第109回

109AM006|第109回 保健師国家試験 過去問

A市では子どもが健やかに成長できることを政策に掲げている。乳幼児の死傷原因を調べ家庭内事故が多いことが分かった。家庭内事故防止に向けた親の取り組みを促進することを目標とし、乳幼児の家庭内事故について親の認識調査を行うことにした。この調査はプリシード・プロシードモデルにおけるアセスメントの段階のどれか。

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正解4

正答

4.教育/エコロジカル・アセスメント

この問題のポイント

プリシード・プロシードモデルの4つのアセスメント段階が、それぞれ何を明らかにするかを問う問題です。問題文は「政策目標(生活の質)→死傷原因の調査(健康問題)→親の取り組み(行動)→親の認識(行動を左右する要因)」の順に進んでおり、モデルの段階とそのまま対応しています。親の認識は事故防止行動の準備要因にあたるため、それを調べる調査は教育/エコロジカル・アセスメントです。

解説

モデルの全体像

プリシード・プロシードモデルは、ヘルスプロモーションの計画と評価に用いるモデルで、グリーン(Green, L. W.)らが提唱しました。前半のプリシード(PRECEDE)で計画のためのアセスメントを行い、後半のプロシード(PROCEED)で実施と評価を行います。

このモデルの特徴は、最終的に目指す生活の質(QOL)から出発し、結果から原因へさかのぼって分析する点です。「生活の質を妨げている健康問題は何か」「その健康問題を生む行動と環境は何か」「その行動と環境を左右する要因は何か」と順に掘り下げます。また、計画の各段階に住民が参加することを重視しています。

アセスメントは次の4段階で整理されます(2005年版の区分)。

  • 第1段階 社会アセスメント:対象集団の生活の質や、住民が関心をもち大切にしていること、地域の課題やニーズを把握します。統計などの客観的な指標に加え、住民への意識調査や話し合いで得る主観的な情報も用います。
  • 第2段階 疫学アセスメント:生活の質に影響する健康問題を、死亡・罹患・障害などのデータから特定し、優先順位をつけます。さらに、その健康問題に関係する行動要因(ライフスタイル)と環境要因を明らかにします。
  • 第3段階 教育/エコロジカル・アセスメント:第2段階で特定した行動と環境に影響する要因を、準備要因・強化要因・実現要因の3つに分けて分析し、どこに働きかけるかの優先順位を決めます。
  • 第4段階 運営・政策アセスメント:予算・人員・時間などの資源、組織の体制、既存の政策や規則との整合性、実施の障壁を検討し、介入の方法を具体化します。

アセスメントの後は、第5段階の実施、第6段階の経過評価(プロセス評価)、第7段階の影響評価、第8段階の結果評価と進みます。影響評価では主に行動・環境とそれを左右する要因の変化を、結果評価では健康状態や生活の質の変化をみます。アセスメントと評価の段階が対応していることも押さえておきましょう。なお、旧版では「診断」という用語を使い、行動・環境の分析を独立させた9段階で示していたため、教材によって段階の番号がずれることがあります。

行動を左右する3つの要因

  • 準備要因(前提要因):行動を起こす動機や理由となる、本人の知識・態度・信念・価値観・認識など。
  • 強化要因:行動を続けるかどうかに影響する、家族・仲間・専門職などからの支持や反応、報酬、フィードバック。
  • 実現要因:行動や環境の変化を可能にする、資源の入手しやすさ、サービスへのアクセス、技術(スキル)、制度など。

問題文を段階に当てはめる

  • 「子どもが健やかに成長できること」を政策に掲げている:地域が目指す生活の質にあたり、社会アセスメントに対応します。
  • 乳幼児の死傷原因を調べ、家庭内事故が多いと分かった:死亡・傷害のデータから優先すべき健康問題を特定しているので、疫学アセスメントです。
  • 家庭内事故防止に向けた親の取り組みの促進を目標とした:健康問題を規定する行動要因(親の事故防止行動)を定めたもので、これも疫学アセスメントの内容です。
  • 乳幼児の家庭内事故について親の認識を調べる:親が事故の危険をどう捉えているか、何を知っているか、「うちの子は大丈夫」と思っていないかなど、事故防止行動の動機となる準備要因を把握する作業です。したがって教育/エコロジカル・アセスメントに位置づけられます。

