第109回
109PM023|第109回 保健師国家試験 過去問
市の保健センターでは電話育児相談を行っており、必要に応じて地区担当保健師による家庭訪問につなげている。電話育児相談の内容で、地区担当保健師に家庭訪問を依頼する優先度が高いのはどれか。
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正解4
正答
4.2歳の子どもが言うことを聞かないので叩いてしまう。
この問題のポイント
電話育児相談のうち、家庭訪問につなぐ優先度が高いものを選ぶ問題です。判断の軸は2つあり、1つは子どもの安全と健康が今まさに損なわれているか、もう1つは電話だけでは状況を確かめられないかです。「叩いてしまう」という訴えは体罰が繰り返されていることを示しています。虐待の早期発見・早期対応の観点から、家庭を訪れて子どもと養育環境を直接確認する必要があるのはこの相談だけです。
解説
家庭訪問の優先度をどう考えるか
電話相談は気軽に利用でき、匿名性も保たれます。その一方で、分かるのは相談者が話す内容だけです。子どもの様子、住環境、家族関係、養育者の表情や疲れ具合は確かめられません。家庭訪問は保健師の時間と人手を多く使う支援方法です。そのため、電話や他の事業では対応しきれない相談に優先して充てます。判断では次の点を重視します。
- 子どもの生命・身体の安全が脅かされている、または脅かされるおそれがあるか
- 電話の情報だけでは危険の程度を評価できないか
- 養育者が孤立・疲弊していて、自分から支援を求めにくい状況か
- 情報提供、健康診査、教室や子育て支援の場の紹介で解決できる内容か
「叩いてしまう」という訴えの意味
手がかりは「言うことを聞かないので」と「叩いてしまう」という言葉です。「〜してしまう」という言い方からは、自分でも止められずに繰り返していること、そしてそのことに悩んで相談してきたことが読み取れます。
児童虐待の防止等に関する法律は、児童の身体に外傷が生じ、または生じるおそれのある暴行を身体的虐待と定義しています。2019年の同法改正(2020年4月施行)では、親権者などがしつけに際して体罰を加えてはならないことが明記されました。さらに2022年の民法改正で、親の懲戒権の規定が削除されています。虐待にあたるかどうかは、保護者の「しつけのつもり」という意図ではなく、子どもにとって有害かどうかで判断するのが原則です。
2歳は自我が芽生えて自己主張が強くなる時期(第一次反抗期)です。気持ちを言葉で十分に伝えられないため、かんしゃくや「いや」が増えます。発達上は自然な姿ですが、養育者にとっては思い通りにならずストレスがたまりやすく、体罰がエスカレートしやすい時期でもあります。
家庭訪問で行うこと
- 子どもの安全確認:外傷やあざの有無、表情、発育・発達、清潔さ、養育者への反応を見ます。
- 養育者の状況把握:育児疲れ、抑うつなどの精神状態、夫婦関係やDVの有無、経済状況、相談できる人の有無を確認します。
- 支援:自ら相談してきた力を認め、責めずに気持ちを受け止めます。そのうえで叩かない関わり方を一緒に考え、一時預かりや養育支援訪問事業などにつなぎます。
- 連携:市町村の児童福祉部門と情報を共有し、必要に応じて要保護児童対策地域協議会で支援方針を検討します。危険が大きい場合は児童相談所と連携します。
市町村は児童虐待の通告先の一つであり、住民にとって身近な相談窓口です。保健センターで受けた相談も、市町村内の児童福祉部門と一体となって対応します。出題当時は、母子保健を担う子育て世代包括支援センターと、児童福祉を担う子ども家庭総合支援拠点が並立していました。2024年4月からは、両者の機能を一体化したこども家庭センターの設置が市区町村の努力義務になっています。
ほかの4つの相談もそれぞれ大切です。ただし、子どもの安全が差し迫って脅かされてはおらず、電話での助言、健康診査、情報提供、地域資源の紹介で対応できます。とはいえ、話の中で体重が増えない、発達全般が遅れている、養育者がひどく思い詰めているといった情報が出てきた場合は、訪問の優先度が上がります。
選択肢の確認
1.6か月の子どもの離乳食が進まない。:「授乳・離乳の支援ガイド」(2019年改定)では、離乳の開始は生後5〜6か月頃とされています。6か月は始めて間もない時期で、進み方の個人差が大きく、栄養の中心はまだ母乳や育児用ミルクです。電話で食べ物の形状や与え方を助言し、離乳食教室を案内すれば対応できます。体重増加不良や哺乳量の低下を伴う場合は、訪問や受診勧奨を検討します。
2.1歳0か月の子どもがまだひとり歩きをしない。:ひとり歩きができるようになる時期は1歳前後から1歳半ごろまで幅があり、1歳0か月で歩かないのは個人差の範囲であることが多いです。電話でつかまり立ちや伝い歩きができているかを確かめ、1歳6か月児健康診査で経過をみます。1歳6か月を過ぎても歩かない場合や、お座り・はいはいなど他の運動発達も遅れている場合は、精密検査につなげる目安になります。
3.4か月の子どもの予防接種について教えてほしい。:接種スケジュール、副反応、受け方についての質問であり、電話での情報提供やパンフレットの案内で解決できます。子どもの健康や安全が脅かされている状況ではないため、訪問の必要性は低い相談です。ただし、接種が大きく遅れている、案内を送っても接種につながらないといった状況は、養育上の困難やネグレクトの兆しのこともあるため、他の情報と合わせて評価します。
4.2歳の子どもが言うことを聞かないので叩いてしまう。:正答。養育者自身が、子どもへの体罰を繰り返していると訴えています。これは身体的虐待に該当する可能性があり、そうでなくても深刻化するおそれがあります。電話では外傷の有無や家庭の状況を確かめられないため、早期に訪問して子どもの安全を直接確認し、養育者を支えながら関係機関と連携する必要があります。
5.育児の話ができる友達が欲しいが近所に子どもがいる家庭がない。:育児について話せる仲間がいないという孤立感の訴えです。地域子育て支援拠点(子育て支援センターなど)、親子教室、子育てサークルを紹介すれば対応できます。孤立は虐待のリスク要因の一つなので軽視はしません。しかし現時点では子どもの安全が脅かされている情報はなく、選択肢4と比べると緊急性は低くなります。
覚えるポイント
- 家庭訪問の優先度は、子どもの生命・安全に差し迫った危険があるか、電話では状況を確認できないか、の2点で判断します。
- 「叩く」「揺さぶる」「食事を与えない」「置き去りにする」といった訴えは虐待を示す手がかりです。訪問による安全確認を最優先します。
- 親権者などによる体罰の禁止は、2019年の児童虐待防止法改正で明記されました。虐待かどうかは保護者の意図ではなく、子どもの側に立って判断します。
- 児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者には通告義務があります。通告先は市町村、都道府県の設置する福祉事務所、児童相談所です。
- 離乳の開始は生後5〜6か月頃です。ひとり歩きは1歳6か月児健康診査で確認し、1歳6か月でも歩かなければ精査の目安になります。
- 孤立した育児は虐待のリスク要因です。地域子育て支援拠点などの社会資源につなぐことも予防的支援になります。
掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。
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