第109回

109PM022|第109回 保健師国家試験 過去問

成年後見制度に関する説明で適切なのはどれか。

解答・解説を見る

正解4

正答

4.判断能力の程度に応じて成年後見人、保佐人または補助人が選ばれる。

この問題のポイント

成年後見制度(法定後見)の基本的な仕組みを問う問題です。判断の鍵は3点あります。判断能力の程度によって「後見・保佐・補助」の3類型に分かれること、申立て先も鑑定書の提出先も家庭裁判所であること、身寄りのない人については市町村長が申し立てられることです。社会福祉協議会、市、都道府県知事といった、似た場面に出てくる別の機関と取り違えないかが問われています。

解説

成年後見制度の目的と全体像

認知症、知的障害、精神障害などで判断能力が不十分になると、預貯金の管理、介護サービスや施設入所の契約、遺産分割などを本人だけで行ったときに不利益を受けるおそれがあります。成年後見制度は、こうした人の財産管理と身上保護(生活や療養看護に関する契約・手続き)を法的に支え、権利を守る制度です。2000年に介護保険制度と同時に始まりました。福祉サービスが「措置」から「契約」に変わるのに合わせて、契約を支える仕組みとして整えられたものです。

制度は次の2つに分かれます。

  • 法定後見制度:すでに判断能力が低下している人について、家庭裁判所が審判によって支援者を選任します(民法)。
  • 任意後見制度:判断能力があるうちに、本人が将来の支援者と支援の内容を公正証書による契約で決めておきます。判断能力が低下した後、家庭裁判所が任意後見監督人を選任した時点から効力が生じます(任意後見契約に関する法律)。

法定後見の3類型

  • 後見:判断能力を欠く常況にある人が対象で、成年後見人が付きます。財産に関するすべての法律行為について代理権を持ちます。取消権もありますが、日用品の購入など日常生活に関する行為は取消しの対象外です。
  • 保佐:判断能力が著しく不十分な人が対象で、保佐人が付きます。借金、保証、不動産の売買、相続の承認・放棄など、民法が定める重要な行為について同意権と取消権を持ちます。代理権は、申立てによって特定の行為についてだけ付与されます(本人の同意が必要です)。
  • 補助:判断能力が不十分な人が対象で、補助人が付きます。申立てによって家庭裁判所が定めた特定の行為についてだけ、同意権・取消権や代理権が付与されます。本人以外が申し立てる場合は、補助開始そのものに本人の同意が必要です。

後見から補助へ進むほど支援の範囲は狭くなり、本人の意思が重く扱われます。残っている能力を活かし、必要な範囲だけを支援するという考え方(自己決定の尊重、残存能力の活用、ノーマライゼーション)が制度の理念です。

手続きの流れ

  • 申立て先:本人の住所地を管轄する家庭裁判所です。
  • 申立てができる人:本人、配偶者、四親等内の親族、検察官などです。身寄りがない、親族が申立てを拒んでいるなどの理由で、本人の福祉のために特に必要がある場合は、市町村長が申し立てられます。根拠は老人福祉法、知的障害者福祉法、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律です。
  • 医学的判断:申立て時には医師の診断書を添付します。後見と保佐では、原則として家庭裁判所が医師に鑑定を依頼し、鑑定書は家庭裁判所に提出されます(明らかに必要がないときは省略されることがあります)。補助は原則として診断書で判断されます。
  • 選任:誰を後見人等にするかは家庭裁判所が決めます。親族のほか、弁護士・司法書士・社会福祉士などの専門職、法人、市民後見人が選ばれることもあります。

保健師の実践との結びつき

独居の認知症高齢者、経済的虐待が疑われる高齢者、親亡き後の生活が心配な知的障害者などは、地域でよく出会う支援対象です。地域包括支援センターの権利擁護業務には成年後見制度の活用促進が含まれており、親族がいなければ市町村長申立てにつなぎます。申立て費用や後見人への報酬を負担できない人には、市町村の成年後見制度利用支援事業による助成があります(介護保険法の地域支援事業、障害者総合支援法の地域生活支援事業)。一方、判断能力は不十分でも契約内容は理解できる人には、社会福祉協議会の日常生活自立支援事業が適しています。この2つを使い分けられることが、実践でも試験でも重要です。

選択肢の確認

1.利用の申立ては社会福祉協議会である。:申立ては本人の住所地を管轄する家庭裁判所に対して行うため、適切ではありません。社会福祉協議会が中心となって担うのは日常生活自立支援事業です。実施主体は都道府県・指定都市の社会福祉協議会で、窓口業務は市区町村社会福祉協議会などに委託されています。この事業は、判断能力が不十分でも契約内容は理解できる人を対象に、本人と社会福祉協議会との契約に基づいて、福祉サービスの利用援助、日常的な金銭管理、書類の預かりなどを行います。社会福祉協議会が法人として後見人に選任されたり、市町村の権利擁護の相談窓口を受託したりすることはあります。しかし、申立てを受けて審判を行う機関ではありません。

2.利用にあたり医師の鑑定書は市に提出する。:鑑定を医師に依頼するのも、鑑定書を受け取るのも家庭裁判所であり、市ではありません。後見と保佐の開始では原則として鑑定が行われ、補助では原則として診断書で判断されます。市町村長申立ての場合は、市町村が申立人として診断書などの書類を準備することがあります。その場合でも、提出先は家庭裁判所です。

3.身寄りがない場合は都道府県知事が利用の申立てを行う。:身寄りがない人について申立てができるのは市町村長(特別区の区長を含む)で、都道府県知事ではありません。高齢者福祉・障害者福祉の身近な実施主体として本人の状況を把握している市町村が担う仕組みで、老人福祉法、知的障害者福祉法、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律に規定されています。親族がいても申立てを拒んでいる場合や、親族が虐待をしている場合なども、市町村長申立ての対象になります。

4.判断能力の程度に応じて成年後見人、保佐人または補助人が選ばれる。:正答。法定後見は、判断能力を欠く常況なら後見、著しく不十分なら保佐、不十分なら補助という3類型に分かれます。家庭裁判所が審判によってそれぞれ成年後見人、保佐人、補助人を選任します。類型によって付与される権限(代理権・同意権・取消権)の範囲が異なり、支援は必要な範囲に限られます。

覚えるポイント

  • 法定後見の3類型は「判断能力を欠く常況=後見」「著しく不十分=保佐」「不十分=補助」です。保佐人・補助人への代理権付与と、本人以外の申立てによる補助開始には、本人の同意が必要です。
  • 申立て先・鑑定・選任はすべて家庭裁判所が担います。申立てができるのは本人、配偶者、四親等内の親族、検察官などです。
  • 身寄りがない、または親族が申立てをしない場合は市町村長が申し立てます。根拠は老人福祉法・知的障害者福祉法・精神保健福祉法です。
  • 任意後見は、判断能力があるうちに公正証書で契約しておき、家庭裁判所が任意後見監督人を選任した時点で効力が生じます。
  • 日常生活自立支援事業は社会福祉協議会が実施し、契約内容を理解できる人が対象です。成年後見制度(家庭裁判所の審判)とは別の制度です。
  • 後見人の職務は財産管理と身上保護に関する法律行為です。手術などの医療行為への同意や、介護などの事実行為そのものは、職務に含まれないと一般に解されています。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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