第109回
109AM007|第109回 保健師国家試験 過去問
A市では住民の健康づくりを促進していくため、小学校区ごとに健康推進員を育成して組織化している。来月、B小学校区に組織された健康推進員を参加者とする初めての会合が開かれることになった。この会合においてB小学校区を担当する保健師が行うことで適切なのはどれか。
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正解3
正答
3.参加者間で活動目標を設定することを促す。
この問題のポイント
住民組織を立ち上げる段階で、保健師がどのような立場で関わるかを問う問題です。「初めての会合」「健康推進員を参加者とする」という手がかりから、組織は結成されたばかりで、メンバーが目的を共有して集団としてまとまることが最初の課題だと読み取ります。判断の鍵は、住民の主体性を育てる支援(エンパワメント)の原則です。保健師は物事を決める役ではなく、住民が自分たちで決められるように促す役を担います。
解説
問題文の手がかり
- 「A市が小学校区ごとに健康推進員を育成・組織化している」:行政が主導して立ち上げた住民組織です。今後は住民自身の組織として自立していくことを目指します。
- 「初めての会合」:メンバー同士がまだ互いをよく知らず、何のために集まるのかも共有されていない段階です。
- 「B小学校区を担当する保健師」:地区担当の保健師として、この組織の育成を長く支援していく立場にあります。
住民組織の育成と保健師の役割
健康推進員は、住民の立場から地域の健康づくりを進める人たちです。自治体によって保健推進員、健康づくり推進員などの名称があり、行政と住民をつなぐ役割も担います。
こうした組織の活動は、行政から役割を割り振られるだけでは長続きしません。自分たちの地域の課題を自分たちで考え、目標を決め、実行し、振り返る。この過程を繰り返すことで、メンバー一人ひとりの力と組織の力が育ちます。これがエンパワメントであり、住民組織を支援する保健師の基本姿勢です。
集団の発達段階を示すタックマンのモデル(形成期→混乱期→統一期→機能期→散会期)にあてはめると、初回の会合は形成期にあたります。この時期のメンバーは不安や遠慮を抱えやすく、集団としての目的もまだ共有されていません。集団のまとまり(凝集性)を高めるには、共通の目標をもつことと、メンバー同士が意見を交わすことが大きく役立ちます。そのため、参加者同士で話し合って活動目標を設定するよう促すことは、この段階の課題に直接こたえる支援になります。
この場面で保健師が具体的に行うことは、次のとおりです。
- 地域診断で得た情報を分かりやすく示す(B小学校区の人口構成、健診受診率、主な健康課題など)
- 自己紹介や話し合いの進め方を工夫し、発言しやすい雰囲気をつくる
- 出された意見を整理し、目標づくりを手助けする
ただし、結論を先に用意して誘導することはしません。
正答に至る判断
初回の会合で求められるのは、メンバーが「自分たちの組織だ」という意識をもち、共通の目的を見いだすことです。保健師がリーダーや計画を決めてしまうと、一時的には効率がよく見えても、住民の主体性を奪い、行政への依存を生みます。個人の健康課題を発表し合うことは、この組織の目的である地域の健康づくりから外れます。したがって、参加者間での活動目標の設定を促す選択肢3が適切です。
地区担当の保健師が地区組織を育て、住民の自助・共助を支えることは、ソーシャルキャピタル(地域のつながりや信頼関係)を育てる活動として、地域保健の施策でも重視されています。健康推進員が育てば、健診の受診勧奨や健康情報の普及など、行政だけでは届きにくい住民への働きかけが地域に広がります。
選択肢の確認
1.組織のリーダーを指名する。:リーダーはメンバーの話し合いや互選で選ばれてこそ、本人の責任感と他のメンバーの納得が得られます。保健師が指名すると「行政に選ばれた人」という位置づけになり、組織が行政の下部組織のようになって自律性が育ちません。保健師にできるのは、役割分担の決め方を提案することや、選ばれたリーダーをその後に側面から支えることです。
2.参加者個人の健康課題の発表を促す。:健康推進員組織の目的は、参加者個人の健康管理ではなく、B小学校区という地域の健康づくりを進めることです。個人の健康課題はプライバシーにかかわります。初対面に近い場で発表を求めると心理的な負担となり、参加をためらわせるおそれもあります。個人の体験を分かち合うことに意味があるのは、同じ悩みをもつ人が集まるセルフヘルプグループなど、本人が話したいときに話せる場面です。この会合で話し合うべきは、地域の健康課題と組織としての目標です。
3.参加者間で活動目標を設定することを促す。:正答。形成期の集団では、共通の目標をもつことがまとまり(凝集性)を生み、今後の活動の方向を定めます。メンバー自身が話し合って決めた目標であれば、活動への意欲と責任感が高まり、住民主体の組織として育つ土台になります。保健師は地域の情報を提供し、話し合いを進めやすくする支援に徹します。
4.B小学校区の健康推進員組織の年間計画を作成する。:組織の年間計画は、メンバーが決めた目標に基づいて住民自身が作るものです。保健師が作成すると行政主導の活動になり、主体性が育ちません。また、目標もまだ話し合われていない初回の会合で計画を示すのは、順序としても不自然です。保健師が作るのは、この組織をどう支援していくかという自らの保健活動の計画です。組織の計画づくりに対しては、資料の提供や助言で支えます。
覚えるポイント
- 住民組織支援の原則は住民主体です。保健師は「決める・指名する・作る」のではなく、情報提供・場づくり・意見の整理によって、住民が自分たちで決められるよう支援します。
- 集団の発達段階(タックマン)は、形成期→混乱期→統一期→機能期→散会期です。初回の会合は形成期にあたり、目的の共有と関係づくりが課題です。
- 集団の凝集性を高める要素は、共通の目標、メンバー間の相互作用、活動による満足感や達成感です。
- 組織が育つにつれて、保健師の関わりは直接的な支援から側面的な支援へ移り、最終的には住民組織の自立を目指します。
- 地区担当の保健師による地区組織の育成は、ソーシャルキャピタルを育て、地域全体の健康づくりを広げることにつながります。
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