111AM066|第111回 看護師国家試験 過去問

認知行動療法で患者に期待できる効果はどれか。

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正解: 1

正答

1.物事の捉え方のゆがみが修正される。

この問題のポイント

代表的な精神療法について、何に働きかけ、患者にどのような変化をもたらすのかを区別できるかを問う問題です。認知行動療法は、出来事の受け止め方(認知)が気分や行動を左右すると考え、偏った認知を現実的なものへ修正することをねらいます。ほかの選択肢は、自律訓練法、内観療法・精神分析療法、森田療法の特徴にそれぞれ対応しています。

解説

認知行動療法の基本的な考え方

認知行動療法は、ベックの認知療法と、学習理論にもとづく行動療法が統合されて発展した精神療法です。同じ出来事でも、それをどう受け止めるかによって生じる感情や行動は変わります。たとえばメールの返信が来ないとき、「忙しいのだろう」と考えれば気持ちはあまり揺れません。一方、「嫌われたに違いない」と考えると落ち込み、人を避ける行動につながります。

このように、ある状況で瞬間的に浮かぶ考えを自動思考と呼びます。その背景には「自分には価値がない」といった根深い信念(スキーマ)があると考えます。抑うつや不安が強いときは、自動思考に次のような偏り(認知のゆがみ)が生じやすくなります。

  • 全か無か思考(白黒思考):少しでも失敗すれば全部だめだと考える
  • 過度の一般化:一度の失敗から「いつも失敗する」と結論づける
  • 結論の飛躍(心の読みすぎ、先読み):根拠なく悪い結果を決めつける
  • べき思考:「〜すべきだ」と自分や他者を縛る
  • 個人化(自己関連づけ):自分に関係のない出来事まで自分のせいだと考える

治療の進め方と看護への活用

治療者と患者は協力して、問題となった場面の状況・自動思考・感情・行動を整理します。そのうえで、その考えを支持する根拠と反する根拠を検討し、よりバランスのとれた考え方を見つけていきます(認知再構成法。記録用紙を使うコラム法など)。行動面では、次のような技法を組み合わせます。

  • 行動活性化:活動記録表を用いて、楽しみや達成感のある活動を少しずつ増やす
  • エクスポージャー:不安な場面に段階的に向き合う
  • 問題解決技法

面接では「今、ここ」の問題を扱います。構造化され、期間を区切って行うことが多く、面接の合間には患者がホームワークに取り組みます。最終的には、患者が自分で考え方を点検・修正できるようになることを目指します。適応はうつ病、不安症(パニック症、社交不安症など)、強迫症、心的外傷後ストレス障害、不眠症など幅広く、統合失調症の症状への対処にも応用されています。

看護師が認知行動療法そのものを行う場面は限られますが、その考え方は日常の関わりに生かせます。患者の否定的な考えを頭ごなしに否定したり、安易に励ましたりはしません。「そう考えた根拠は何でしょう」「別の見方はできそうですか」と一緒に確かめる姿勢が、患者が自分の認知のくせに気づく助けになります。

正答に至る判断

問題文は「認知行動療法で患者に期待できる効果」を問うています。認知行動療法の中心的な働きかけは認知のゆがみの修正なので、選択肢1が正答です。選択肢2〜4はそれぞれ別の治療法の目標や特徴を表しています。「どの療法の説明か」を結びつけられれば消去できます。

選択肢の確認

1.物事の捉え方のゆがみが修正される。:正答。認知行動療法は、自動思考に含まれる全か無か思考や過度の一般化などの偏りを、根拠と反証の検討を通して現実に即した考え方へ修正することを中心的な目標とします。認知が変わることで、抑うつや不安などの感情や、回避などの行動も改善していくと考えます。

2.自ら催眠状態に導くことができるようになる。:自己暗示によって催眠に近いリラックス状態へ自ら導く方法は、シュルツが創始した自律訓練法です。「気持ちが落ち着いている」という背景公式に続き、「両腕両脚が重たい」(重感)、「両腕両脚が温かい」(温感)などの公式を心の中で繰り返して、心身を弛緩させます。終了時には、手足の屈伸などの消去動作を行います。心身症や緊張・不安の緩和に用いられますが、認知の修正を目的とする方法ではありません。

3.過去の自分の態度についての自己洞察が深まる。:過去を振り返って自己洞察を深めるのは、内観療法や精神分析療法の特徴です。吉本伊信が創始した内観療法では、母親など身近な人に対する過去の自分を「してもらったこと」「して返したこと」「迷惑をかけたこと」の3つの観点から具体的に想起し、自分の態度への洞察を深めます。フロイトの精神分析療法は、自由連想法などを通じて無意識の葛藤を意識化し、洞察を得ることを目指します。認知行動療法は、過去の原因探しよりも現在の考え方と行動を扱う点が異なります。

4.自分の状態をあるがままに受け入れることができるようになる。:症状や不安を無理に取り除こうとせず、あるがままに受け入れながら、なすべきことを行う(目的本位)という姿勢を身につけるのは、森田正馬が創始した森田療法です。神経症(森田神経質)が主な対象で、入院治療では絶対臥褥期、軽作業期、作業期、社会復帰期の段階を経ます。マインドフルネス認知療法など、受容を重視する技法を取り入れた認知行動療法もあります。しかし、認知行動療法の基本的な効果は認知の修正であり、「あるがまま」は森田療法と結びつけて覚えます。

覚えるポイント

  • 認知行動療法:認知(受け止め方)のゆがみを修正して、感情と行動を改善する。キーワードは自動思考、認知再構成法(コラム法)、ホームワーク、「今、ここ」。
  • 自律訓練法(シュルツ):自己暗示による自己催眠でリラックスする。重感・温感などの公式を用い、終了時に消去動作を行う。
  • 内観療法(吉本伊信):「してもらったこと・して返したこと・迷惑をかけたこと」を振り返り、自己洞察を深める。
  • 精神分析療法(フロイト):自由連想法で無意識の葛藤を意識化し、洞察を得る。
  • 森田療法(森田正馬):「あるがまま」「目的本位」。絶対臥褥期から始まる。
  • 療法名と「何に働きかけ、何を目指すか」をセットで覚える。同じ要領で、行動療法(系統的脱感作法、エクスポージャー)、SST(社会生活技能訓練)、来談者中心療法(ロジャーズ:受容・共感的理解・自己一致)も整理できる。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。 情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。 本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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