第108回
108AM003|第108回 保健師国家試験 過去問
Aさん(33歳)は第1子を県外の実家で里帰り出産した。Aさんは、産後30日で自宅に戻り、翌週、地区担当保健師の家庭訪問を受けた。訪問時に児の発育発達に問題はなかったが、その後、時々Aさんは地区担当保健師に電話をかけ、日々の育児で生じた悩みを保健師に話した。Aさんは「身近に育児について話し合える人がいればいいのに」と話した。Aさんに対する保健師の対応で最も適切なのはどれか。
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正解2
正答
2.地区で行われている子育て教室への参加を促す。
この問題のポイント
里帰り出産から自宅に戻った初産婦が、育児の悩みを繰り返し保健師に電話で話し、「身近に育児について話し合える人がいればいいのに」と語っている場面です。判断の鍵は3つあります。児の発育発達に問題がないこと、県外の実家を離れて生活の場が変わったこと、本人が求めているのが専門職の指導ではなく「身近で」「話し合える」相手だということです。本人のニーズを読み取り、同じ立場の親と継続してつながれる地域の場へ結びつけることが問われています。
解説
問題文の手がかり
- 第1子・里帰り出産:初めての育児です。産後1か月は実家の家族に支えられていた可能性が高く、自宅に戻ると支え手が急に減ります。
- 県外の実家:実家も出産施設も遠いため、日常的に頼れる資源にはなりません。
- 児の発育発達に問題なし:医療的・専門的な個別フォローを急ぐ状況ではありません。
- 時々保健師に電話で悩みを話す:相談相手を求めていますが、今は保健師がほぼ唯一の相談先になっています。
- 「身近に育児について話し合える人がいればいいのに」:Aさん自身が、支援の方向性を言葉にしています。
必要な知識
里帰り出産では、実家から自宅へ戻る時期に支援が途切れやすくなります。住んでいる地域に知り合いが少ない母親は、孤立感や育児不安を強めやすいとされます。
母親を支える関係には、2つの種類があります。
- 保健師や医師などの専門職から助言を受ける「縦」の関係
- 同じ時期に子育てをしている親どうしが、経験や気持ちを分かち合う「横」の関係
Aさんが「話し合える人」と表現しているのは後者です。一方的に助言を受けるのではなく、互いに悩みを話して共感し合える仲間(ピア)を求めていると読み取れます。
市町村や保健センターが行う子育て教室(育児学級、離乳食教室など)には、月齢の近い子をもつ親が集まり、保健師などの専門職も関わります。参加をきっかけに親どうしの交流が生まれ、教室の外でも付き合える仲間ができます。地域子育て支援拠点(子育てひろば)など、ほかの資源の情報も得られます。保健師への電話相談だけに頼る状態から、自分で地域の資源を使い、仲間と支え合える状態へ移ることは、母親自身の力を引き出すエンパワメントの考え方にも合っています。
正答に至る判断
Aさんのニーズは「身近で」「継続して」「話し合える」相手です。これを満たすのは、自宅のある地区で開かれ、同じ立場の親と出会える子育て教室です。本人が希望を語っているので、保健師は教室の日程や内容を具体的に伝え、参加しやすいよう後押しします。
教室につないだ後も、保健師は電話相談を打ち切りません。参加状況や育児不安の程度を引き続き確認します。気分の落ち込み、不眠、育児への拒否感などがあれば産後うつ病を疑います。その場合はエジンバラ産後うつ病質問票(EPDS)などで評価し、医療機関につなぐ視点が必要です。この問題文にはそうした徴候は書かれていません。そのため、まず地域の仲間づくりの場につなぐ対応が最も適切と判断します。
選択肢の確認
1.週末を利用して実家に帰ることを勧める。:実家は県外にあり、週末ごとの帰省は一時的な気分転換や負担軽減にはなっても、平日の育児を身近で話し合える相手はできません。生活の拠点である地域でつながりを築く機会を先送りし、実家への依存を続けることにもなります。母親の休養が必要な場合など、家族の支援が中心的な課題であれば家族の協力を得る調整も検討されますが、Aさんの訴えとは合いません。
2.地区で行われている子育て教室への参加を促す。:正答。自宅のある地区で月齢の近い子をもつ親と出会える場であり、「身近に」「話し合える人」がほしいというAさんの希望に直接応えます。継続して参加でき、その場で専門職にも相談できるため、孤立の予防と仲間づくりの両面で効果が期待できます。
3.出産した産婦人科医院で相談することを勧める。:出産施設は里帰り先の県外にあり、日常的に通って相談できる距離ではありません。Aさんの悩みは日々の育児に関するもので、母体や児の医学的な問題ではないため、医療機関での相談はニーズとずれています。悪露の異常や乳房トラブルなど産科的な問題がある場合には、身近な医療機関の受診を勧める場面もあります。
4.母子保健推進員の訪問を依頼することを勧める。:母子保健推進員は市町村が委嘱する地域のボランティアで、設置の有無は市町村によって異なります。家庭訪問や声かけ、健診の受診勧奨などを通して、母子と行政をつなぐ役割を担います。身近な相談相手にはなり得ますが、訪問は1対1の個別の関わりであり、同じ立場の親どうしが話し合う関係にはなりません。外出が難しい母親や、地域の情報が届いていない家庭では有効な方法です。自分で集団の場に参加できるAさんには、子育て教室につなぐほうが希望に合っています。
覚えるポイント
- 里帰り出産後に自宅へ戻る時期は支援が途切れやすく、孤立や育児不安が強まりやすくなります。帰宅後の家庭訪問と、地域資源への橋渡しが重要です。
- 「話し合える人がほしい」という訴えは、専門職との縦の関係ではなく、同じ立場の親との横の関係(ピアサポート)を求めるサインと読みます。
- 支援先は「生活圏で身近」「継続して使える」「本人の希望に合う」の3点で選びます。県外の実家や出産施設は、日常の資源になりにくいです。
- 個別支援だけで完結させず、子育て教室や子育てひろばなどの集団・地域の場につなぎ、仲間づくりとエンパワメントを促すのが保健師の基本です。
- 抑うつ気分、不眠、育児への拒否感があれば産後うつ病を疑い、EPDS(日本では9点以上が目安)などで評価して医療につなぎます。
- 出題当時(2022年)は、母子保健法に基づく子育て世代包括支援センター(法律上の名称は母子健康包括支援センター)が、妊娠期から子育て期までの切れ目ない支援の拠点でした。現在は、2024年4月施行の改正児童福祉法により、子ども家庭総合支援拠点と一体化した「こども家庭センター」の設置が市町村の努力義務になっています。
掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。
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