111AM067|第111回 看護師国家試験 過去問

Aさん(22歳、統合失調症 schizophrenia)は父親、母親、妹との4人暮らし。高校卒業後、アルバイトをしていたが、症状の悪化によって初めて精神科病院に入院した。退院後に一般企業で働きたいと希望している。看護師がAさんに提案するサービスで適切なのはどれか。

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正解: 2

正答

2.就労移行支援

この問題のポイント

障害者総合支援法の障害福祉サービスの中から、本人の希望と生活状況に合うものを選ぶ問題です。手がかりは「22歳」「初めての入院」「家族4人暮らし」「退院後に一般企業で働きたい」という条件です。一般企業での就労を目指す人のための訓練等給付である就労移行支援が該当します。各サービスの対象者(一般就労を目指すか、単身生活か、行動上の困難があるか)を区別できることが鍵です。

解説

事例の整理

  • 22歳の若年者で、高校卒業後にアルバイトをしていた就労経験があります。
  • 統合失調症の症状悪化で初めて入院しています。長期入院から地域へ移行する状況ではありません。
  • 父・母・妹と同居しており、単身生活ではありません。
  • 本人の希望は「退院後に一般企業で働くこと」です。

看護師は疾患名だけでサービスを選ぶのではなく、本人が何を目指しているかを起点にします。本人の希望や強み(アルバイト経験)を生かして、その人らしい生活を取り戻すというリカバリーの考え方に沿えば、提案すべきは一般就労に向けた支援です。

障害者総合支援法のサービスの枠組み

障害者総合支援法の自立支援給付には主に次のものがあり、精神障害者も対象に含まれます。

  • 介護給付:居宅介護、重度訪問介護、同行援護、行動援護、生活介護、短期入所など、日常生活上の介護を中心とするサービス
  • 訓練等給付:自立訓練、就労移行支援、就労継続支援(A型・B型)、就労定着支援、自立生活援助、共同生活援助など、地域で自立して暮らし、働くための訓練や支援
  • 地域相談支援給付:地域移行支援、地域定着支援
  • そのほか:計画相談支援給付、自立支援医療(精神通院医療など)、補装具

就労系サービスの使い分け

  • 就労移行支援:一般企業などへの就労を希望し、雇用されることが見込まれる人(原則65歳未満)が対象です。標準利用期間は2年です。事業所での作業や職場実習を通じた訓練、求職活動の支援、適性に合った職場の開拓、就職後の職場定着の支援を行います。
  • 就労継続支援A型:現時点では一般企業での雇用が難しい人が、事業所と雇用契約を結んで働くサービスです。最低賃金が適用されます。
  • 就労継続支援B型:雇用契約を結ばずに生産活動を行い、工賃を受け取るサービスです。
  • 就労定着支援:就労移行支援などを利用して一般就労した人を対象とします。就労に伴って生じる生活面の課題(生活リズム、体調管理など)について、本人・企業・家族などとの連絡調整や助言を行います。

Aさんは一般企業での就労を希望しており、アルバイト経験もあります。そのため、まず就労移行支援を提案するのが適切です。就職後は就労定着支援で就労の継続を支えることができます。なお、2022年の法改正により、2025年10月から就労選択支援が創設されています。これは就労系サービスを利用する前に、本人と一緒に希望・能力・適性を評価し、働き方の選択を支えるサービスで、出題当時にはまだありませんでした。

実践での視点

統合失調症は思春期から青年期に発症することが多く、再発を防ぎながら就労を目指すことになります。退院支援では、次の点を本人と確認します。

  • 服薬の継続
  • 生活リズムの安定
  • ストレスへの対処
  • 再発の注意サインへの気付き

そのうえで、精神保健福祉士や相談支援専門員と連携します。サービスの利用には市町村への申請が必要で、相談支援専門員がサービス等利用計画を作成します。労働分野の支援との組み合わせも可能で、ハローワークや障害者就業・生活支援センターの利用、精神障害者保健福祉手帳の取得による障害者雇用枠での就職なども選択肢になります。

選択肢の確認

1.行動援護:知的障害または精神障害により行動上著しい困難があり、常時介護を必要とする人を対象とする介護給付です。行動する際に生じうる危険を回避するための援護や、外出時の移動中の介護などを行い、利用には一定以上の障害支援区分の認定が必要です。自傷・異食・徘徊などへの対応が想定されていますが、Aさんにはそのような行動上の困難は示されていません。一般企業で働きたいという希望にも直接結び付かないため、適切ではありません。視覚障害者の外出を支援する同行援護と混同しないようにしましょう。

2.就労移行支援:正答。一般就労を希望し、企業などに雇用されることが見込まれる人を対象とした訓練等給付です。標準2年の利用期間の中で、就労に必要な知識・能力を高める訓練、職場実習、求職活動の支援、職場の開拓、就職後の定着支援を行います。就労経験があり、一般企業での就労を希望するAさんに最も合致します。

3.自立生活援助:障害者支援施設やグループホーム、精神科病院などから地域での一人暮らしに移行した人を主な対象とする訓練等給付です。原則1年間、定期的な巡回訪問や随時の相談対応により、生活上の課題の把握や助言、関係機関との連絡調整を行います。家族と同居しているAさんの状況にも、就労したいという希望にも合いません。ただし、家族と同居していても、家族の障害や疾病などで支援が受けられない場合は対象となり得ます。

4.地域定着支援:地域相談支援の1つです。居宅で単身生活をしている人や、同居家族による緊急時の支援が見込めない人を対象に、常時の連絡体制を確保し、障害の特性により生じた緊急の事態に相談や訪問で対応します。Aさんは家族と同居しており、求めているのは就労に向けた支援なので、適切ではありません。入院・入所中の人に住居の確保や同行支援を行って退院を支える地域移行支援と、対にして覚えておきましょう。

覚えるポイント

  • 一般企業で働きたい人には就労移行支援(原則65歳未満、標準利用期間2年)を、就職後の職場定着には就労定着支援を使います。
  • 雇用契約を結んで働くのが就労継続支援A型(最低賃金が適用)、雇用契約なしで工賃を得るのがB型です。どちらも利用期間の上限はありません。
  • 一人暮らしに移行した人への定期訪問は自立生活援助、単身生活者への常時の連絡体制と緊急時対応は地域定着支援、入院・入所中から退院に向けた支援は地域移行支援です。
  • 行動上著しい困難がある知的・精神障害者の援護は行動援護、視覚障害者の外出支援は同行援護で、どちらも介護給付です。
  • サービスの選択は、本人の希望(リカバリーの視点)と生活状況(単身か同居か、就労経験の有無)を手がかりに判断します。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。 情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。 本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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