112AM049|第112回 看護師国家試験 過去問

胃切除術後のダンピング症候群 dumping syndrome を予防するための食事指導で適切なのはどれか。

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正解: 3

正答

3.1回の摂取量を少なくする。

この問題のポイント

この問題では、胃切除後に起こるダンピング症候群の発生機序を理解し、そこから予防のための食べ方を導けるかが問われています。鍵は、胃の貯留機能と幽門による排出調節が失われ、食物が一度に小腸へ流れ込むことです。早期型も後期型も「大量の・高浸透圧の・糖質の多い内容物が急速に小腸へ入る」ことが引き金になります。そのため、1回量を減らすことが予防の基本になります。

解説

胃の働きとダンピング症候群の成り立ち

胃は、食べた物を一時的にためておき、胃液と混ぜて粥状にしてから、幽門の働きで少しずつ十二指腸へ送り出します。胃切除術を受けると、特に幽門を含めて切除した場合に、この貯留機能と排出調節が失われます。その結果、食物が十分に消化されないまま短時間で空腸へ落ち込むように流入します。これがダンピング(dump=投げ落とす)症候群で、症状が出る時期と機序から早期と後期に分けられます。

  • 早期ダンピング症候群:食事中から食後30分以内に起こります。高浸透圧の内容物が急速に空腸へ入ると、浸透圧差によって血管内から腸管内へ水分が移動し、循環血液量が減少します。さらに腸管が急に拡張し、セロトニンなどの血管作動性物質や消化管ホルモンが放出されます。これらにより、冷汗、動悸、めまい、脱力感、顔面紅潮や蒼白といった全身症状と、腹痛、腹部膨満、腹鳴、悪心、下痢といった腹部症状が現れます。
  • 後期ダンピング症候群:食後2〜3時間に起こります。糖質が急速に吸収されて一過性の高血糖となり、インスリンが過剰に分泌されます。その結果、遅れて反応性の低血糖が起こります。症状は冷汗、手指のふるえ、動悸、脱力感、空腹感、めまいで、重症では意識障害に至ります。

早期と後期は冷汗や動悸など似た症状を示します。見分けるには、食後どのくらいで起きたかを確認するのが有効です。

予防のための食事指導

予防の考え方は、「小腸へ流れ込む量・速さ・浸透圧をできるだけ小さくする」ことに集約されます。

  • 1回量を少なくし、1日5〜6回程度の分割食(少量頻回食)にする
  • よく噛んで、ゆっくり時間をかけて食べる
  • 糖質、特に吸収の速い単純糖質(砂糖、菓子、甘い飲料など)を控え、蛋白質や脂質を適度に含むバランスのよい食事にする
  • 食事中の水分は控えめにし、水分は食間にとる
  • 早期型の予防として、食後20〜30分程度は横になって休む
  • 後期型に備えて、飴などの糖分を携帯し、低血糖症状が出たらすぐに摂取する

実践の場では、入院中から退院後の生活を見据えて指導します。胃切除後は1回に食べられる量が減るため、分割食は摂取エネルギーを確保し、体重減少を防ぐ意味でも重要です。また、後期型の低血糖症状は本人が「疲れ」や「貧血」と誤解しやすいものです。そのため、症状の特徴と対処法を具体的に伝えておきます。

胃切除後に起こるその他の障害

胃切除後の障害は、ダンピング症候群と並んでよく出題されます。

  • 鉄欠乏性貧血:胃酸が減ることで鉄の吸収が低下し、再建法によっては食物が十分に十二指腸を通らなくなることも影響します。
  • 巨赤芽球性貧血:壁細胞から分泌される内因子が失われ、ビタミンB12が吸収できなくなることで起こります。胃全摘後、肝臓の貯蔵分が尽きる数年後に発症します。
  • 骨粗鬆症・骨軟化症:カルシウムの吸収低下が関与します。
  • 逆流性食道炎:噴門機能の喪失によって起こり、特に胃全摘や噴門側胃切除の後にみられます。

選択肢の確認

1.15分以内に食べる。:短時間でかき込むように食べると、一度に多量の食物が空腸へ送り込まれ、ダンピング症候群を誘発します。咀嚼も不十分になり、消化の面でも不利です。胃切除後の食事指導では「よく噛んでゆっくり時間をかけて食べる」が定番の内容で、この選択肢はその逆にあたります。食事時間を短く区切る指導は、この場面では適切ではありません。

2.糖質の多い食事を摂る。:糖質、特に単純糖質は腸管内の浸透圧を高めるため、早期型の水分移動を強めます。さらに急速に吸収されて、高血糖、インスリン過剰分泌、低血糖という後期型の引き金にもなります。予防には糖質を控え、蛋白質や脂質を適度に含む食事にします。なお「糖分をとる」のは、後期型の低血糖症状が出たときの対処です。予防のために食事全体を高糖質にすることとは意味が異なるので、取り違えないよう注意します。

3.1回の摂取量を少なくする。:正答。1回量を減らすと、一度に空腸へ流れ込む量と浸透圧の負荷が小さくなり、早期型の循環血液量減少が起こりにくくなります。糖の急激な吸収も抑えられるため、後期型の反応性低血糖も防げます。1回量を減らした分は回数を増やす分割食とし、必要な栄養量を確保します。

4.1日の食事回数を少なくする。:回数を減らすと、必要量を確保するために1回量が増え、一度に小腸へ流れ込む量が多くなって症状が出やすくなります。胃切除後は1回に食べられる量自体が限られるため、回数を減らすと摂取エネルギーの不足や体重減少にもつながります。正しくは、1回量を減らして回数を増やし、1日5〜6回程度に分けて食べるよう指導します。

覚えるポイント

  • ダンピング症候群は、胃の貯留機能と幽門の排出調節が失われ、食物が急速に小腸へ流入して起こります。
  • 早期型は食後30分以内に起こります。高浸透圧の内容物によって腸管内へ水分が移動して循環血液量が減少し、冷汗・動悸・めまい・腹痛・下痢が現れます。
  • 後期型は食後2〜3時間に起こります。高血糖からインスリンが過剰に分泌されて反応性低血糖となり、冷汗・ふるえ・脱力・意識障害が現れます。対処は糖分の摂取です。
  • 予防の食事指導は、少量頻回食(1日5〜6回)、よく噛んでゆっくり食べる、単純糖質を控える、食事中の水分を控えめにする、食後の安静です。
  • 胃切除後のその他の障害として、鉄欠乏性貧血、ビタミンB12欠乏による巨赤芽球性貧血(内因子の喪失、全摘の数年後に発症)、骨代謝障害、逆流性食道炎をセットで覚えます。

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