第109回

109AM052|第109回 保健師国家試験 過去問

次の文を読み50~52の問いに答えよ。A町は人口1万人で高齢化率40%、後期高齢者の割合が65%と高齢化が進行し、独居高齢者が多い。A町は広大な山間部を有し、山の中腹や谷合に集落が点在している。運動機能が低下すると坂が多いため閉じこもり傾向となる高齢者が多い。近年、介護認定率が急増しており、健康寿命を延伸し住み慣れた地域で生活できるよう、地域包括ケアシステムの構築をめざす取り組みが検討されている。A町の町民のアンケートでは、終末期の療養場所として自宅を希望する者が6割であるが、実際に死亡場所が自宅であるのは1割程度である。そこで、終末期に町民が住み慣れた地域で療養できる体制の構築について検討した。保健師の取り組みで優先度が高いのはどれか。

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正解3

正答

3.在宅医療と介護の関係者の連絡会の企画

この問題のポイント

終末期を自宅で過ごしたいという町民の希望(6割)と、実際の自宅での死亡(1割程度)の大きな差を、地域の「体制」の課題としてとらえられるかを問う問題です。在宅での療養や看取りは、訪問診療、訪問看護、薬局、介護サービスなど複数の機関が連携して初めて成り立ちます。そのため保健師は、個別の支援よりも先に、関係者をつなぐ仕組みづくりに取りかかることが優先されます。

解説

問題文の手がかり

  • 設問の焦点は「終末期に町民が住み慣れた地域で療養できる体制の構築」です。個人への支援ではなく、地域の提供体制をどうつくるかが問われています。
  • 希望が6割あるのに実際は1割程度という差は、本人や家族が望んでいても、在宅療養を最期まで支える医療と介護の体制が整っていないことを示しています。
  • 高齢化率40%、高齢者の約3分の2が後期高齢者、独居高齢者が多い、広い山間部に集落が点在している、という条件があります。ここから、家族の介護に頼りにくく、限られた医療・介護の資源を広い地域で効率よく連携させる必要があると読み取れます。
  • 地域包括ケアシステムの構築をめざしているという記述も、医療と介護を一体的に提供することが課題であることを裏づけます。

在宅療養を支える連携と制度

自宅で最期まで療養するには、次のようなものが必要です。

  • 定期的な訪問診療と24時間対応の訪問看護
  • 疼痛などの症状緩和と薬の管理
  • 介護サービスや生活支援
  • 急変時の連絡と対応の手順
  • 本人の意向を関係者で共有すること

これらは一つの機関だけでは提供できません。在宅医、訪問看護師、歯科医師、薬剤師、ケアマネジャー、介護事業所、地域包括支援センター、病院の退院支援部門などが役割分担を決め、情報を共有しながら動く必要があります。連携が不十分だと、急変時に家族が救急要請して病院で亡くなる、退院の調整がうまくいかず在宅に戻れない、といった事態が起こりやすくなります。

こうした連携を市町村が進める仕組みとして、介護保険法の地域支援事業(包括的支援事業)に在宅医療・介護連携推進事業があります。2014(平成26)年の介護保険法改正で位置づけられ、2018(平成30)年4月までにすべての市町村で実施することとされました。主な取り組みは、地域の医療・介護資源の把握、課題の抽出と対応策の検討、関係者の情報共有の支援や研修、住民への普及啓発などです。その後は、日常の療養支援、入退院支援、急変時の対応、看取りという4つの場面を意識し、PDCAサイクルに沿って進める方向が示されています。

正答に至る判断

関係者の連絡会は、多職種が「顔の見える関係」をつくる場です。地域の課題を共有し、役割分担、情報共有の方法、急変時や看取りのときの対応を話し合う出発点になります。保健師は地域全体を見渡す立場から、関係機関をつなぐ調整役を担います。体制の構築という目的に最も直接結びつくのは連絡会の企画です。ほかの選択肢は、権利擁護、個別のサービス利用、救急医療、救命処置といった別の課題への対応であり、この場面での優先度は下がります。

選択肢の確認

1.成年後見制度の普及:成年後見制度は、認知症・知的障害・精神障害などで判断能力が不十分な人を支える権利擁護の仕組みです。家庭裁判所が選んだ後見人等が、財産管理や身上保護(生活や療養に関する契約・手続き)を担います。独居高齢者が多い町では必要な制度ですが、医療や介護の提供体制を整えるものではありません。そのため、終末期の在宅療養体制の構築には直接つながりません。身寄りのない認知症高齢者の契約支援や、虐待・消費者被害への対応が課題として示された場合には、優先度が上がります。

2.介護保険サービスの利用促進:サービスの利用を勧めることは個々の生活の支えにはなりますが、在宅での看取りが実現しない主な原因である医療と介護の連携不足は解消されません。介護認定率が急増している状況で利用を促すことは、介護予防や自立支援の方向とも合いにくい面があります。サービスを使っていても、訪問診療や訪問看護と連携して急変時や看取りに対応できる体制がなければ、最期は病院へ搬送されがちです。

3.在宅医療と介護の関係者の連絡会の企画:正答。在宅医療の担い手(在宅医、訪問看護、歯科、薬局など)と介護の担い手(ケアマネジャー、介護事業所、地域包括支援センターなど)が集まる場です。地域の課題を共有し、役割分担、情報共有の方法、急変時や看取り時の対応を検討します。在宅医療・介護連携推進事業の考え方にも合っており、保健師が調整役として体制づくりに着手する第一歩として最も優先度が高いといえます。

4.救急搬送時間の短縮に向けた検討会の企画:山間部の町では、急性疾患や外傷への備えとして搬送時間の短縮は重要な課題です。しかしこれは病院へ運ぶことを前提とした対策であり、自宅で療養し最期を迎えたいという希望を支える方向とは異なります。終末期にはむしろ、本人の意向に沿わない救急搬送を避けることが大切です。そのために、本人、家族、医療・介護関係者があらかじめ急変時の対応を話し合っておきます。

5.介護職を対象とした自動体外式除細動器〈AED〉の研修の実施:AEDは、心室細動などによる突然の心停止に電気ショックを行い、心拍の回復をめざす救命のための機器です。終末期の療養者が自然な経過で亡くなる場面を想定したものではなく、在宅での療養・看取りの体制づくりとは目的が異なります。AEDは医療職以外の一般の人も使用できるため、研修は施設や地域の一般的な安全対策として位置づけられます。

覚えるポイント

  • 「自宅で最期を迎えたい人が多いのに、実際は病院で亡くなる人が多い」という希望と実態の差は、個人の問題ではなく医療・介護の提供体制の課題としてとらえます。
  • 在宅医療・介護連携推進事業は、介護保険法の地域支援事業(包括的支援事業)に位置づけられ、実施主体は市町村です。2018年4月から全市町村で実施されています。
  • 在宅医療・介護連携で意識する4つの場面は、日常の療養支援、入退院支援、急変時の対応、看取りです。
  • 体制づくりの第一歩は、関係者が顔を合わせて課題と役割を共有する場(連絡会・協議の場)を設けることです。保健師は関係機関をつなぐ調整役を担います。
  • 終末期の医療・ケアは、ACP(人生会議)で本人の意向を繰り返し話し合い、関係者で共有します。意向を共有しないままの急変時の救急搬送は、望まない場所での最期につながりやすくなります。
  • 地域包括ケアシステムは、医療・介護・予防・住まい・生活支援を、日常生活圏域(おおむね30分以内に駆けつけられる範囲、中学校区が目安)で一体的に提供する仕組みです。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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