第108回
108AM004|第108回 保健師国家試験 過去問
A地区では市主催の両親学級に参加した父親が有志でグループを結成し、「パパの会」として自主的な活動を行っている。地区担当保健師は、会のリーダーから「会の活動を市の広報紙に掲載して参加者を増やしたいという意見と、今のメンバーで活動していきたいという意見に分かれている。どうしたらよいか」と相談を受けた。地区担当保健師が優先して行う対応として適切なのはどれか。
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正解2
正答
2.「パパの会に一度参加させてください」
この問題のポイント
住民が自主的に結成したグループの活動方針について、リーダーから相談を受けたときの保健師の支援姿勢を問う問題です。手がかりは「有志」「自主的な活動」という言葉と、保健師がまだリーダーの話しか聞いておらず、意見が分かれている状況を直接見ていないことです。自主グループ支援では住民の主体性を尊重することと、介入の前にグループの実情をアセスメントすることが判断の鍵になります。
解説
問題文から読み取れること
- パパの会は市主催の両親学級をきっかけに父親たちが有志で結成した自主グループで、市の事業ではありません。運営や方針を決めるのはメンバー自身です。
- 意見は「広報紙に載せて参加者を増やしたい」と「今のメンバーで続けたい」に分かれています。新しいメンバーを受け入れるオープングループの方向と、メンバーを固定するクローズドグループの方向の違いです。オープングループは新しい人や視点が入り会が広がる一方、関係が深まりにくい面があります。クローズドグループは信頼関係が深まりやすい一方、固定化や人数の減少が起きやすい面があります。どちらにも理由があり、一方が誤りというものではありません。
- 保健師が把握しているのはリーダーからの伝聞だけです。会の雰囲気、人数、メンバー同士の関係、意見が分かれた経緯、各メンバーが大切にしていること、リーダーの負担感はまだ分かっていません。
自主グループ支援の基本
保健師が自主グループを支援する目的は、住民が自分たちで話し合い、決め、活動を続けていく力を高めること(エンパワメント)です。関わり方はグループの成長に応じて変わります。立ち上げ期には場の確保や進め方の助言など比較的積極的に関わりますが、活動が軌道に乗れば前面に出ず、側面から支える立場へ移ります。保健師が結論を出したり運営を肩代わりしたりすると、グループは保健師に依存し、自分たちで課題を解決する力が育ちません。反対に、相談を受けても関わらずに任せきりにするのは放任であり、主体性の尊重とは違います。
意見の対立はグループが成長する過程
集団の発達段階を説明するタックマンのモデルでは、形成期の後にメンバー間の意見の違いや葛藤が表面化する混乱期があります。それを話し合いで乗り越えることで集団の規範ができ(統一期)、力を発揮できる段階(機能期)へ進むとされます。パパの会で意見が分かれたのは、メンバーが会に関心を持ち、自分の考えを表明し始めた表れとも捉えられます。保健師は対立を急いで解消するのではなく、メンバーが互いの考えを理解し、合意を形成できるよう支えることが大切です。
なぜ「まず参加させてもらう」のか
支援の方向性を決める前に、情報収集とアセスメントが必要です。実際に会へ参加すれば、活動内容や雰囲気、話し合いの様子、両方の意見の背景を直接確かめられます。背景には、たとえば「同じ悩みを持つ新しい父親にも仲間を作ってほしい」という思いや、「今の安心できる関係を大事にしたい」という思いがあるかもしれません。そのうえで、メンバー全員で話し合う場を設けることを提案する、新規参加を受け入れる場合の利点と課題を整理する手助けをする、リーダーが一人で抱え込まないよう役割分担を助言する、といった支援を選べます。「参加させてください」と依頼する形そのものが、会の主体はメンバーであるという姿勢を示すことにもなります。
この考え方は、子育てサークル、患者会、介護者の会、健康づくりの自主グループなど、地域で住民が運営するグループの支援に共通して使えます。
選択肢の確認
1.「保健師が運営を担当します」:自主的に結成された会の運営を保健師が引き受けると、住民の主体性を奪い、保健師への依存を生みます。自主グループを育てるという支援の目的とは逆方向です。保健師が運営を担うのは市の事業である両親学級であり、そこから生まれた自主グループではありません。立ち上げ期に一時的に進行を手伝うことはあっても、すでに自主的に活動している会の運営を担うのは不適切です。
2.「パパの会に一度参加させてください」:正答。保健師はまだ伝聞でしか状況を知らないため、まず会に参加して活動の実態、メンバーの関係性、意見が分かれた背景を直接アセスメントすることが優先されます。会の主体性を尊重した依頼の形で関わりを始めており、その後の話し合いの場づくりや助言につなげられる対応です。
3.「リーダーの考えで活動を進めていいですよ」:リーダー自身が対応に迷って相談しているのに、判断をリーダー一人に委ねる返答で、実質的には支援を放棄しています。リーダーの考えだけで進めれば、異なる意見を持つメンバーの思いが置き去りになり、不満や離脱につながるおそれがあります。自主性の尊重を「任せきりにすること」と取り違えやすい選択肢で、尊重とはメンバー全体で決められるよう支えることです。
4.「意見が分かれているのでメンバーを分けて活動しましょう」:状況を確かめる前に、保健師がグループの分割という結論を示してしまっています。分けるかどうかも含めて方針を決めるのはメンバー自身です。この対応は対立を話し合いで乗り越える機会を奪い、人数が減って会の活力が弱まるおそれもあります。メンバーが十分話し合った結果として、既存の活動と新規参加者向けの活動を分けるなどの形を選ぶことはあり得ますが、保健師が最初に提示する対応ではありません。
覚えるポイント
- 自主グループの主体はメンバーです。保健師は「決めない・肩代わりしない・放任しない」の姿勢で、側面から支えます。
- 相談を受けたら、まず実態を把握します。伝聞だけで方針や結論を示さず、参加や観察でアセスメントしてから支援方法を選びます。
- タックマンの集団発達段階は、形成期→混乱期→統一期→機能期→散会期です。メンバー間の対立は成長の過程として捉えます。
- オープングループは参加が自由で広がりやすい反面、関係が深まりにくいです。クローズドグループはメンバー固定で信頼が深まりやすい反面、固定化しやすいです。
- 保健師の関わりは、グループの成熟に応じて立ち上げ期の積極的支援から側面的支援へ移り、最終的には住民による自律的な運営を目指します。
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