第109回

109AM053|第109回 保健師国家試験 過去問

次の文を読み53、54の問いに答えよ。Aさん(64歳、男性、要支援2)は妻(63歳)と2人暮らしである。5年前に歩行時の違和感を自覚し受診したところ、脊髄小脳変性症と診断された。Aさんは難病になったことに驚いたが徐々に受け入れ、妻の励ましやサポートを受けて生活してきた。最近、歩行時のふらつきが強くなったため「室内に手すりをつけたい」と保健師に相談した。Aさんの住宅改修について給付の根拠となる法律はどれか。

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正解1

正答

1.介護保険法

この問題のポイント

手すりの取付けという住宅改修の給付が、どの法律にもとづくかを問う問題です。判断の鍵は「64歳」「要支援2」「脊髄小脳変性症」の3つです。40〜64歳の第2号被保険者でも、特定疾病が原因で要支援・要介護の認定を受けていれば介護保険の給付を受けられます。「難病」という言葉に引きずられず、すでに要支援認定を受けているという事実から根拠法を判断します。

解説

問題文から読み取る手がかり

  • 64歳:65歳未満なので第1号被保険者ではありません。40歳以上65歳未満の医療保険加入者である第2号被保険者にあたります。
  • 要支援2:介護保険の要支援認定をすでに受けていることを示します。要支援・要介護の認定は介護保険法にもとづいて市町村が行うものなので、Aさんはこの時点で介護保険の給付を受けられる立場にあります。
  • 脊髄小脳変性症:介護保険法施行令で定める16の特定疾病の一つです。あわせて難病法の指定難病でもあります。
  • 「室内に手すりをつけたい」:工事を伴う手すりの取付けは、介護保険の住宅改修の対象工事です。

第2号被保険者と特定疾病

介護保険の被保険者は、次の2つに分かれます。

  • 第1号被保険者:65歳以上の人です。要介護・要支援状態になった原因を問いません。
  • 第2号被保険者:40歳以上65歳未満の医療保険加入者です。加齢に伴う心身の変化に起因する特定疾病が原因である場合に限って、給付の対象になります。

特定疾病には、がん(末期)、関節リウマチ、筋萎縮性側索硬化症、初老期における認知症、パーキンソン病関連疾患、脊髄小脳変性症、多系統萎縮症、脳血管疾患、慢性閉塞性肺疾患など16疾病が定められています。Aさんは脊髄小脳変性症が原因で要支援2と認定されているので、介護保険の給付対象です。なお、65歳になると第1号被保険者に切り替わり、原因疾患を問わず給付の対象となります。

介護保険の住宅改修

要介護者には居宅介護住宅改修費、要支援者には介護予防住宅改修費が支給されます。対象となる工事は次のとおりです。

  • 手すりの取付け
  • 段差の解消
  • 滑りの防止や移動の円滑化のための床または通路面の材料の変更
  • 引き戸等への扉の取替え
  • 洋式便器等への便器の取替え
  • 上記の工事に付帯して必要となる工事

支給限度基準額は同一住宅につき20万円です。これは区分支給限度基準額とは別枠で管理されます。転居した場合や介護の必要の程度が著しく重くなった場合には、再度利用できます。利用者負担は原則1割で、第1号被保険者のうち一定以上の所得がある人は2割または3割です。第2号被保険者は所得にかかわらず1割負担です。原則として工事前に市町村へ申請し、介護支援専門員などが作成する「住宅改修が必要な理由書」を添える事前申請が必要です。

一方、工事を伴わない据え置き型の手すりは、住宅改修ではなく福祉用具貸与の対象です。こちらは要支援者も利用できます。

難病・障害福祉の制度との関係

脊髄小脳変性症は指定難病であり、障害者総合支援法の対象となる難病等にも含まれます。障害者総合支援法の地域生活支援事業(日常生活用具給付等事業)にも住宅改修費の給付はあります。しかし同法には、介護保険で同様のサービスを受けられる場合は介護保険を優先するという調整の規定があります。そのため、要支援認定を受けているAさんの住宅改修は、介護保険から給付されます。

実践での意味

要支援者の介護予防サービス計画は、主に地域包括支援センターが作成します。保健師は住宅改修の相談を受けたら、地域包括支援センターや市町村の介護保険担当につなぎます。脊髄小脳変性症は進行性の疾患なので、今後の歩行状態の変化や転倒リスク、妻の介護負担を見越して改修内容を検討する視点が大切です。医療費助成の申請や難病相談支援センターの活用など、難病法による支援を並行して調整することも保健師の役割です。

選択肢の確認

1.介護保険法:正答。Aさんは64歳の第2号被保険者で、特定疾病である脊髄小脳変性症により要支援2の認定を受けています。手すりの取付けは住宅改修の対象工事です。要支援者には介護予防住宅改修費として、同一住宅につき20万円を上限に費用の9割(本人負担1割)が支給されます。

2.障害者基本法:この法律は障害者施策の基本理念、国・地方公共団体等の責務、障害者基本計画などの基本的事項を定めたもので、個人へのサービスや費用の給付は規定していません。障害福祉サービスや日常生活用具の給付を具体的に定めるのは障害者総合支援法なので、名称の似た両者を取り違えないよう注意が必要です。なお、障害者総合支援法による住宅改修費の給付があり得る場合でも、介護保険が優先されるため、この事例の根拠法にはなりません。

3.高齢者の医療の確保に関する法律:この法律は医療費適正化計画、40〜74歳を対象とする特定健康診査・特定保健指導、75歳以上などを対象とする後期高齢者医療制度を定めたもので、住宅改修の給付は含みません。旧老人保健法を改正・改称して2008年に施行されました。「高齢者」という語から介護と結びつけやすいのですが、医療保険制度と健診の法律である点で区別します。

4.難病の患者に対する医療等に関する法律〈難病法〉:この法律は指定難病の患者への医療費助成(特定医療費の支給)、難病相談支援センターなどの療養生活環境整備事業、難病対策地域協議会などを定めたもので、住宅改修費の給付は規定していません。脊髄小脳変性症は指定難病なので医療費助成の対象にはなり得ますが、それは医療費の負担軽減です。「難病」という語だけで選ばず、何が給付されるのかで判断します。

覚えるポイント

  • 介護保険の被保険者は2種類です。第1号は65歳以上で、原因を問わず給付されます。第2号は40〜64歳の医療保険加入者で、特定疾病が原因の場合に限り給付されます。
  • 特定疾病は16疾病です。脊髄小脳変性症、多系統萎縮症、筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン病関連疾患、初老期における認知症、がん(末期)、脳血管疾患、慢性閉塞性肺疾患などを押さえておきます。
  • 住宅改修の対象工事は、手すり、段差解消、床材変更、扉の取替え、洋式便器への取替えの5種類と付帯工事です。同一住宅につき20万円までで、区分支給限度基準額とは別枠、原則として事前申請が必要です。
  • 工事を伴わない手すり・スロープ・歩行器・歩行補助つえは福祉用具貸与で、要支援者も利用できます。入浴・排泄用品などの特定福祉用具は購入費の支給です(年度10万円まで)。
  • 障害福祉サービスと介護保険で同様のサービスが受けられるときは、介護保険が優先です(障害者総合支援法の調整規定)。
  • 法律の役割を区別します。障害者基本法は理念・計画、高齢者医療確保法は特定健診と後期高齢者医療、難病法は指定難病の医療費助成と療養生活の支援です。

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