第109回

109AM008|第109回 保健師国家試験 過去問

保健師は統合失調症で1年入院していた成人期のAさんへの退院支援を行った。Aさんは地域でつながりを持ちながら生活することを望んでいる。退院直後のAさんへの保健師の対応で適切なのはどれか。

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正解3

正答

3.地域活動支援センターを紹介する。

この問題のポイント

精神科病院から地域へ戻った直後の人に、どの時期にどの社会資源を結びつけるかを問う問題です。手がかりは「退院直後」という時期と、「地域でつながりを持ちながら生活したい」という本人の希望の2つです。気軽に通えて人と交流できる日中の居場所である地域活動支援センターを選べるかどうかが鍵になります。

解説

問題文から読み取る条件

  • 疾患と経過:統合失調症で1年間入院しており、社会との接点が長く途切れていました。
  • 時期:「退院直後」です。生活の立て直しが始まったばかりの段階です。
  • 本人の希望:地域でつながりを持ちながら生活することです。就労を望んでいるとは書かれていません。

退院直後に優先すること

統合失調症では、退院して間もない時期に再発・再入院が起こりやすいことが知られています。この時期の支援の中心は、服薬と通院を続けること、生活リズムを整えること、日中の過ごし方を確保すること、孤立を防ぐことです。長期入院のあとは、買い物や金銭管理、人付き合いといった日常の力が落ちていることも多く、本人のペースで少しずつ地域生活に慣れていく必要があります。いきなり就労のような負荷の大きい目標を置くと、ストレスで再発につながるおそれがあります。

地域活動支援センターとは

地域活動支援センターは、障害者総合支援法の地域生活支援事業に位置づけられ、市町村が実施主体となる事業です(社会福祉法人などへの委託も多くあります)。基本となる事業は、創作的活動や生産活動の機会の提供と、社会との交流の促進です。さらに機能強化事業としてⅠ型・Ⅱ型・Ⅲ型があり、Ⅰ型は専門職を置いて相談支援、医療・福祉機関との連携、地域への普及啓発などを行います。

就労系や訓練系のサービスと違い、就労や訓練の目標を前提とせず、自分のペースで立ち寄れる柔軟さが特徴です。同じ立場の利用者やスタッフと知り合い、日中の居場所を得られるため、「地域でつながりを持ちたい」というAさんの希望に、退院直後の段階で最もよく応えられます。

正答に至る判断

退院直後であること、本人の希望が就労ではなく地域でのつながりであること、この2点を満たす資源を選びます。就労に関わる支援(選択肢1、4)は時期と希望のどちらにも合いません。近隣住民による見守り(選択肢2)は、本人の同意やプライバシーの点で問題があり、本人が望む主体的なつながりとも性質が違います。したがって選択肢3が適切です。

実践とのつながり

国は「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」の構築を進めており、医療・障害福祉・住まい・社会参加・地域の助け合いを組み合わせて、退院後の暮らしを支える考え方がとられています。保健師は本人の希望と強み(ストレングス)を出発点にし、生活が安定する状況を見ながら、日中活動、就労系サービス、一般就労へと段階的に支援を広げていきます。退院直後の支えとしては、地域定着支援(常時の連絡体制と緊急時の対応)や、精神科デイケアなども組み合わせて検討されます。

選択肢の確認

1.就労定着支援を行う。:就労定着支援は、就労移行支援などを利用して一般就労した障害者が、職場に定着できるよう生活面の課題を支える障害福祉サービスです。まだ就労しておらず、退院直後で生活を立て直している段階のAさんは対象になりません。Aさんが就労系サービスを経て一般企業で働き始めた段階であれば、検討される支援です。就労移行支援(一般就労をめざす訓練)や就労継続支援(働く場の提供)と区別して覚えておきましょう。

2.近隣住民に見守りを依頼する。:近隣住民に見守りを頼むには、病名や入院していたことを伝える場面が生じます。本人の同意なく伝えればプライバシーの侵害になり、偏見を招いて地域での暮らしにくさにつながるおそれがあるため不適切です。また、見守られる関係は受け身であり、Aさんが望む主体的なつながりとは性質が異なります。本人が希望し同意したうえで、地域の支え手として協力を得る形であれば検討の余地はありますが、退院直後に保健師が最初に行う対応ではありません。

3.地域活動支援センターを紹介する。:正答。地域活動支援センターは、障害者総合支援法の地域生活支援事業として市町村が実施し、創作的活動・生産活動の機会の提供と社会との交流の促進を行う場です。就労や訓練の目標を前提とせず自分のペースで通えるため、退院直後の日中の居場所として無理なく利用できます。他の利用者やスタッフとの交流を通して、地域でつながりを持ちたいという希望を実現できます。

4.ピアサポーターとしての就労を勧める。:ピアサポーターは、精神疾患の経験をもつ当事者がその経験を生かして他の当事者を支える役割であり、自身の回復と生活がある程度安定してから担うものです。退院直後のAさんに勧めるのは時期が早く、本人が就労を希望しているとも書かれていないため不適切です。退院直後の時期にピアサポーターと関わるとすれば、支援を受ける側として体験談を聞き、地域生活への見通しや希望を得るという形が考えられます。

覚えるポイント

  • 退院直後の精神障害者支援は、再発予防(服薬・通院の継続)、生活リズムの確立、日中の居場所の確保、孤立予防が優先です。就労はその先の段階で考えます。
  • 地域活動支援センターは、障害者総合支援法の地域生活支援事業で、実施主体は市町村です。創作的活動・生産活動の機会の提供と社会との交流の促進を行います(Ⅰ型・Ⅱ型・Ⅲ型の機能強化事業あり)。
  • 就労系支援の流れ:就労移行支援(一般就労をめざす訓練)、就労継続支援A型・B型(働く場の提供)、一般就労後の就労定着支援、の順に対象が異なります。
  • 地域移行支援は入院中から退院までを、地域定着支援は退院後の常時連絡体制と緊急時の対応を担う、地域相談支援です。
  • 支援を選ぶときは、本人の希望と「今どの時期か」を必ず照らし合わせます。本人の同意のない病状の開示は、見守り目的であっても行いません。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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