第108回
108PM005|第108回 保健師国家試験 過去問
保健師は担当地区の実態把握のため、地区視診を実施することにした。地区視診の説明として正しいのはどれか。
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正解3
正答
3.地区に出向いて自分で観察する。
この問題のポイント
地域診断で使う情報収集方法のうち、「地区視診」がどのような方法かを問う問題です。手がかりは「視診」という語です。地区視診は、保健師自身が現地に出向き、自分の目や五感で地区の様子を観察する方法です。既存資料の分析、量的データの集計、計画的なインタビューも地域診断で使う方法ですが、いずれも地区視診とは別の方法なので、区別できるかが問われています。
解説
地域診断における情報収集の方法
保健師は担当地区の健康課題を明らかにするために、地域診断(コミュニティアセスメント)を行います。情報の集め方は、おおむね次のように整理できます。
- 既存資料の分析:人口動態統計、国勢調査、各種事業報告、健診結果など、すでに他者が集めて集計した二次資料を読み解きます。
- 地区視診:保健師が地区を歩いたり車で回ったりして、生活環境や人々の様子を直接観察します。地区踏査とほぼ同じ意味で使われることが多い方法です。
- 住民・関係者からの聞き取り:自治会長や民生委員などのキーパーソンへのインタビューや、フォーカスグループインタビューがあります。
- 質問紙調査:アンケートで住民の意識や行動を量的に把握します。
保健師が目的をもって自ら集めた情報(観察、インタビュー、質問紙調査の結果)は一次資料、既存の統計や報告書は二次資料と呼ばれます。地区視診は、保健師が現地で自ら得る一次的な情報で、主に質的な情報です。英語では windshield survey と呼ばれ、車のフロントガラス越しに地域を見て回ることが語源とされます。
地区視診で何を観察するか
主な観察対象は次のとおりです。
- 住宅の種類や古さ、空き家・空き地
- 道路の幅、坂道や段差、歩道や街灯の有無
- 公共交通機関
- 商店やスーパー、医療機関・薬局
- 学校・保育所、公園、公民館などの集いの場
- ごみ集積所の管理状況、掲示板の内容
人々の様子も重要な観察対象です。歩いている人の年齢層、子どもの遊ぶ姿、高齢者の外出の様子、住民同士の交流などを見ます。視覚だけでなく、騒音やにおいも手がかりになります。
地区の姿は、平日と休日、昼と夜、季節によって変わります。時間帯や曜日を変えて観察すると、実態に近づけます。観察した内容は地図に書き込んだり、写真やメモに残したりして整理します。
地区視診の意義
統計は「高齢化率が高い」「単身世帯が多い」といった数字を示しますが、その背景にある生活の実際は数字だけでは見えません。
たとえば、高齢化率の高い地区を歩いてみて、次のようなことが分かったとします。
- 急な坂が多い
- 最寄りの商店が閉店している
- バスの本数が少ない
ここから「買い物や通院に困っている高齢者がいるのではないか」という仮説が立ちます。この仮説を既存資料や住民への聞き取りで確かめていくことで、地域診断の精度が上がります。
つまり地区視診は、地域の全体像をつかみ、他の情報と突き合わせて健康課題を見つけるための入口となる方法です。保健師が地区の雰囲気を肌で知ることは、住民との関係づくりや、災害時の危険箇所・避難しにくい場所の把握にも役立ちます。
選択肢の確認
1.二次資料を用いて行う。:二次資料とは、人口動態統計、国勢調査、事業報告書など、他者がすでに集めて集計した資料のことです。これを読み解くのは既存資料の分析にあたります。地区視診は保健師が自ら現地で情報を得る方法なので、当てはまりません。既存資料の分析は地域診断に欠かせない方法ですが、視診とは別の柱です。
2.地区の量的データを集計する。:量的データの集計とは、人口構成や高齢化率、健診受診率などの数値を整理することや、質問紙調査の結果を数量的に処理することを指します。地区視診で得られるのは、景観や人々の様子といった主に質的な情報であり、数値の集計そのものではありません。量的データと視診の結果は、組み合わせて解釈することで意味を持ちます。
3.地区に出向いて自分で観察する。:正答。地区視診は、保健師が地区を歩いたり車で回ったりして、住環境、交通、商店や医療機関、公園、人々の様子などを、視覚をはじめとする五感で直接とらえる方法です。「視診」という語のとおり、自分で見ることが本質です。
4.計画的なインタビュー調査を行う。:計画的なインタビュー調査は、対象者と質問項目を事前に決め、住民やキーパーソンから言葉で情報を得る方法です。キーパーソンインタビューやフォーカスグループインタビューがこれにあたります。地区視診の途中で住民と立ち話をすることはあっても、方法の中心は観察です。計画的なインタビューは、聞き取りという別の情報収集方法に分類されます。
覚えるポイント
- 地域診断の主な情報源は「既存資料(二次資料)」「地区視診(観察)」「住民・関係者からの聞き取り」「質問紙調査」です。
- 地区視診は、保健師が現地に出向いて五感で観察する方法です。windshield survey と呼ばれ、地区踏査とほぼ同義で使われます。
- 自ら目的をもって集めた情報は一次資料、既存の統計や報告書は二次資料です。
- 観察の視点には、コミュニティ・アズ・パートナーモデルが参考になります。コア(住民)と8つのサブシステム(物理的環境、保健医療と社会サービス、経済、交通と安全、政治と行政、コミュニケーション、教育、レクリエーション)です。
- 時間帯・曜日・季節を変えて観察し、地図・写真・メモで記録します。視診で立てた仮説は、統計や聞き取りで確かめます。
掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。
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