第109回

109AM013|第109回 保健師国家試験 過去問

労災保険制度について正しいのはどれか。

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正解1

正答

1.事業主の災害補償責任は労働基準法に規定されている。

この問題のポイント

労災保険制度の法的な成り立ちと、運用の基本である保険料の負担者、休業補償給付の開始日、請求の窓口を問う問題です。鍵になるのは二段構えの理解です。まず労働基準法が使用者に災害補償の責任を課し、その責任を確実に果たすための保険として労災保険があります。健康保険・雇用保険や、市町村が運営する国民健康保険・介護保険と混同しないことが得点につながります。

解説

労働基準法と労災保険法の関係

労働基準法第8章「災害補償」は、労働者が業務上負傷し、または疾病にかかった場合に、使用者(選択肢では事業主)が行うべき補償を定めています。主な補償は次のとおりです。

  • 療養補償
  • 休業補償(平均賃金の100分の60)
  • 障害補償
  • 遺族補償
  • 葬祭料

これらは使用者の過失の有無を問わない無過失責任です。

ただし、使用者に支払い能力がない場合や、大きな災害が起きた場合には、補償が実際に行われないおそれがあります。そこで1947年、労働基準法と同じ年に労働者災害補償保険法(労災保険法)が制定されました。労災保険法に基づく給付が行われるべき場合には、使用者は労働基準法上の補償の責任を免れます。つまり労災保険は、労働基準法上の使用者責任を国の保険で担保する制度です。

労災保険の基本的な仕組み

  • 保険者は政府(国)です。事務は厚生労働省、都道府県労働局、労働基準監督署という労働行政の系統が担います。
  • 労働者を1人でも使用する事業には、原則として強制的に適用されます。パート、アルバイト、日雇いなど雇用形態を問いません。国家公務員・地方公務員には別の災害補償制度があります。
  • 保険料は全額事業主負担で、労働者の負担はありません。賃金総額に、業種ごとに定められた労災保険率を掛けて算出します。
  • 給付の対象は業務災害と通勤災害です。2020年からは、複数の事業場で働く人の負荷を総合して評価する「複数業務要因災害」も加わっています。
  • 業務災害の給付には「補償」の語が付きます(例:休業補償給付)。通勤災害の給付には付きません(例:休業給付)。通勤災害はもともと労働基準法上の使用者責任の対象外だからです。この違いは選択肢1の理解とつながります。

休業(補償)給付と待期期間

業務上の傷病による療養のために働けず、賃金を受けられない場合、休業補償給付は休業4日目から支給されます。額は給付基礎日額の60%で、これに休業特別支給金20%が上乗せされます。

最初の3日間は待期期間です。業務災害であれば、この3日間は事業主が労働基準法に基づき平均賃金の60%を補償します。通勤災害では、事業主にこの補償義務はありません。

請求の窓口

保険給付の請求は、被災した労働者本人(死亡の場合は遺族)が、請求書を事業場を所轄する労働基準監督署長に提出して行います。請求書には事業主の証明欄がありますが、事業主が協力しない場合でも請求はできます。療養(補償)給付は、労災病院や労災指定医療機関で受診すれば窓口での自己負担なく治療を受けられ、請求書はその医療機関を経由して提出します。

実践とのつながり

業務上の傷病には健康保険は使えず、労災保険を使います。産業保健の場では、過重労働による脳・心臓疾患や、業務による精神障害の労災認定がしばしば課題になります。地域で相談を受けた保健師も、窓口が労働基準監督署であることを知っていれば適切につなぐことができます。

選択肢の確認

1.事業主の災害補償責任は労働基準法に規定されている。:正答。労働基準法第8章が、使用者の療養補償・休業補償・障害補償・遺族補償などを無過失責任として定めています。労災保険法はこの責任を保険で担保する法律で、保険給付が行われれば使用者は労働基準法上の補償責任を免れます。条文上の語は「使用者」ですが、事業主の補償責任を指すと理解して差し支えありません。

2.休業補償は休業1日目から補償の対象となる。:労災保険の休業補償給付は休業4日目から支給されます。最初の3日間は待期期間で、業務災害の場合はこの間を事業主が労働基準法に基づき平均賃金の60%で補償します。本問は「労災保険制度」を問うため、選択肢の「休業補償」は労災保険からの休業補償給付として判断します。労働基準法上の使用者による休業補償は初日から対象であり、「休業初日には補償がない」と覚えてはいけません。

3.保険料は事業主と労働者が折半で負担する。:労災保険料は全額が事業主の負担で、労働者の負担はありません。労使折半は健康保険や厚生年金保険の原則です。雇用保険は労使双方が負担し、事業主の負担率のほうが高く設定されています。これらと取り違えないよう注意します。

4.労災補償の申請は市区町村の窓口で行う。:労災保険の保険者は国で、請求先は事業場を所轄する労働基準監督署長です。市区町村の窓口で手続きするのは国民健康保険や介護保険などです。保険者が誰かを押さえておけば、窓口の違いは判断できます。

覚えるポイント

  • 労働基準法が使用者の災害補償責任(無過失責任)を定め、労災保険法がそれを保険で担保します。保険給付が行われれば、使用者は補償責任を免れます。
  • 労災保険料は全額事業主負担です。健康保険・厚生年金保険は原則労使折半、雇用保険は労使双方の負担(事業主のほうが多い)です。
  • 休業(補償)給付は4日目から、給付基礎日額の60%に特別支給金20%が加わります。待期の3日間は、業務災害なら事業主が平均賃金の60%を補償します。
  • 保険者は国、請求先は所轄の労働基準監督署長です。市区町村ではありません。
  • 対象は業務災害と通勤災害で、給付名の「補償」の有無で区別します。雇用形態を問わず適用され、公務員は別制度です。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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