第109回

109AM015|第109回 保健師国家試験 過去問

災害時のフェーズ4〈復旧・復興期〉における健康課題への対応で優先度が高いのはどれか。

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正解4

正答

4.社会的孤立

この問題のポイント

災害後の健康課題が、時間の経過(フェーズ)とともにどう移り変わるかを問う問題です。判断の鍵は「フェーズ4〈復旧・復興期〉」という時期の指定です。この時期、被災者は避難所を出て応急仮設住宅や災害公営住宅へ移り、新しい生活を始めます。住まいの移動によって、それまでの人間関係や地域のつながりが失われるため、社会的孤立への対応が最も優先されます。

解説

フェーズ区分と課題の移り変わり

災害時の保健活動では、発災からの時間経過をいくつかのフェーズに分けます。そのうえで、時期ごとに起こりやすい健康課題を予測し、先回りして対応します。保健師の災害時活動マニュアルでは、おおむね次のように整理されています。細かな区分や期間の目安は資料によって多少異なります。

  • フェーズ0〜1(初動体制の確立・緊急対策期):発災後おおむね72時間以内で、テーマは生命と安全の確保です。救命・救護、安否確認に加え、医療機関の被災や薬の流失による慢性疾患の治療中断への対応が急がれます。
  • フェーズ2(応急対策期):避難所対策が中心となる時期です。集団生活による感染症、配給食の偏りによる栄養の問題、生活不活発病、深部静脈血栓症(いわゆるエコノミークラス症候群)、口腔ケア不足による誤嚥性肺炎などの予防が重点になります。
  • フェーズ3(応急対策期):避難所生活が長期化し、仮設住宅に入居するまでの時期です。疲労やストレスの蓄積、慢性疾患の悪化、生活機能の低下が課題になります。
  • フェーズ4(復旧・復興対策期):仮設住宅への対策と新しいコミュニティづくりが中心の時期です。テーマは「人生の再建・地域の再建」です。

フェーズ4で社会的孤立が優先される理由

避難所では周囲に常に人がいて、支援者の目も届きます。ところが仮設住宅に入ると、生活は世帯ごとに分かれます。入居先は抽選などで決まることが多く、元の近所の人と離ればなれになりがちです。住宅が元の地域から離れた場所に建てられると、なじみの店や医療機関、仲間とも切り離されます。

そこへ、家族・家・仕事を失った喪失体験や、生活再建の見通しが立たない経済的不安が重なります。さらに、外部からの応援チームが撤収し、社会の関心も薄れていく時期でもあります。

孤立すると、閉じこもり、生活不活発病の進行、飲酒量の増加とアルコール関連問題、抑うつ、自殺、孤独死につながります。阪神・淡路大震災(1995年)では、仮設住宅での孤独死が大きな社会問題になりました。この教訓から、その後の災害では、なるべく元の地域単位で入居できるようにする配慮や、見守り体制の整備が重視されるようになりました。また、仮設住宅から災害公営住宅などへ移る際にも、ようやく築いた関係が再び断たれることに注意が必要です。

保健師の活動と優先度の考え方

この時期の保健師は、次のような活動を通じて孤立の予防と早期発見に取り組みます。

  • 仮設住宅入居者への全戸訪問・健康調査で、独居高齢者、障害者、失業した中高年男性、精神疾患の既往がある人などハイリスク者を把握する
  • 生活支援相談員、民生委員、自治会と見守りのネットワークをつくる
  • 集会所でサロンや健康相談、体操教室などの集いの場を設け、自治会の立ち上げを支援する

選択肢1〜3の課題も、フェーズ4で完全になくなるわけではありません。しかし、それぞれが中心になる時期はもっと早い段階です。また、フェーズ4で見られる食生活の乱れや受診の中断は、孤立を背景に生じることが多いものです。そのため、この時期は孤立への対応が最も優先されます。

選択肢の確認

1.食生活、栄養のバランスの不良:避難所の配給食はおにぎり・パン・カップ麺など炭水化物に偏りやすく、たんぱく質・ビタミン・食物繊維が不足し、塩分も多くなりがちです。そのため、この課題が重点となるのはフェーズ2〜3の応急対策期です。仮設住宅に移ると自分で調理できる環境が戻り、全体としては改善に向かいます。調理に慣れない独居男性の食生活の乱れはこの時期にも見られますが、多くは孤立や飲酒と結びついており、根本にある孤立への対応が先になります。

2.慢性疾患治療の継続困難:医療機関の被災、交通の遮断、薬やお薬手帳の流失によって治療が途切れる問題で、最優先となるのは発災直後の緊急対策期です。人工透析、インスリン療法、在宅酸素療法、抗てんかん薬、向精神薬などの中断は、生命や症状の悪化に直結します。フェーズ4では地域の医療機関がおおむね診療を再開しており、治療を受ける体制そのものは整っています。

3.感染症の流行:避難所の密集、断水による手洗いの困難、トイレの衛生悪化、換気不足によって、感染性胃腸炎やインフルエンザなどが集団発生しやすくなります。重点となるのは、避難所生活が中心の応急対策期(フェーズ2〜3)です。仮設住宅で世帯ごとの生活になると集団感染のリスクは下がるため、この時期の最優先課題ではありません。

4.社会的孤立:正答。仮設住宅や災害公営住宅への転居で従来の人間関係や地域のつながりが断たれ、喪失体験や経済的不安も重なるのがフェーズ4の特徴です。孤立は閉じこもり、アルコール関連問題、抑うつ、孤独死につながります。全戸訪問、見守り体制づくり、集いの場の提供による予防と早期発見が、この時期の中心的な保健活動になります。

覚えるポイント

  • 時期と課題を対にして覚えます。フェーズ0〜1は「命と治療の継続」、フェーズ2〜3は「避難所の環境(感染症・栄養・生活不活発病・深部静脈血栓症)」、フェーズ4は「仮設住宅と新しいコミュニティ(孤立・孤独死・アルコール・こころの健康)」です。
  • フェーズ4のテーマは「人生の再建・地域の再建」で、保健師活動の柱は全戸訪問による把握、見守りネットワーク、集いの場づくり、自治会づくりの支援です。
  • 孤立のリスクは、仮設住宅に入居するときと、災害公営住宅などへ再び移るときの2回高まります。
  • 阪神・淡路大震災の仮設住宅での孤独死が、コミュニティに配慮した入居や見守り体制を重視するきっかけになりました。
  • こころの反応では、心的外傷後の症状が1か月以内のものを急性ストレス障害(ASD)、1か月を超えて続くものを心的外傷後ストレス障害(PTSD)と区別します。PTSDは遅れて表面化することもあるため、復旧・復興期にも継続した観察が必要です。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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