111AM104|第111回 看護師国家試験 過去問

次の文を読み103〜105の問いに答えよ。Aさん(30歳、初産婦)はX年2月5日に妊婦健康診査のために来院した。X年2月のカレンダーにAさんの受診日と分娩予定日を示す。Aさんに Leopold〈レオポルド〉触診法で触診を行ったところ、第2胎向で、子宮底付近にやや柔らかい球状の塊を、恥骨結合側に硬い球状のものを触れた。腹部前面を図に示す。Aさんの胎児心音聴取部位で適切なのはどれか。

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正解: 3

正答

3.③

この問題のポイント

レオポルド触診法の所見から胎位(頭位か骨盤位か)と胎向(児背が母体の左右どちらにあるか)を判断し、胎児心音が最もよく聞こえる部位を図から選ぶ問題です。胎児心音は児背側でよく聞こえます。臍より下か上かは胎位で、左右は胎向で決まります。恥骨結合側の「硬い球状のもの(児頭)」から頭位、「第2胎向」から児背は母体の右側とわかるので、答えは臍より下の母体右側です。図は妊婦と向かい合う向きで描かれており、母体の右側が図の向かって左になる点に注意が必要です。

解説

受診日と分娩予定日がどちらも同じ2月にあるので、Aさんは分娩予定日が近い妊娠末期に健診を受けています。この時期は胎児の位置が安定しやすく、レオポルド触診法で胎位・胎向を判断しやすくなります。カレンダーの情報はこの問いでは直接使いません。手がかりは触診所見と図です。

触診所見から第2頭位と判断する

問題文の3つの所見は、次のように読み取ります。

  • 子宮底付近の「やや柔らかい球状の塊」:殿部です。殿部は児頭より柔らかく、形がやや不整です。体幹と一緒に動くため浮球感がありません。
  • 恥骨結合側の「硬い球状のもの」:児頭です。児頭は硬く丸く、首を支点に動きます。そのため、骨盤内に固定される前は、押すと浮き戻るような浮球感があります。
  • 「第2胎向」:児背が母体の右側にあることを示します。

児頭が恥骨結合側、殿部が子宮底側にあるので胎位は頭位です。第2胎向と合わせると、Aさんの胎児は第2頭位(頭位で児背が母体の右側)とわかります。

用語の違いも整理しておきます。

  • 胎位:胎児の縦軸と子宮の縦軸の関係です。縦位(頭位・骨盤位)、横位、斜位に分けます。
  • 胎向:児背(横位では児頭)が母体の左右どちら側にあるかです。左なら第1胎向、右なら第2胎向です。さらに、児背が母体の前方を向くものを第1分類、後方を向くものを第2分類とします。胎向の「第1・第2」は左右を、分類の「第1・第2」は前後を表すので、混同しないようにします。
  • 胎勢:胎児の姿勢です。頭や体幹を曲げた屈位が正常で、反り返った反屈位は異常です。

レオポルド触診法は4段階で行います。

  • 第1段:両手を子宮底に当て、子宮底の高さ・形と、そこにある胎児部分をみます。
  • 第2段:子宮の両側に手を当てます。平らで抵抗のある児背と、凹凸として触れる小部分(四肢)の位置から胎向を判断します。
  • 第3段:片手の母指とほかの4指で恥骨結合の上の先進部をつかみます。それが何か、浮動しているか固定しているかをみます。
  • 第4段:この段だけは検者が妊婦の足元の方を向きます。両手の指先を骨盤入口へ向け、先進部の下降度を確かめます。

Aさんの所見は、子宮底の所見が第1段、胎向が第2段、恥骨結合側の所見が第3段で得られたものです。

胎児心音の最良聴取部位

胎児心音は、子宮壁に接する児背を通して最もよく伝わります。胎児の腹側は曲げた四肢が重なっていて、音が伝わりにくいためです。心臓は胸部にあるので、胎児の胸部の高さにある児背側が最良聴取部位になります。

  • 頭位:胎児の胸部は臍より下にくるので、臍と上前腸骨棘を結ぶ線の中央付近(児背側)で聴取します。第1頭位なら母体の左下腹部、第2頭位なら右下腹部です。
  • 骨盤位:児頭が子宮底側にあり、胸部が高い位置にくるので、臍の高さかそれより上の児背側で聴取します。
  • 横位:臍の付近が聴取部位の目安です。

