111AM003|第111回 看護師国家試験 過去問
シックハウス症候群 sick house syndrome に関係する物質はどれか。
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正解: 4
正答
4.ホルムアルデヒド
この問題のポイント
シックハウス症候群の原因物質を問う、環境保健の基本問題です。「シックハウス(病気の家)」という名前から、住宅の室内空気が汚染されて起こる健康障害だとわかれば、建材や家具から放散される揮発性の化学物質が答えになると判断できます。ほかの3物質がそれぞれどの健康問題と結びつくのかも、あわせて整理しておきましょう。
解説
シックハウス症候群とは
シックハウス症候群は、新築やリフォームをした住宅で、室内の空気が化学物質などで汚染され、住む人にさまざまな症状が現れる状態の総称です。単一の疾患名ではなく症状には個人差がありますが、主な特徴は次のとおりです。
- 目のちかちか感、鼻水、のどの痛み、せきなどの粘膜刺激症状が出る
- 頭痛、倦怠感、めまい、吐き気が出る
- 湿疹やかゆみなどの皮膚症状が出る
- その建物を離れると症状が軽くなり、戻ると再び悪化する
背景には2つの変化があります。1つは、住宅の気密性・断熱性が高まって換気量が減ったことです。もう1つは、合板、壁紙、接着剤、塗料など、化学物質を放散する建材や家具が多く使われるようになったことです。同じ問題がオフィスビルで起こればシックビルディング症候群、学校で起こればシックスクールと呼ばれます。化学物質のほか、カビやダニの関与も指摘されています。
代表的な原因物質
最も代表的な原因物質はホルムアルデヒドです。
- 刺激臭のある無色の気体で、水に溶けやすく、目や気道の粘膜を強く刺激します。
- 合板やパーティクルボードの接着剤(ユリア樹脂系など)、壁紙の接着剤、家具などから放散されます。
- 気温や湿度が高いほど放散量が増えます。
- 水溶液はホルマリンと呼ばれ、病院では病理組織の固定に使われるため、医療現場でも身近な物質です。発がん性も指摘されています。
このほか、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、スチレンなどの揮発性有機化合物(VOC)や、防蟻剤のクロルピリホスも原因物質として知られています。
行政の対策
- 建築基準法の改正(2003年施行)で、次の3点が定められました。
- ホルムアルデヒドを放散する建材について、使用面積を制限すること
- クロルピリホスを添加した建材の使用を禁止すること
- 住宅などに機械換気設備(いわゆる24時間換気)を設置すること
- 建材の放散量はF☆☆☆☆(エフフォースター)などの等級で表示され、星が多いほど放散量が少ないことを意味します。
- 厚生労働省は、ホルムアルデヒドを含む13物質について室内濃度指針値を定めています。ホルムアルデヒドの指針値は100μg/m³(0.08ppm)です。
看護での活かし方
原因のはっきりしない頭痛や粘膜症状を訴える人には、症状と場所・時期の関係を確認します。たとえば「自宅にいると悪化するか」「引っ越しや改装、家具の購入の後から始まったか」といった点です。生活指導では次の内容を助言します。
- こまめに換気し、換気設備を止めない
- 新築・改装の直後や新しい家具を入れた後は、特に換気に注意する
選択肢の確認
1.アスベスト:石綿とも呼ばれる繊維状の天然鉱物で、吸い込んだ細い繊維が肺や胸膜に長くとどまり、石綿肺、肺癌、悪性中皮腫を引き起こします。発症までの潜伏期間は数十年と長く、「建物を離れると軽快する」刺激症状とは性質がまったく異なります。かつて吹付け材や断熱材として建物に多く使われたため「建物の有害物質」として混同しやすいのですが、問題になるのは主に解体・改修作業や職業上の曝露です。現在は製造・使用などが原則禁止されており、健康被害には石綿健康被害救済法による救済制度があります。胸膜プラークは曝露の指標となる所見です。
2.ダイオキシン類:塩素を含む物質を低温で焼却したときなどに生じる有機塩素化合物で、室内の建材から放散されて刺激症状を起こす物質ではありません。分解されにくく脂肪に蓄積しやすい性質があり、人の曝露の大部分は魚介類などの食品を通じたものです。発がん性、内分泌かく乱作用、生殖・発達への影響が問題とされ、1999年に制定された特別措置法に基づいて排出規制や耐容一日摂取量などが定められています。ごみ焼却や食品汚染の文脈で問われる物質です。
3.放射性セシウム:原子力発電所の事故などで環境中に放出される放射性物質で、2011年の東京電力福島第一原子力発電所事故で大きな問題になりました。セシウム137の物理的半減期は約30年と長く、カリウムに似た性質をもつため、体内に取り込まれると筋肉など全身に分布します。健康影響は放射線被ばくによる長期的な発がんリスクであり、食品を介した内部被ばくを防ぐために食品中の基準値が設けられています。住宅の室内空気汚染とは関係しません。甲状腺に集まる放射性ヨウ素と区別して覚えましょう。
4.ホルムアルデヒド:正答。合板や壁紙の接着剤、家具などから室内の空気中へ放散される揮発性の化学物質で、シックハウス症候群の最も代表的な原因物質です。粘膜への刺激性が強く、目・鼻・のどの刺激症状や頭痛を起こします。建築基準法による建材規制と換気設備の設置義務、厚生労働省の室内濃度指針値の設定など、シックハウス対策の中心となっている物質です。
覚えるポイント
- シックハウス症候群は、新築・改装した住宅で目・鼻・のどの刺激や頭痛などが起こり、建物を離れると軽快する病態です。原因の代表はホルムアルデヒドで、ほかにトルエン、キシレンなどのVOCがあります。
- 対策の柱は「発生源を減らす(建材規制、F☆☆☆☆表示、クロルピリホスの禁止)」と「換気(機械換気設備の設置義務)」の2つです。
- アスベスト(石綿)は、吸入によって石綿肺、肺癌、悪性中皮腫を起こします。潜伏期間が数十年と長いことが特徴です。
- ダイオキシン類は焼却で発生し、主に食品を通じて体内の脂肪に蓄積します。発がん性と内分泌かく乱作用が問題で、ダイオキシン類対策特別措置法による規制があります。
- 放射性物質は集まる部位で区別します。放射性セシウムは筋肉など全身に、放射性ヨウ素は甲状腺に集まります。
- 環境汚染と健康障害の組み合わせでは、公害病もセットで覚えましょう。水俣病はメチル水銀、イタイイタイ病はカドミウム、四日市ぜんそくは硫黄酸化物が原因です。
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