111AM109|第111回 看護師国家試験 過去問

次の文を読み109〜111の問いに答えよ。Aさん(68歳、男性、自営業)は、妻(73歳)と2人暮らし。Aさんの就寝時刻は21時で、入眠後90分以上が経過した睡眠中に、大声で叫び、腕や足を振り回し暴れる行動が繰り返しみられたが、昼寝では夜間のような行動はみられない。日中、台所で子どもが遊んでいると言い、妻が台所を確認しても誰もいないことが何度かあった。心配になった妻がAさんとともに病院を受診し、Lewy〈レビー〉小体型認知症 dementia with Lewy bodies と診断された。Aさんに出現している睡眠障害はどれか。

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正解: 2

正答

2.レム睡眠行動障害 REM sleep behavior disorder

この問題のポイント

睡眠中の異常行動が「いつ」「どのように」起きているかから、睡眠障害の種類を見分ける問題です。「入眠後90分以上経過してから」「大声で叫び、腕や足を振り回す」「昼寝では起こらない」という経過は、レム睡眠が現れる時期と一致します。さらに、Lewy〈レビー〉小体型認知症の特徴である具体的な幻視を伴っていることが判断の決め手になります。

解説

問題文の手がかり

  • 入眠後90分以上経過した睡眠中に出現する:最初のレム睡眠が現れる時期と一致します。
  • 大声で叫び、腕や足を振り回して暴れる:夢の内容をそのまま行動に移していると考えられます。
  • 昼寝では起こらない:短い昼寝では、レム睡眠に入る前に目覚めることが多いためです。
  • 「台所で子どもが遊んでいる」と言うが誰もいない:ありありとした具体的な幻視で、Lewy〈レビー〉小体型認知症に典型的な症状です。
  • 68歳の男性:レム睡眠行動障害は中高年の男性に多くみられます。

睡眠の構造とレム睡眠行動障害

正常な睡眠では、入眠するとまずノンレム睡眠が現れ、次第に深くなります。最初のレム睡眠は入眠後およそ90分で現れます。その後はノンレム睡眠とレム睡眠がおよそ90分の周期で一晩に4〜5回くり返されます。睡眠の前半は深いノンレム睡眠が多く、明け方に近づくほどレム睡眠の割合が増えます。レム睡眠中は脳が活発に働いて夢を見ていることが多い一方、脳幹の働きで骨格筋の緊張がほぼ消えています(筋アトニア)。そのため、夢を見ても通常は体が動きません。

レム睡眠行動障害は、この筋アトニアが失われる病態です。夢の内容がそのまま行動として現れます。夢は「襲われる」「追いかけられる」といった不快なものが多く、寝言や叫び声、殴る・蹴る動作、ベッドからの転落などがみられます。本人がけがをするだけでなく、隣で寝ている家族にけがを負わせることもあります。起こすと比較的すぐに目覚め、行動に一致する夢の内容を話せることが多いのも特徴です。診断は、睡眠ポリグラフ検査で「筋活動の低下を伴わないレム睡眠」を確認して行います。

この障害は、Parkinson〈パーキンソン〉病、Lewy〈レビー〉小体型認知症、多系統萎縮症などのαシヌクレインが蓄積する疾患に高い頻度で合併します。認知症状や運動症状より何年も前に現れることもあります。Lewy〈レビー〉小体型認知症の中核的特徴は次の4つで、レム睡眠行動障害はそのひとつに位置づけられています。

  • 認知機能の変動
  • くり返し現れる具体的な幻視
  • レム睡眠行動障害
  • パーキンソニズム

Aさんは、このうち幻視とレム睡眠行動障害をそろえています。

似た睡眠中の行動との区別も押さえておきます。夜驚症や睡眠時遊行症は、深いノンレム睡眠から生じ、夜の早い時間帯に多く、主に小児にみられます。起こしにくく、本人は出来事を覚えていないことが多い点が違います。夜間せん妄は、目覚めている状態で意識が混濁し、見当識障害や興奮を示すもので、睡眠中の夢の行動化とは異なります。

看護への生かし方

Aさんの家庭では、本人と妻(73歳)の安全確保が最優先です。具体的には次のような対策をとります。

  • 寝床の周りから家具の角・ガラス製品・刃物などの危険物を遠ざける。
  • ベッドを低くするか、床に布団を敷いて転落によるけがを防ぐ。
  • 妻は別の寝床や別室で休む。
  • 暴れているときに無理に押さえつけず、離れた位置から声をかけて覚醒を促す。

