第108回
108PM006|第108回 保健師国家試験 過去問
A市では高齢者を対象とした実態調査をもとに、「要介護状態となっても住み慣れたところで安心して暮らせるまち」を柱とした老人福祉計画を作成することとなった。計画の策定に向けてまず保健師が行う取り組みで最も適切なのはどれか。
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正解2
正答
2.インフォーマルサービスの情報を集める。
この問題のポイント
高齢者の実態調査を終えた段階で、老人福祉計画の策定に向けて保健師が最初に行う取り組みを問う問題です。判断の鍵は、計画の柱である「要介護状態となっても住み慣れたところで安心して暮らせる」と、「まず」という言葉です。住み慣れた地域での暮らしは制度上のサービスだけでは支えきれません。そのため、施策や指標を決める前に、地域に既にある支え合いの資源を把握することが出発点になります。
解説
問題文の手がかり
- 実態調査はすでに行われています。高齢者側の状況(ニーズ)は、ある程度つかめている段階です。
- 計画の柱は、要介護状態になっても住み慣れた地域で暮らし続けることです。これは地域包括ケアシステムの考え方そのものです。
- 問われているのは「まず」行うことです。計画づくりの手順のうち、最初期にあたる作業を選びます。
老人福祉計画と計画づくりの手順
市町村老人福祉計画は老人福祉法に基づく計画です。老人居宅生活支援事業や老人福祉施設による事業の供給体制の確保について、市町村が定めます。介護保険法に基づく市町村介護保険事業計画(3年を1期)と一体のものとして作成することとされています。そのため実際には「高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画」として、まとめて策定・見直しされることが多くなっています。
保健事業や福祉計画づくりの基本的な流れは次のとおりです。
- 地域診断(情報収集とアセスメント)
- 課題の明確化
- 優先順位の決定
- 目標と評価指標の設定
- 施策の決定
- 実施と評価(PDCA)
地域診断では、「住民に何が必要か(ニーズ)」と「地域に何があるか(資源)」の両方を把握します。この問題ではニーズ側の調査が済んでいるので、次に必要なのは資源側の把握です。
フォーマルとインフォーマル
- フォーマルサービス:法律や制度に基づいて提供される支援です。介護保険サービス、市町村の福祉サービス、医療機関などが該当します。
- インフォーマルサービス:制度に基づかない支援です。家族・親族、近隣住民、友人、ボランティア、NPO、自治会、住民主体のサロンや通いの場などが該当します。
要介護状態でも自宅で暮らし続けるには、介護保険サービスが入らない時間帯の見守りが必要です。ゴミ出し・買い物・話し相手のような、制度の対象になりにくい生活上の困りごとへの支えも欠かせません。フォーマルサービスの情報は、事業所の指定状況や給付実績などから行政が比較的把握しやすいものです。一方、インフォーマルな資源は行政データに表れにくく、地区活動や住民・関係者への聞き取りで積極的に集めなければ見えてきません。地域をよく知る保健師がこの情報収集を担う意義はここにあります。地域包括ケアの「自助・互助・共助・公助」でいえば、インフォーマルサービスは主に互助にあたります。
実践の場では、地域支援事業の生活支援体制整備事業で配置される生活支援コーディネーター(地域支え合い推進員)や協議体が、地域資源の把握とネットワーク化を担います。また、地域ケア会議は個別事例の検討を通じて地域課題を発見し、資源開発や政策形成につなげる場です。どちらも「地域にあるものを知り、つなぎ、足りないものを生み出す」ための仕組みです。
正答に至る判断
ニーズが分かった段階で、次にそれを支える地域の資源を把握します。資源が分かって初めて、既存の力を生かせる部分と不足している部分が明確になります。その上で、優先度・施策・評価指標を現実的に決められます。したがって、最初に行うのはインフォーマルサービスの情報収集です。
選択肢の確認
1.評価指標に健康寿命を組み入れる。:評価指標の設定は計画に欠かせませんが、課題と目標が定まった後に行う段階であり、策定に向けて最初に取り組むことではありません。健康寿命は健康日本21の中心目標で、高齢者施策の指標に用いられることもあります。国の健康寿命は、国民生活基礎調査をもとに「日常生活に制限のない期間の平均」として算出されます。ただ、今回の柱である「住み慣れたところで暮らし続ける」に直接対応するのは、在宅生活の継続状況や地域の支え合い活動の状況などの指標です。いずれにしても、指標は課題が明確になってから選びます。
2.インフォーマルサービスの情報を集める。:正答。住み慣れた地域での生活は、制度上のサービスに加えて、家族・近隣・ボランティア・住民組織などの支え合いによって成り立っています。ニーズ調査を終えた段階で、行政データでは見えにくいこれらの資源を把握することが、地域の実情に合った施策を組み立てる土台になります。
3.学識経験者で構成する委員会で施策の内容を決定する。:計画を定めるのは市町村であり、策定委員会は意見を述べる諮問的な役割を担います。委員会に学識経験者が加わることは一般的ですが、保健医療福祉の関係者や住民代表も含めて幅広く意見を聴くことが求められます。特に介護保険事業計画では、被保険者の意見を反映させるために必要な措置を講ずることが法律で定められています。専門家だけで施策を決める進め方は、住民参加の原則に合いません。また、施策の決定は課題の明確化の後に行う段階でもあります。
4.人口規模が同程度の市町村の事業をもとに優先度を決定する。:人口規模が同じでも、高齢化率、地理的条件、社会資源、住民の生活様式は市町村ごとに異なります。優先度は、A市自身の実態調査と地域資源の把握に基づいて決める必要があります。他市町村との比較は、地域包括ケア「見える化」システムなどを使った自地域の特徴把握の参考として役立ちます。しかし、比較を優先度決定の根拠にするのは適切ではなく、優先度の決定自体も最初に行う作業ではありません。
覚えるポイント
- 計画づくりは「地域診断(ニーズと資源の把握)→課題の明確化→優先順位→目標・評価指標→施策→実施・評価」の順に進めます。「まず」と問われたら、手順の最初に近いものを選びます。
- 地域資源は、制度に基づくフォーマルサービスと、家族・近隣・ボランティア・NPO・自治会などのインフォーマルサービスに分けられます。インフォーマルな資源は行政データに表れにくいため、保健師が地区活動を通じて積極的に把握します。
- 市町村老人福祉計画(老人福祉法)は、市町村介護保険事業計画(介護保険法、3年を1期)と一体のものとして作成します。
- 計画策定では住民参加が原則です。介護保険事業計画では、被保険者の意見を反映させる措置が求められます。
- 優先度は自地域のデータと資源から決めます。他市町村との比較は、自地域の特徴を知るための参考にとどめます。
- 地域包括ケアの「自助・互助・共助・公助」のうち、インフォーマルな支え合いは主に互助にあたります。資源の把握と開発は、生活支援コーディネーター・協議体・地域ケア会議が担います。
掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。
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