第108回
108AM044|第108回 保健師国家試験 過去問
次の文を読み44〜46の問いに答えよ。Aさん(35歳、会社員、初産婦)は妊娠8週で母子健康手帳の交付を受けるために市役所を訪れた。地区担当保健師が面接したところ、Aさんは5年前にうつ病で通院していたが、その後症状が軽快し、現在は通院していないことがわかった。Aさんは「実家から引っ越してきたばかりで近所に知り合いがいないため不安です。夫は仕事が忙しく、家事や育児への協力は期待できません」と話した。現時点での保健師からAさんへの提案として、最も適切なのはどれか。
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正解1
正答
1.「市の母親学級に参加してみませんか」
この問題のポイント
妊娠届出と母子健康手帳交付の面接で得た情報から、妊婦の「現時点」のニーズに合う支援を選ぶ問題です。判断の手がかりは、「引っ越してきたばかりで近所に知り合いがいない」「夫の協力は期待できない」という社会的孤立と、うつ病の既往という周産期のメンタルヘルスのリスクです。妊娠8週の段階では、家事の担い手を確保することよりも、地域の中で仲間や専門職とつながり、不安を相談できる関係をつくることが優先されます。
解説
問題文から読み取る情報
- 35歳、初産婦、会社員、妊娠8週:初めての妊娠・出産で分からないことが多い時期です。出産まではまだ時間があります。
- 5年前にうつ病で通院、現在は軽快して通院なし:今は治療中ではありません。ただし、うつ病の既往は妊娠中や産後のうつ病の重要な危険因子です。
- 転入直後で近所に知り合いがおらず、不安を訴えている:主訴は孤立とそれに伴う不安です。
- 夫は多忙で、家事・育児への協力は期待できない:身近な支え手が少ない状況です。
妊娠・出産期は、ホルモンの変化や生活の変化が大きく、うつ病を発症・再発しやすい時期です。うつ病の既往、ソーシャルサポートの乏しさ、パートナーからの支援不足、社会的孤立は、いずれも産後うつ病の代表的な危険因子として知られています。Aさんはこのうち複数に当てはまるため、妊娠早期から継続して見守る必要があります。一方で、現時点では抑うつ症状や日常生活の支障は語られていません。主訴は「知り合いがいない不安」です。そのため最初の支援は、不安の源である孤立に直接働きかけ、支え手を増やすことになります。
母親学級が最適な理由
市町村の母親学級(両親学級)には、妊娠・出産・育児の知識を学ぶ場であることに加えて、次のような働きがあります。
- 同じ時期に出産する妊婦同士が知り合い、産後も続く仲間づくりのきっかけになる
- 保健師・助産師など地域の専門職と顔見知りになり、困ったときに相談しやすくなる
- 初産婦の漠然とした不安を、正確な知識で軽くできる
保健師にとっても、参加の様子からAさんの心身の状態を継続して把握できる機会になります。問いかけの形で提案している点は、本人の意思を尊重した関わりとして適切です。Aさんは会社員なので、平日の参加が難しい場合は、休日開催の回に参加する方法や、産前休業に入ってから参加する方法を一緒に考えるとよいでしょう。
妊娠期からの継続支援
妊娠の届出(母子保健法第15条)と母子健康手帳の交付(同法第16条)は、市町村がすべての妊婦に会える最初の機会です。ここで把握した情報をもとに、妊娠期から産後まで切れ目なく支援する体制につなげます。出題当時、この役割は子育て世代包括支援センター(法律上の名称は母子健康包括支援センター)が担っていました。現在は、2024年4月から子ども家庭総合支援拠点と一体化したこども家庭センターが担っています。
Aさんには、地区担当保健師が相談窓口であることを伝えます。そのうえで、妊娠中の相談、産後の新生児訪問、乳児家庭全戸訪問などを通して状態を確認していきます。抑うつ症状がみられた場合は、精神科医療機関へつなぐことも検討します。
選択肢の確認
1.「市の母親学級に参加してみませんか」:正答。地域での孤立と、初めての妊娠に対する不安という、Aさんの主訴に直接応える提案です。同じ時期の妊婦との仲間づくり、専門職との関係づくり、正しい知識の獲得を同時に進められ、産後の支えにもつながります。うつ病の既往がある妊婦にとって身近な相談相手が増えることは、産後うつ病の予防という面でも意味があります。
2.「実家のご両親に相談されてはどうですか」:家族に相談すること自体は悪いことではありません。しかし、Aさんは実家を離れて転入してきたばかりで、日常的に実家の支援を受けられる状況かどうかは分かりません。仮に相談できたとしても、今暮らしている地域での孤立は解消されず、地域の資源につなぐという保健師の役割も果たせません。実家の支援については、里帰り出産の予定や産後の支援体制を確認するときに、本人の希望として話題にするのが自然です。
3.「家事援助サービスを使ってみてはどうですか」:家事援助サービスは、家事をこなすことが困難な状況で役立つ支援です。妊娠8週のAさんについて、家事ができないという情報はなく、主訴は知り合いがいない不安です。夫の協力が得にくいことから、産前産後の家事支援は今後検討する価値があります。ただし、出産が近づいた時期や産後に必要性を評価して紹介するものであり、現時点で最優先の提案ではありません。
4.「住み慣れると不安も軽くなりますので待ちましょう」:不安を訴える妊婦に様子を見るよう伝えるだけの対応は、訴えを受け止めておらず、支援の機会を逃すことになります。うつ病の既往と孤立という危険因子をもつ妊婦では、不安が抑うつへ進むおそれがあるため、早い段階から支援につなげる必要があります。保健師は、具体的な支援を示し、継続的な関わりを始めるのが基本です。
覚えるポイント
- 産後うつ病の主な危険因子は、精神疾患の既往(特にうつ病)、ソーシャルサポートの乏しさ、パートナーからの支援不足、社会的孤立などです。妊娠届出時の面接で把握し、妊娠期からの継続支援につなげます。
- 妊娠初期の孤立や不安には、まず母親学級のように仲間と専門職につながれる場を提案します。家事支援などの具体的なサービスは、生活上の困難が明らかになった時点で評価して紹介します。
- 「最も適切な提案」は、本人の主訴と現時点での必要性に合っているか、地域の資源につながるかで判断します。リスクのある対象者に、様子を見るだけの対応は選びません。
- 妊娠の届出(母子保健法第15条)と母子健康手帳の交付(同法第16条)は、市町村がすべての妊婦に会える最初の機会です。
- EPDS(エジンバラ産後うつ病自己評価票)は、日本では9点以上を産後うつ病の疑いとする目安で用いられます。
- 切れ目ない支援の拠点は、出題当時は子育て世代包括支援センター(母子健康包括支援センター)、2024年4月からはこども家庭センターです。
掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。
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