薬物療法ではクロナゼパムなどが用いられることがあります。高齢者ではふらつきや転倒に注意します。Lewy〈レビー〉小体型認知症では抗精神病薬への過敏性があるため、薬剤の変化による症状の悪化にも気を配ります。幻視に対しては頭ごなしに否定せず、本人の不安を受け止めます。照明を工夫し、見間違えやすい物を片付けるなど、環境を調整することも大切です。

選択肢の確認

1.ナルコレプシー narcolepsy:日中の耐えがたい眠気(睡眠発作)を中核症状とする過眠症です。情動脱力発作(笑いや驚きなど強い感情で急に力が抜ける)、入眠時幻覚、睡眠麻痺(いわゆる金縛り)を伴い、10歳代での発症が多くみられます。オレキシン(ヒポクレチン)を作る神経細胞の脱落が関与し、入眠直後にレム睡眠が現れるのが特徴です。この疾患は「覚醒しているときにレム睡眠の筋脱力が入り込む」病態で、「レム睡眠中の筋脱力が失われる」選択肢2とは正反対の関係にあります。Aさんの幻視は日中の覚醒時の症状で入眠時幻覚とは異なり、日中の過度な眠気の記載もないため当てはまりません。

2.レム睡眠行動障害 REM sleep behavior disorder:正答。レム睡眠中の筋アトニアが失われ、夢の内容が叫び声や手足を振り回す行動として現れる障害です。入眠後約90分以降に症状が出て昼寝では起こらない点が、レム睡眠の出現時期と一致します。中高年男性に多く、Lewy〈レビー〉小体型認知症の中核的特徴のひとつでもあります。

3.睡眠時無呼吸症候群 sleep apnea syndrome:睡眠中に上気道の閉塞などで10秒以上の呼吸停止(無呼吸)や低呼吸をくり返す疾患です。大きないびき、夜間の中途覚醒、起床時の頭痛、日中の強い眠気が主な症状で、肥満、小顎、飲酒が危険因子になります。治療には経鼻的持続陽圧呼吸療法(CPAP)が用いられます。夢に沿って叫び暴れる行動は典型的な症状ではなく、問題文にもいびきや呼吸停止の記載がないため当てはまりません。

4.睡眠・覚醒スケジュール障害 sleep-wake schedule disorder:体内時計(概日リズム)と、社会生活で求められる睡眠の時間帯がずれて、望む時刻に眠れない・起きられない障害です。現在は概日リズム睡眠・覚醒障害と呼ぶことが多くなっています。若年者に多い睡眠相後退型、高齢者に多い睡眠相前進型(夕方から眠くなり早朝に目覚める)、交代勤務型、時差型、認知症の人にみられる不規則睡眠・覚醒型などがあります。Aさんの21時就寝はやや早めですが、問題となっているのは睡眠の時間帯のずれではなく睡眠中の異常行動なので当てはまりません。

覚えるポイント

  • レム睡眠は入眠後約90分で初めて現れ、約90分周期でくり返し、明け方に多くなります。レム睡眠中は骨格筋の緊張が消失しています(筋アトニア)。
  • レム睡眠行動障害は「筋アトニアが失われ、夢を行動に移す」障害です。中高年男性に多く、Parkinson〈パーキンソン〉病やLewy〈レビー〉小体型認知症に合併し、発症に先行することもあります。看護では危険物の除去、転落防止、同床者との寝床の分離が基本です。
  • Lewy〈レビー〉小体型認知症の中核的特徴は、認知機能の変動、具体的な幻視(人・子ども・小動物など)、レム睡眠行動障害、パーキンソニズムの4つです。抗精神病薬への過敏性にも注意します。
  • ナルコレプシーの4徴は、日中の睡眠発作、情動脱力発作、入眠時幻覚、睡眠麻痺です。
  • 睡眠時無呼吸症候群は、10秒以上の無呼吸、いびき、日中の眠気が特徴で、治療はCPAPです。概日リズムの障害では、高齢者は前進型、若年者は後退型、認知症の人は不規則型が出やすいと覚えます。
  • 夜驚症・睡眠時遊行症は深いノンレム睡眠(夜の早い時間帯、小児に多い)から生じ、レム睡眠行動障害(睡眠の後半に多い、中高年に多い)とは時間帯と年齢層で区別します。

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