第108回
108AM043|第108回 保健師国家試験 過去問
次の文を読み41〜43の問いに答えよ。市の高齢福祉課で運営していた認知症サポーター養成講座の受講者が年々減っていた。講師を担当するキャラバン・メイトで家庭の事情等で活動できない人が増え、講座開催回数が減っていたことが原因として考えられた。そこで、各地域の実情に応じた認知症サポーター養成事業を展開するために、認知症サポーター養成講座を市内の各地域包括支援センターによる運営とし、保健師が担当することになった。地域包括支援センターが運営する認知症サポーター養成講座を修了した人は徐々に増えていった。担当保健師は、地域における日常生活での見守りの体制をさらに構築するために、一層の普及啓発活動を推し進める必要があると考えた。今後の活動として適切なのはどれか。
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正解4
正答
4.地域の交通機関の職員に認知症サポーター養成講座への受講を呼びかける。
この問題のポイント
地域包括支援センターが運営する養成講座で修了者が増えてきた段階で、「日常生活での見守りの体制」をさらに広げるために、次にどのような普及啓発を行うかを問う問題です。判断の鍵は、認知症の人が日常生活で接する機会の多い職域(交通機関・金融機関・小売店など)に理解者を増やすという、認知症サポーター養成の考え方です。施設整備や、対象を限定した働きかけとの違いを見分けることが求められます。
解説
問題文の手がかり
- 「各地域の実情に応じた」は、講座の運営を地域包括支援センター単位に移した目的を示しています。
- 「修了した人は徐々に増えていった」から、住民向けの養成は軌道に乗りつつあると分かります。
- 「日常生活での見守りの体制をさらに構築」「一層の普及啓発」から、次の段階は見守りの担い手の裾野を広げることだと読み取れます。
つまり問われているのは、介護サービスを増やすことでも、特定の人への個別支援でもありません。認知症を正しく理解して地域で見守る人を、これまで講座が届いていなかった層にまで広げる方策です。
認知症サポーターとその養成の方向性
認知症サポーターは、認知症サポーター養成講座(おおむね60〜90分)を受講し、認知症について正しい知識と理解をもって、認知症の人やその家族を温かく見守る「応援者」です。講師はキャラバン・メイトが務め、講座は自治体のほか企業・職域団体なども主催します。サポーターに特定の活動が義務づけられているわけではありません。日常生活や職場の中で、できる範囲で困っている様子に気づき、声をかけて手助けし、必要に応じて地域包括支援センターなどへつなぐことが期待されています。
新オレンジプラン(認知症施策推進総合戦略、2015年)と、出題当時の国の方針である認知症施策推進大綱(2019年)では、住民だけでなく、認知症の人と地域で関わることが多い職域の従業員への養成を拡大することが掲げられていました。大綱では小売業・金融機関・公共交通機関などが挙げられ、子ども・学生への養成拡大もあわせて示されています。認知症の人が安心して外出し、買い物や移動ができる「認知症バリアフリー」を進めるには、生活の場で働く人の理解が欠かせないからです。
交通機関の職員に働きかける意味
認知症の人は、切符の購入や乗り換え、行き先の確認などでつまずきやすく、道に迷って行方が分からなくなることもあります。駅員やバス・タクシーの運転手は、こうした場面に最初に立ち会いやすい立場です。講座で認知症の特徴と対応の基本(驚かせない・急がせない・自尊心を傷つけない)を学んでいれば、異変に早く気づけます。そのうえで安全を確保し、家族や警察、地域包括支援センターへつなぐことができます。行方不明時に関係機関が連携して捜索する見守り・SOSネットワークにも、交通事業者が参加していることが多くあります。
担当保健師は地域包括支援センターを拠点に地域の事業所と顔の見える関係をつくり、その職員にも受講を呼びかけます。これにより、住民による見守りに職域による見守りが重なり、地域全体を「面」で支える体制ができます。公衆衛生看護でいう、地域の社会資源の開発とネットワークづくりにあたる活動です。
選択肢の確認
1.認知症対応型グループホームの誘致を高齢福祉課に打診する。:認知症対応型グループホーム(認知症対応型共同生活介護)は、介護保険の地域密着型サービスで、少人数で共同生活を送りながら介護を受ける住まいです。整備は市町村の介護保険事業計画に沿って進めるもので、住民や事業所に認知症への理解を広げる普及啓発にはあたりません。事例には入居の場が不足しているという情報もなく、「日常生活での見守りの体制」を広げる方策としては目的がずれています。
2.ピア活動が行えるように認知症患者に養成講座の受講を呼びかける。:ピア活動は、認知症の本人同士が経験を分かち合って支え合う活動で、本人ミーティングやピアサポート活動などの場で進められています。認知症サポーター養成講座は、認知症の人を理解し見守る側を増やすための講座であり、ピア活動の担い手を養成する仕組みではありません。本人の参画は施策上重要な視点ですが、見守りの担い手を地域に広げるという設問の目的には合いません。
3.認知症の家族と暮らす人を対象とする活動を認知症サポーターに促す。:認知症の人と暮らす家族への支援は大切ですが、家族会や認知症カフェ、相談支援などの枠組みで行うものです。サポーターは特定の活動を義務づけられた立場ではないため、特定の家庭を対象とする活動を促すと負担が大きく、個人情報の扱いにも配慮が必要になります。見守りの対象も限定されるため、地域全体に見守りの網を広げる普及啓発にはつながりません。サポーターの活動を一歩進める場合は、ステップアップ講座を経てチームオレンジとして支援に加わる流れが想定されています。
4.地域の交通機関の職員に認知症サポーター養成講座への受講を呼びかける。:正答。駅員や運転手などの交通機関の職員は、認知症の人が切符の購入や乗り換えで困ったり道に迷ったりする場面に最初に出会いやすい立場です。講座で理解と対応方法を学べば、日常生活の場での早期の気づき、声かけ、関係機関へのつなぎが可能になり、住民に加えて職域にも見守りの担い手が広がります。国の施策で養成拡大の対象とされている職域とも一致します。
覚えるポイント
- 認知症サポーターは、養成講座(60〜90分程度)を受けた「応援者」です。講師はキャラバン・メイトで、特別な活動の義務はなく、日常生活や職場でできる範囲で見守ります。
- 養成拡大の重点対象は、認知症の人と接する機会の多い職域(小売業・金融機関・公共交通機関など)と、子ども・学生です。
- 見守り体制づくりは、理解者の裾野を「面」で広げる普及啓発です。施設整備(グループホーム)や対象を限定した支援とは区別します。
- 本人同士の支え合いはピアサポートや本人ミーティング、家族支援は家族会や認知症カフェという別の枠組みで行います。
- サポーターの発展形は、ステップアップ講座からチームオレンジへの参加です。チームオレンジは、本人・家族のニーズと支援をつなぐ仕組みです。
- 出題当時の国の方針は認知症施策推進大綱(2019年)です。出題後の2023年に「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」が成立し、2024年1月に施行されています。
掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。
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