実践での活かし方

家庭内事故の予防事業では、3つの要因をそれぞれ把握します。準備要因は親の知識や危険の認識、強化要因は家族の協力や保健師・他の親からの声かけ、実現要因は安全用品を入手できるか、住まいを安全に整える技術が身についているか、といった点です。

調査の結果は、介入方法の選択に直結します。「危険は分かっているが、安全用品が手元にない、使い方が身についていない」と分かれば、安全用品の入手方法の紹介や使い方の実演など実現要因への支援を重点にします。「自分の子には起こらないと思っている」と分かれば、事故の実態を伝える健康教育など準備要因への働きかけを重点にします。乳幼児健康診査、両親学級、家庭訪問などが、こうした働きかけの場になります。

選択肢の確認

1.疫学アセスメント:生活の質に影響する健康問題をデータから特定し、それを規定する行動要因と環境要因を明らかにする段階です。この事例では、乳幼児の死傷原因を調べて家庭内事故が多いと分かったこと、親の事故防止の取り組みを目標行動に定めたことがこれにあたります。親の認識調査は、特定された行動の背景にある要因を探る次の段階の作業です。「死傷原因の調査」と「認識の調査」を取り違えないことが大切です。

2.社会アセスメント:地域の人々の生活の質や、住民が大切にしている価値・関心、地域の課題やニーズを把握する段階で、モデルの出発点です。この事例では、子どもの健やかな成長を政策目標に掲げている部分が対応します。この段階でも住民意識調査などで人々の受け止めを調べるため取り違えやすいですが、調べるのは生活の質や地域の課題・ニーズについての受け止めです。本問の調査は、家庭内事故という健康問題と親の事故防止行動が定まった後に、その行動を左右する親の認識を探るものなので、段階が異なります。

3.運営・政策アセスメント:プログラムを実施するための予算・人員・組織体制や、既存の政策・規則を点検し、実施の障壁と利用できる資源を明らかにする段階です。問題文の「政策に掲げている」という言葉につられやすいですが、ここでの政策は市が目指す目標であり、事業実施の体制や資源を検討することとは別物です。親の認識調査は資源や体制の検討ではないため、この段階には当てはまりません。

4.教育/エコロジカル・アセスメント:正答。選択肢1の段階で特定された行動と環境に影響する要因を、準備要因・強化要因・実現要因に分けて分析する段階です。親が家庭内事故の危険をどう認識しているかは、事故防止行動の動機となる準備要因にあたるため、この調査はこの段階に位置づけられます。

覚えるポイント

  • プリシード・プロシードモデルは、生活の質という最終目標から原因へさかのぼって計画し、実施後に評価するモデルで、住民参加を重視します。
  • アセスメントの順序は、社会(QOL)→疫学(健康問題と行動・環境)→教育/エコロジカル(準備・強化・実現要因)→運営・政策(資源・組織・政策)です。
  • 準備要因=知識・態度・信念・価値観・認識、強化要因=周囲の支持や反応・フィードバック、実現要因=資源・アクセス・技術・制度です。
  • 「認識」の調査は、何についての認識かで段階を見分けます。目標とする健康行動や健康問題について対象者の知識・認識・態度・信念を調べるなら、準備要因の把握なので教育/エコロジカル・アセスメントです。住民が生活の質や地域の課題・ニーズをどう受け止めているか(生活満足度、関心・価値観)を調べる意識調査なら社会アセスメント、死亡・罹患・傷害の原因分析なら疫学アセスメントです。
  • 評価の段階は、経過評価(実施状況)→影響評価(行動・環境とその要因の変化)→結果評価(健康状態・QOLの変化)の順で、アセスメントの段階と逆向きに対応します。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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