第109回
109AM039|第109回 保健師国家試験 過去問
感染症発生動向調査で全数把握の対象となるのはどれか。2つ選べ。
解答・解説を見る
正解1・2
正答
1.結核
2.麻疹
この問題のポイント
感染症法に基づく感染症発生動向調査には、診断したすべての患者を届け出る全数把握と、指定された医療機関の報告で流行の動きをみる定点把握があります。一類〜四類感染症はすべて全数把握です。全数把握と定点把握に分かれるのは五類感染症だけです。二類の結核と、五類の中で全数把握に指定されている麻疹を選べるかが鍵になります。
解説
感染症発生動向調査の2つの方式
感染症発生動向調査は、医師などからの届出や報告を保健所、都道府県等、国の順に集めて分析し、その結果を医療機関や住民に還元する仕組みです。把握の方法は次の2つです。
- 全数把握:その感染症を診断したすべての医師に届出の義務があります。患者を1例ずつ把握し、保健所の積極的疫学調査や接触者への対応に直接つなげます。対象は、一類〜四類感染症、新型インフルエンザ等感染症、指定感染症、新感染症、五類感染症の一部です。
- 定点把握:都道府県が指定した医療機関(定点医療機関)だけが、患者数を週単位または月単位で報告します。患者数が多い疾患について、流行の時期・規模・地域での広がりをとらえることが目的です。対象は五類感染症の一部です。
届出の期限は、一類〜四類は直ちに、五類の全数把握疾患は原則として7日以内です。ただし五類でも、麻疹、風疹、侵襲性髄膜炎菌感染症は直ちに届け出ることとされています。
結核と麻疹が全数把握である理由
結核は二類感染症です。結核予防法は2007年に廃止され、感染症法に統合されました。統合後も、結核対策の中心は患者一人ひとりへの対応です。保健所は届出を受けて患者を登録し、接触者健康診断、入院勧告、DOTS(直接服薬確認療法)による服薬支援、治療終了後の管理検診へとつなげます。これらの個別支援は、全数を把握していなければ成り立ちません。
麻疹は五類感染症ですが、感染力が極めて強い疾患です。1例でも発生すれば、接触者の調査、予防接種歴の確認、接触後早期のワクチン接種の検討などを速やかに行う必要があります。麻疹は2008年に定点把握から全数把握へ変更されました。日本は2015年にWHO西太平洋地域事務局から排除状態にあると認定されています。この状態を保つには、輸入例を含めて1例ずつ把握することが欠かせません。
定点把握の主な区分(出題当時)
定点は、疾患の特性に合わせて診療科ごとに設けられています。
- 小児科定点(週単位):手足口病、ヘルパンギーナ、咽頭結膜熱、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎、感染性胃腸炎、水痘、伝染性紅斑、突発性発疹、流行性耳下腺炎、RSウイルス感染症など
- インフルエンザ定点(内科・小児科、週単位):インフルエンザ
- 眼科定点(週単位):流行性角結膜炎、急性出血性結膜炎
- 性感染症定点(月単位):性器クラミジア感染症、淋菌感染症、性器ヘルペスウイルス感染症、尖圭コンジローマ
- 基幹定点(比較的規模の大きい病院):マイコプラズマ肺炎、クラミジア肺炎(オウム病を除く)、細菌性髄膜炎、無菌性髄膜炎など(週単位)、MRSA感染症などの薬剤耐性菌感染症(月単位)
新型コロナウイルス感染症は、出題当時は新型インフルエンザ等感染症として扱われていました。2023年5月に五類感染症となり、定点把握に移行しています。さらに2025年4月からは急性呼吸器感染症(ARI)が五類の定点把握疾患に加わり、定点の区分が一部見直されています。
保健師の実践では、全数把握疾患は届出を起点とした個別対応につながります。一方、定点把握疾患では、定点当たり報告数の推移から流行の兆しを読み取ります。そのうえで、保育所・学校への注意喚起や、手洗い・咳エチケットの啓発などの集団への働きかけに生かします。
選択肢の確認
1.結核:正答。二類感染症であり、診断した医師はすべての患者について、直ちに最寄りの保健所長を経由して都道府県知事に届け出ます。この届出が、患者登録、接触者健康診断、服薬支援といった保健所の個別対応の起点になります。
2.麻疹:正答。五類感染症ですが全数把握の対象であり、診断した医師は直ちに届け出ます。臨床診断の段階で届け出て、ウイルス遺伝子検査などで確定させる流れが基本です。「五類はすべて定点」と覚えていると誤るので注意が必要です。
3.手足口病:小児科定点から週単位で患者数が報告される、定点把握の疾患です。コクサッキーウイルスA16やエンテロウイルス71などが原因で、乳幼児を中心に夏に流行します。患者数が多く大半は軽症のため、1例ずつではなく流行の動向として把握します。同じ夏かぜのヘルパンギーナも小児科定点です。
4.マイコプラズマ肺炎:基幹定点から週単位で報告される、定点把握の疾患です。「肺炎」という名前から重い印象を受けやすいものの、全数か定点かは重症度だけでは決まりません。細菌性髄膜炎や無菌性髄膜炎も基幹定点です。一方、急性脳炎は五類の全数把握であり、この対比もよく問われます。
5.性器クラミジア感染症:性感染症定点から月単位で報告される、定点把握の疾患です。報告数の多い性感染症で、無症状のことも多く、不妊症の原因にもなります。同じ性感染症でも、梅毒と後天性免疫不全症候群は五類の全数把握で、7日以内に届け出ます。この違いが混同しやすいポイントです。
覚えるポイント
- 一類〜四類感染症、新型インフルエンザ等感染症、指定感染症、新感染症はすべて全数把握です。全数と定点に分かれるのは五類感染症だけです。
- 届出期限は、一類〜四類が直ちに、五類の全数把握が7日以内です(麻疹・風疹・侵襲性髄膜炎菌感染症は直ちに)。定点報告は週単位または月単位です。
- 五類の全数把握の代表は、麻疹、風疹、先天性風疹症候群、梅毒、後天性免疫不全症候群、百日咳、侵襲性髄膜炎菌感染症・侵襲性肺炎球菌感染症・侵襲性インフルエンザ菌感染症、劇症型溶血性レンサ球菌感染症、急性脳炎、破傷風、水痘(入院例)です。
- 定点の区分は、小児科(手足口病など)、眼科(流行性角結膜炎など)、性感染症(性器クラミジア感染症など、月単位)、基幹(マイコプラズマ肺炎、髄膜炎など)で押さえます。
- 全数と定点が分かれる組を対比して覚えます。梅毒・HIV(全数)と性器クラミジア・淋菌(定点)、急性脳炎(全数)と無菌性髄膜炎(定点)、水痘の入院例(全数)と水痘(小児科定点)です。
掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。
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