段階が評価になります。どちらの版でも、前半は診断、後半は評価という骨格は変わりません。
このモデルの考え方の特徴
- ゴール(QOL)から出発し、その阻害要因を原因の方向へさかのぼって分析します。「何をするか」より先に「住民がどうなりたいか」を確かめる点が特徴です。
- 評価の段階は、診断の段階を逆向きにたどる形で対応しています。経過評価は実施内容に、影響評価は3要因と行動・環境に、結果評価は健康とQOLに対応します。このため、計画を立てる時点で評価指標も同時に決められます。
- 健康は、QOLを実現するための資源・手段と位置づけられています。個人の行動だけでなく、環境や政策にも働きかけるエコロジカル(生態学的)な視点をもちます。
保健師活動での使い方
例として、「いつまでも自分の足で買い物に行きたい」という高齢住民の願い(QOL)から考えてみます。
- 疫学アセスメントでは、転倒や要介護状態の問題を整理します。行動面では運動習慣、環境面では集いの場の不足を捉えます。
- 教育・エコロジカルアセスメントでは、3要因に分けて考えます。準備要因は運動の必要性の理解、強化要因は仲間や家族の励まし、実現要因は歩いて通える体操教室です。
- そのうえで予算や関係機関との連携を調整し、事業を実施します。
- 評価も3段階で行います。経過評価は教室の開催状況、影響評価は参加者の運動習慣の変化、結果評価は健康状態や生活の満足度の変化です。
このように、地域診断から計画・実施・評価までを1本の筋で設計できます。そのため、地区活動の計画づくりと評価の両方に活用されます。
選択肢の確認
1.地区活動の評価に活用できる。:正答。このモデルには後半に経過評価・影響評価・結果評価の段階があります。前半の診断と対応させて評価指標を設定できるため、地域診断に基づく地区活動や保健事業の評価に活用できます。計画づくりにとどまらず、評価までを含むことがこのモデルの大きな特徴です。
2.最終目標は「健康の向上」である。:このモデルの最終目標は、社会アセスメントで捉えるQOLの向上です。健康はそこに至るための手段・資源として位置づけられています。健康状態の改善は結果評価の対象にはなりますが、最終到達点ではありません。「健康そのものをゴールとする」と取り違えやすいため、ゴールがQOLである点を確実に覚えておきます。
3.第1〜4段階が評価を行う段階である。:第1〜4段階は、社会・疫学・教育エコロジカル・運営政策の各アセスメント(診断)を行う段階で、評価の段階ではありません。8段階版では評価は第6〜8段階です。9段階版でも評価は第7〜9段階で、いずれの版でも前半は診断・計画に充てられています。
4.行動変容の段階に応じた働きかけを示したモデルである。:これはトランスセオレティカルモデル(多理論統合モデル)の説明です。このモデルは、行動変容を無関心期・関心期・準備期・実行期・維持期のステージで捉え、ステージに合った働きかけを示します。プリシード・プロシードモデルも行動を扱いますが、行動を規定する準備・強化・実現要因と環境・政策を分析する地域全体の計画評価モデルであり、個人の変容段階に応じた介入を示す理論ではありません。
覚えるポイント
- プリシード・プロシードモデルの最終目標はQOLの向上です。健康はQOLのための手段と位置づけられます。
- 8段階版は「第1〜4段階がアセスメント、第5段階が実施、第6〜8段階が評価」です。9段階版では診断が第1〜5段階、評価が第7〜9段階になります。
- 評価は3種類です。経過評価は計画どおり実施できたか、影響評価は3要因と行動・環境の変化、結果評価は健康状態とQOLの変化をみます。
- 行動に影響する3要因を区別します。準備要因は知識・態度・信念、強化要因は周囲からの励まし・評価、実現要因は技術・資源・利用しやすさです。
- 行動変容ステージ(無関心期〜維持期)に応じた支援はトランスセオレティカルモデルで、別の理論です。
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