分娩が進んで児頭が下降・回旋すると、最良聴取部位は下方かつ正中寄りへ移っていきます。まとめると上下は胎位、左右は胎向で決まります。第2頭位のAさんでは「臍より下・母体の右側」が最良聴取部位です。

図の読み取りと実践での注意

図は妊婦の腹部を正面から見たものです。向かって左に「右上前腸骨棘」、向かって右に「左上前腸骨棘」と書かれているので、母体の右側は図の向かって左です。臍(黒い点)で交わる2本の破線は、臍と左右の上前腸骨棘を結ぶ線を、臍より上まで延ばしたものです。

臍より下にある②と③のうち、臍と右上前腸骨棘を結ぶ線の中央付近にあるのは③です。これが第2頭位の最良聴取部位です。臍より上にある①と④は、骨盤位のときの聴取部位にあたります。

実際の聴取では、先にレオポルド触診法で胎位・胎向を確かめます。そのうえで、推定した部位に超音波ドップラー装置やトラウベ桿状聴診器を当てると、短時間で確実に見つけられます。

  • 子宮雑音や母体の大動脈音は、母体の脈拍と同じリズムで聞こえます。母体の橈骨動脈を同時に触れて、胎児心音と区別します。なお、臍帯雑音は胎児心拍と同じリズムです。
  • 胎児心拍数基線の正常範囲は110〜160bpmです。
  • 妊娠末期に仰臥位を長く続けると、大きくなった子宮が下大静脈を圧迫し、仰臥位低血圧症候群を起こすことがあります。触診と聴取は手際よく行い、気分が悪いと訴えたら左側臥位にします。

選択肢の確認

1.①:臍より上で母体の左側(図の向かって右上)にあたる位置です。臍より上で心音を聴取するのは、児頭が子宮底側にある骨盤位のときです。この位置は、骨盤位で児背が母体の左側にある第1骨盤位の聴取部位にあたります。Aさんは頭位で第2胎向なので、高さも左右も合いません。

2.②:臍と左上前腸骨棘を結ぶ線の中央付近、つまり母体の左下腹部で、頭位で児背が母体の左側にある第1頭位の聴取部位です。臍より下という高さは頭位に合っています。しかし第2胎向のAさんでは、児背と反対の小部分側にあたるため、心音は聞こえにくくなります。図の向かって右側を母体の右側と取り違えると、選んでしまいやすい選択肢です。

3.③:正答。臍と右上前腸骨棘を結ぶ線の中央付近で、母体の右下腹部(図の向かって左下)にあたります。頭位では胎児の胸部が臍より下にあり、第2胎向では児背が母体の右側にあります。そのため、児背を通して心音が最もよく伝わるこの位置が最良聴取部位です。

4.④:臍より上で母体の右側(図の向かって左上)にあたる位置で、骨盤位で児背が母体の右側にある第2骨盤位の聴取部位です。左右は第2胎向と合っています。しかしAさんは恥骨結合側に硬い児頭を触れる頭位で、胎児の胸部は臍より下にあります。そのため、この高さは最良聴取部位になりません。

覚えるポイント

  • 胎児心音は児背側で最もよく聞こえます。上下は胎位で決まり、頭位は臍より下(臍と上前腸骨棘を結ぶ線の中央付近)、骨盤位は臍の高さかそれより上です。左右は胎向で決まり、第1胎向は母体の左、第2胎向は母体の右です。
  • 胎位は胎児と子宮の縦軸の関係(頭位・骨盤位・横位・斜位)です。胎向は児背(横位では児頭)が母体の左右どちらにあるか、胎勢は胎児の姿勢(屈位が正常)です。児背の前方・後方は、第1分類・第2分類で表します。
  • 触診では、児頭は硬く丸く浮球感があります。殿部はやや柔らかく不整形で、浮球感がありません。
  • レオポルド触診法でみるものは、第1段が子宮底の胎児部分、第2段が児背と小部分(胎向)、第3段が先進部とその浮動・固定、第4段が先進部の下降度です。第4段だけ、検者は妊婦の足元を向きます。
  • 正面から見た腹部の図では、母体の右は図の向かって左です。上前腸骨棘などのラベルで、必ず左右を確かめます。
  • 胎児心拍数基線の正常範囲は110〜160bpmです。母体の橈骨動脈を同時に触れて、母体由来の音と区別します。聴取できる時期の目安は、超音波ドップラー法で妊娠10〜12週ごろ、トラウベ桿状聴診器で妊娠18〜20週ごろからです。

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