111PM041|第111回 看護師国家試験 過去問
成人の後腸骨稜からの骨髄穿刺で正しいのはどれか。
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正解: 3
正答
3.骨髄液吸引時に痛みが生じる。
この問題のポイント
骨髄穿刺の介助で押さえるべき「体位」「穿刺中の患者への指示」「痛みが生じるタイミング」「終了後の生活上の注意」を問う問題です。判断の鍵は3つあります。1つ目は、問題文の「後腸骨稜から」という穿刺部位の条件です。2つ目は、局所麻酔が骨髄腔内には効かないことです。3つ目は、穿刺後に出血と感染への注意が必要なことです。
解説
骨髄穿刺とは
骨髄穿刺は、骨髄に針を刺して骨髄液を吸引する検査です。造血細胞の数や形態、腫瘍細胞の有無、染色体や遺伝子の異常を調べます。医師が行い、看護師は介助します。白血病、骨髄異形成症候群、再生不良性貧血、多発性骨髄腫、原因不明の血球減少などの診断や、治療効果の判定に用います。骨髄線維症などで吸引しても骨髄液が採れない状態(dry tap)では、骨髄組織そのものを採取する骨髄生検を行います。
穿刺部位と体位
成人では後腸骨稜(上後腸骨棘付近)が第一選択です。理由は次の3点です。
- 骨髄が豊富である。
- 周囲に重要臓器がなく安全である。
- 骨髄生検も同じ部位で行える。
胸骨でも穿刺できます。ただし胸骨は薄く、深く刺しすぎると縦隔や心臓・大血管を損傷するおそれがあります。そのため胸骨では吸引のみを行い、生検は行いません。
体位は穿刺部位によって決まります。
- 後腸骨稜:腹臥位、または穿刺側を上にした側臥位
- 胸骨:仰臥位
麻酔と痛み
局所麻酔は、皮膚、皮下組織、骨膜まで浸潤させます。骨膜は痛覚が鋭いので十分に麻酔しますが、骨髄腔内には麻酔薬を効かせることができません。そのため、注射器で陰圧をかけて骨髄液を吸引する瞬間に、「引き抜かれるような」「響くような」独特の痛みが生じます。この痛みは一瞬で、吸引が終われば治まります。針を骨に進める段階では、痛みよりも強く押される圧迫感として感じることが多いです。
看護師は事前に、痛みが生じるタイミングを説明しておきます。吸引の直前には「今から吸います。一瞬引っ張られるような痛みがあります」と予告し、患者が驚いて動かないようにします。痛みを予測できると不安が和らぎ、体動の防止にもつながります。
穿刺中の関わり
穿刺中に体が動くと、針がずれて周囲の組織を傷つける危険があります。したがって、動かないことが最も重要です。看護師は次のように関わります。
- 力を抜いて自然に呼吸してもらう。
- 体位を支え、声をかけ続ける。
- 表情、顔色、脈拍、冷汗や気分不快(迷走神経反射)を観察する。
終了後のケア
- 抜針後は穿刺部を十分に圧迫止血し、滅菌ガーゼで保護します。
- 後腸骨稜の場合は仰臥位になってもらい、体重で穿刺部を圧迫しながらしばらく安静を保ちます。
- 穿刺部の出血・血腫、疼痛、バイタルサインを観察します。
- 当日の入浴は控えてもらいます。翌日、出血や感染徴候がないことを確認してから入浴を許可します。
事前の確認も重要です。血小板減少や凝固異常がある患者、抗凝固薬・抗血小板薬を内服している患者は出血しやすくなります。事前に血小板数、凝固検査、服薬を確認し、止血をより慎重に確かめます。また、造血器疾患の患者は好中球減少を伴うことが多く、感染予防のためにも穿刺部の清潔保持が重要です。
選択肢の確認
1.仰臥位で行う。:後腸骨稜は背面にあるため、仰臥位では穿刺部位が下になり、穿刺できません。後腸骨稜からの穿刺は、腹臥位または穿刺側を上にした側臥位で行います。仰臥位をとるのは胸骨から穿刺する場合で、部位と体位の組み合わせを取り違えやすい選択肢です。なお後腸骨稜穿刺では、仰臥位は終了後の圧迫止血と安静のための体位として用います。
2.穿刺時は深呼吸を促す。:穿刺時に患者に求めるのは体を動かさないことです。深呼吸をすると胸郭や体幹が大きく動き、針の位置がずれる危険があるため、この選択肢は適切ではありません。穿刺前に深呼吸で緊張をほぐすことはありますが、穿刺の瞬間は力を抜いて自然な呼吸を続けてもらい、体を支えます。呼吸の指示が重要になるのは、肝生検のように呼吸で臓器が動く穿刺で、この場合は穿刺の瞬間に息止めを求めます。
3.骨髄液吸引時に痛みが生じる。:正答。局所麻酔は皮膚から骨膜までしか効かず、骨髄腔内は麻酔できません。そのため、陰圧をかけて骨髄液を吸引する瞬間に、引き抜かれるような一過性の痛みが生じます。痛みが生じるタイミングを事前に説明し、吸引直前に声をかけて体動を防ぐことが看護のポイントです。
4.終了後、当日の入浴は可能である。:穿刺当日は、穿刺部からの再出血と感染を防ぐために入浴を控えるので、この選択肢は誤りです。入浴で血管が拡張すると出血しやすくなり、穿刺部が湯に浸かると細菌が侵入するおそれもあります。翌日に穿刺部の出血、発赤、腫脹がないことを確認してから入浴を許可するのが一般的です。
覚えるポイント
- 成人の骨髄穿刺は後腸骨稜が第一選択で、生検も行えます。胸骨は吸引のみで、深く刺すと縦隔・心臓を損傷する危険があります。
- 体位は穿刺部位で決まります。後腸骨稜は腹臥位か側臥位、胸骨は仰臥位です。
- 局所麻酔が効くのは骨膜までです。骨髄腔内は麻酔が効かないため吸引時に一瞬痛みが生じ、それを予告することが体動防止につながります。
- 穿刺中は動かないことが最優先です。終了後は圧迫止血のあと仰臥位で安静を保ち、出血・血腫を観察し、当日の入浴は避けます。
- 他の穿刺の体位も整理しておきます。腰椎穿刺は側臥位で膝を抱えて背中を丸め、胸水の胸腔穿刺は座位(オーバーテーブルに寄りかかる)、腹腔穿刺は仰臥位またはファウラー位、肝生検は仰臥位で穿刺時に息止めをします。
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