第108回

108AM008|第108回 保健師国家試験 過去問

地域包括ケアシステム構築のために行われる活動について正しいのはどれか。

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正解2

正答

2.既存のケアシステムの実態把握を行う。

この問題のポイント

地域包括ケアシステムを「誰が」「どの手順で」「どの方向に」作るのかを問う問題です。構築は、介護保険の保険者である市町村(特別区を含む)が中心となり、都道府県の支援を受けて進めます。構築は地域の特性に応じて進め、その第一歩は地域の課題と既存の社会資源を把握することです。「入院を主体」「部門ごと」という語は、在宅生活の継続と包括的・一体的な提供という理念と正反対なので除外できます。

解説

地域包括ケアシステムとは

地域包括ケアシステムは、重度な要介護状態になっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けられるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援を一体的に提供する体制です。出題当時、厚生労働省は団塊の世代が75歳以上となる2025年を目途に構築を進めていました。

法律上は、地域における医療及び介護の総合的な確保の促進に関する法律(医療介護総合確保法)に定義があります。「地域の実情に応じて」医療、介護、介護予防、住まい、自立した日常生活の支援が包括的に確保される体制とされています。整備の単位は、おおむね30分以内に必要なサービスが提供される日常生活圏域で、具体的には中学校区が想定されています。

誰が作るのか

高齢化の速さ、医療・介護資源の量、住民同士のつながりは、大都市と過疎地などで大きく異なります。そのため全国一律の型はなく、介護保険の保険者である市町村(特別区を含む)が中心となり、都道府県と連携して地域の自主性や主体性に基づいて作り上げます。都道府県は広域的な調整や市町村への支援を担いますが、介護保険の保険者ではありません。国は、理念の提示、法制度や介護報酬の整備、財政支援、手引きやデータ基盤(地域包括ケア「見える化」システムなど)の提供を通じて、市町村を支援する立場です。

どのような手順で作るのか

厚生労働省は、市町村における構築のプロセスを次のように示しています。

  • 地域の課題の把握と社会資源の発掘:介護予防・日常生活圏域ニーズ調査、地域ケア会議での個別事例の検討、医療・介護情報の分析を行い、地域にある医療機関、介護事業所、住民組織、ボランティアなどを把握します。
  • 地域の関係者による対応策の検討:介護保険事業計画や医療計画、地域ケア会議などの場で検討します。
  • 対応策の決定・実行:サービス提供体制の整備、医療と介護の連携、住民参加の仕組みづくりを進めます。
  • その後はPDCAサイクルで評価し、見直します。

選択肢2はこの第1段階にあたります。これは保健師が行う地域診断と同じ発想です。ゼロから新しい仕組みを作るのではなく、まず地域ですでに機能している連携や支え合いを把握します。そのうえで強み、不足している部分、つながっていない部分を明らかにし、既存の仕組みを活かしながら補っていきます。

どの方向を目指すのか

  • 在宅中心:入院・施設中心から、住み慣れた地域での生活継続へと転換します。入院が必要なときは入院し、退院支援と在宅医療・介護によって地域に戻る流れを作ります。
  • 包括的・一体的:保健・医療・福祉・介護の縦割りを越えて、多職種・多機関が連携します。地域ケア会議や在宅医療・介護連携推進事業は、そのための仕組みです。
  • 自助・互助・共助・公助の組み合わせ:制度によるサービスだけでなく、住民同士の支え合いも資源として位置づけます。

保健師は、市町村や地域包括支援センターで地域診断、地域ケア会議の運営、住民組織の育成などを担います。この問題の知識は、そのまま実践の手順につながります。

なお、目標年とされた2025年を過ぎた現在も、2040年頃を見据えて、このシステムの深化・推進が続けられています。対象も高齢者に限らず、精神障害にも対応した地域包括ケアシステムや地域共生社会へと考え方が広がっています。

選択肢の確認

1.地域の特性に応じて国が作り上げる。:地域包括ケアシステムは、介護保険の保険者である市町村が中心となり、都道府県と連携して作り上げます。国が全国一律に作るものではありません。前半の「地域の特性に応じて」は正しい記述で、主体を「国」とした点が誤りです。国は理念や法制度、財政支援、手引きの提示によって市町村を後押しする立場です。主体を問う問題では、国・都道府県・市町村の入れ替えがよく出題されるので注意しましょう。

2.既存のケアシステムの実態把握を行う。:正答。構築プロセスの第一段階は、地域の課題の把握と社会資源の発掘です。すでに地域にある医療・介護サービス、住民の支え合い、関係機関の連携がどの程度機能しているかを把握することが出発点になります。ニーズ調査や地域ケア会議で得た情報をもとに課題を明らかにし、対応策の検討へ進みます。

3.入院を主体とするサービス体制を中心に整備する。:地域包括ケアシステムは、住み慣れた地域で最期まで暮らし続けることを目指す仕組みです。そのため、在宅生活を支えるサービス体制が中心になります。入院医療が不要というわけではなく、急性増悪時には適切に入院し、退院支援と在宅医療・介護の連携で地域へ戻れるようにすることが求められます。入院を主体に整備するのは、病床の機能分化と在宅医療の充実を進める方向とも逆です。

4.保健医療福祉部門ごとの体制に合わせて構築する。:部門ごとの体制に合わせて作ると縦割りが残ります。その結果、医療と介護の両方を必要とする人など複数の課題を抱える高齢者に、切れ目のない支援を提供できません。住まい・医療・介護・予防・生活支援を一体的に提供するため、部門・職種・機関を越えた連携体制を築くことが求められます。既存の体制を「把握する」ことと、既存の部門の枠に「合わせる」ことは別物だと区別しましょう。

覚えるポイント

  • 介護保険の保険者は市町村(特別区を含む)です。地域包括ケアシステムは市町村を中心に、都道府県の支援・広域調整を受けて、地域の特性に応じて作ります。国は枠組みづくりと支援を担います。
  • 5つの構成要素は住まい・医療・介護・予防・生活支援で、これらを一体的に提供します。単位は日常生活圏域(おおむね30分以内、中学校区)です。
  • 構築の手順は、①地域課題の把握と社会資源の発掘 → ②関係者による対応策の検討 → ③対応策の決定・実行で、その後PDCAで見直します。
  • 目指す方向は、入院・施設中心から在宅中心へ、部門別の縦割りから包括的な多職種連携へ、です。
  • 自助・互助・共助・公助の区別:互助は住民同士の自発的な支え合い、共助は介護保険などの社会保険、公助は生活保護など税による公的支援です。
  • 地域ケア会議の5機能は、個別課題解決、ネットワーク構築、地域課題発見、地域づくり・資源開発、政策形成です。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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