第109回

109AM005|第109回 保健師国家試験 過去問

がん検診の精密検査の未受診者への受診勧奨で、受診率の向上に最も効果が期待できるのはどれか。

解答・解説を見る

正解2

正答

2.保健師が精密検査の未受診者へ家庭訪問を行う。

この問題のポイント

がん検診で「要精密検査」と判定されたのに受診していない人を、どうすれば確実に受診へつなげられるかを問う問題です。判断の鍵は2つあります。1つは、対象者が一次検診の記録から氏名や住所まで特定できていることです。もう1つは、受診しない理由が人によって異なることです。不特定多数への情報発信よりも、本人に直接届き、その人の事情に合わせて支援できる個別の働きかけが最も効果的です。

解説

がん検診は精密検査まで受けて初めて効果が出る

市町村のがん検診は、健康増進法に基づく健康増進事業として行われます。国の指針では、胃・大腸・肺・乳・子宮頸の5つのがんが対象です。がん検診は早期発見・早期治療を目指す二次予防です。一次検診で要精検となった人が精密検査を受け、確定診断と治療につながって初めて、死亡率を下げる効果が生まれます。要精検者が受診しなければ、検診にかけた費用も受診者の負担も成果に結びつきません。

このため、がん検診の精度管理では精密検査受診率(精検受診者数÷要精検者数×100)が重要なプロセス指標とされています。出題当時の第3期がん対策推進基本計画では、目標値を90%としていました。その後の第4期計画でも90%が維持されています。あわせて、受診しなかったことが確認された「精検未受診」と、受診したかどうか分からない「精検未把握」を区別して把握することも求められます。

問題文の手がかり

  • 「精密検査の未受診者」:一次検診の結果から誰が該当するか分かっている、限られた集団です。
  • 「受診勧奨」:知識を広めることではなく、受診という行動を起こしてもらうことが目的です。
  • 「最も効果が期待できる」:各方法を、対象者に確実に届くか、行動を妨げる要因に働きかけられるか、という観点で比べます。

未受診の理由は一人ひとり違う

要精検と判定されても受診しない理由には、次のようなものがあります。

  • 自覚症状がないので必要性を感じない。
  • がんと告げられるのが怖い。
  • 結果の意味を誤解している(「どうせ偽陽性だろう」など)。
  • どこで受ければよいか分からない。
  • 仕事や介護で時間がない。
  • 費用や交通手段に不安がある。

ヘルスビリーフモデルで考えると、受診行動は「病気の脅威をどう感じているか」と「行動の利益と障害の比較」に左右されます。障害が大きいままでは、一般的な情報をいくら届けても行動は変わりにくいのです。

家庭訪問が最も効果的な理由

家庭訪問では、保健師が本人に直接会って未受診の理由を聴き取れます。そのうえで、不安を和らげる、結果の意味を説明する、実施医療機関を紹介する、予約方法や日程を一緒に考える、といったその人の障害に合わせた支援ができます。生活状況や家族の協力体制も確認でき、受診後の結果把握にもつなげやすくなります。

対象を特定して個別に働きかけるのは、ハイリスクアプローチの考え方です。個別の通知・電話・訪問による受診勧奨と再勧奨(コール・リコール)は、広報などによる一般的な呼びかけより受診率を高めるとされています。

これに対して、講演会・広報誌・ホームページは不特定多数に向けた情報提供です。関心のある人や自分で情報を探す人には届きますが、受診をためらっている人ほど目にしない可能性があります。個別の事情に応えることもできません。これらは住民全体の意識を高める普及啓発に位置づけられる方法です。

選択肢の確認

1.がん体験者の講演会を開催する。:体験者の話は実感がこもっており、聞いた人の関心や危機感を高める効果はあります。しかし、講演会に来るのはもともと健康への関心が高い人が中心で、精密検査をためらっている人が参加するとは限りません。一次検診の受診促進や住民全体への啓発には役立ちますが、特定の未受診者を受診につなげる方法としては効果が限られます。

2.保健師が精密検査の未受診者へ家庭訪問を行う。:正答。要精検となった未受診者本人に確実に働きかけられます。未受診の理由を把握したうえで、不安への対応や、受診先・予約方法の具体的な説明など、個別の障害を取り除く支援ができます。個別勧奨の中でも対面で双方向にやりとりできる方法であり、受診行動に最も結びつきやすいといえます。

3.広報誌に精密検査実施医療機関の一覧を掲載する。:「どこで受ければよいか分からない」という障害の解消には役立つ情報です。ただし、広報誌は全住民向けで、未受診者が読むとは限りません。また、がんへの恐れや必要性の誤解といった他の理由には対応できません。医療機関の一覧は、個別の通知や訪問の際に本人へ手渡すと効果的に使えます。

4.自治体のホームページに精密検査の重要性を掲載する。:ホームページは、自分から閲覧した人にしか届かない受け身の媒体です。精密検査を先延ばしにしている人がわざわざ閲覧する可能性は低いと考えられます。精検の重要性を広く知らせる普及啓発としては意味がありますが、特定の未受診者への受診勧奨としては働きかけの弱い方法です。

覚えるポイント

  • がん検診は二次予防です。要精検者が精密検査を受けて初めて、死亡率を下げる効果につながります。
  • 精密検査受診率=精検受診者数÷要精検者数×100。がん対策推進基本計画の目標値は90%です。
  • 精度管理では「精検未受診」と「精検未把握」を区別して把握し、未受診者には再勧奨を行います。
  • 対象者が特定できる場合は、個別の働きかけ(個別通知・電話・家庭訪問)のほうが、不特定多数向けの広報・講演会・ホームページより受診行動に結びつきやすくなります。
  • 受診勧奨の鍵は、未受診の理由(障害)を一人ひとり把握し、それを取り除く支援をすることです。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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