112AM039|第112回 看護師国家試験 過去問
穿刺と穿刺部位の組合せで適切なのはどれか。
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正解: 3
正答
3.腹腔穿刺 ― 腹直筋外側の側腹部
この問題のポイント
代表的な4つの穿刺(胸腔・骨髄・腹腔・腰椎)について、標準的な穿刺部位を問う問題です。穿刺部位は、目的の腔や組織に確実に届き、損傷してはいけない臓器・血管・神経を避けられる場所として決まります。誤りの選択肢は、別の穿刺の部位や別の手技の目安(骨の指標)と入れ替えられています。そこに気付けるかが鍵です。
解説
穿刺は体内に針を進める侵襲的な処置です。そのため部位は、次の2点から決まります。
- 何を採る・抜くのか(目的物がたまる場所)
- 何を傷つけてはいけないのか(危険な構造物)
4つの穿刺をこの視点で整理すると、組合せを丸暗記しなくても判断できます。
腹腔穿刺(正答)
腹腔穿刺は、腹水の検査(性状、細胞診、細菌培養など)や、腹部膨満・呼吸困難を和らげる排液のために行います。
下腹壁動脈は外腸骨動脈から分かれ、腹直筋の後面を上行します。そのため腹直筋を貫く部位を刺すと出血の危険があり、腹直筋の外側縁より外側の側腹部を選びます。目安は臍と左上前腸骨棘を結ぶ線(モンロー・リヒター線)上の外側寄りで、左下腹部がよく用いられます。
この部位は腸管の損傷も避けやすい場所です。腹水は重力で下腹部や側腹部にたまります。一方、腸管はガスを含んで腹水の上に浮き、正中寄りに集まりやすいからです。実際には超音波で腹水の量と腸管の位置を確認してから刺します。
看護で押さえる点は次のとおりです。
- 処置前に排尿を済ませ、膀胱を空にする(膀胱損傷の予防)
- 体位は仰臥位またはセミファウラー位にし、腹水を下腹部に集める
- 処置前後に腹囲と体重を測り、効果を評価する
- 排液中・排液後は血圧低下やショック症状に注意し、排液はゆっくり行う(腹腔内圧が急に下がると腹部に血液が移り、循環血液量が相対的に不足するため)
- 穿刺部からの腹水の漏れや、腹膜炎などの感染徴候を観察する
ほかの3つの穿刺
胸腔穿刺は、胸水か気胸かで部位が変わります。
- 胸水:坐位で前かがみ(オーバーテーブルにもたれる姿勢)にし、液がたまる背側下部を刺します。部位は中腋窩線〜後腋窩線上の下位の肋間です。
- 気胸の脱気:空気がたまる前胸部上方を刺します。部位は鎖骨中線上の第2肋間付近です。
肋間動静脈と肋間神経は肋骨の下縁に沿って走るため、針は肋骨の上縁に沿って刺入します。合併症には気胸、出血、急速・大量排液による再膨張性肺水腫があり、処置後は胸部X線で確認します。
骨髄穿刺は、造血組織である骨髄液を採取する検査です。成人では後腸骨稜(上後腸骨棘付近)が第一選択で、前腸骨稜や胸骨(胸骨体上部)も用います。胸骨は薄く、深く刺すと心臓や大血管を損傷するおそれがあります。そのため小児では胸骨を用いず、腸骨で行い、乳児では脛骨も用います。対象には血小板減少のある患者が多いため、処置後は十分な圧迫止血と出血の観察が重要です。
腰椎穿刺は、くも膜下腔から髄液を採取し、髄液圧の測定や髄液検査を行う処置です。成人の脊髄は第1〜2腰椎の高さ(脊髄円錐)で終わります。それより下の第3・4腰椎間または第4・5腰椎間を刺せば、脊髄を傷つけずに髄液を得られます。
- 目安:左右の腸骨稜の最高点を結ぶヤコビー線で、第4腰椎棘突起付近にあたります。
- 体位:側臥位で膝を抱え、頭を前屈させる姿勢にして棘突起の間を広げます。
- 禁忌:頭蓋内圧亢進がある場合は、脳ヘルニアを起こす危険があります。
- 処置後:低髄液圧による頭痛を防ぐため、一定時間の安静臥床をとります。
以上から、穿刺の目的と危険構造の回避という原則に合うのは選択肢3です。
選択肢の確認
1.胸腔穿刺 ― 胸骨柄:胸骨柄は前胸部正中の骨で、裏側には縦隔の大血管などがあり、胸膜腔に針を入れる部位ではありません。胸腔穿刺は、胸水なら中腋窩線〜後腋窩線上の下位肋間、気胸なら鎖骨中線上の第2肋間付近で行い、肋骨上縁に沿って刺します。胸骨は骨髄穿刺で用いることがある部位なので、骨髄穿刺と取り違えないようにします。なお、胸骨柄と胸骨体の境にある胸骨角は第2肋骨の高さにあたり、肋間を数えるときの目安になります。
2.骨髄穿刺 ― 第3・4腰椎間:第3・4腰椎間は、脊髄円錐より下でくも膜下腔に届く腰椎穿刺の代表的な部位です。骨髄穿刺は造血が盛んな骨の骨髄腔に針を入れる検査で、成人では後腸骨稜が第一選択、ほかに前腸骨稜や胸骨を用います。椎骨と椎骨のすき間を刺しても骨髄には届かないため、この組合せは適切ではありません。
3.腹腔穿刺 ― 腹直筋外側の側腹部:正答。腹直筋の後面を走る下腹壁動脈を避けられ、腹水がたまりやすく腸管を傷つけにくい部位です。臍と左上前腸骨棘を結ぶ線上の外側寄りが目安になります。処置前に排尿を促し、排液中・排液後は血圧低下に注意します。
4.腰椎穿刺 ― 上前腸骨棘:上前腸骨棘は骨盤前面にある腸骨の突起で、脊柱管には通じていないため腰椎穿刺には使えません。腰椎穿刺はヤコビー線を目安に第3・4腰椎間または第4・5腰椎間で行います。上前腸骨棘は、腹腔穿刺の部位を決める目安(臍と結ぶ線)や、中殿筋への筋肉内注射部位(クラーク点、ホッホシュテッターの部位)を決める指標です。これらと混同しないようにします。
覚えるポイント
- 腹腔穿刺は腹直筋外側の側腹部(臍と左上前腸骨棘を結ぶ線の外側寄り)で行い、下腹壁動脈・腸管・膀胱を避けます。処置前に排尿し、排液後は血圧低下に注意します。
- 胸腔穿刺は、胸水なら坐位前傾で中〜後腋窩線の下位肋間、気胸なら鎖骨中線の第2肋間付近です。どちらも肋骨上縁に沿って刺入します。
- 骨髄穿刺は成人では後腸骨稜が第一選択です。胸骨は成人のみで、小児は腸骨(乳児は脛骨も)を用います。処置後は圧迫止血を行います。
- 腰椎穿刺は第3・4腰椎間または第4・5腰椎間で、ヤコビー線(第4腰椎棘突起付近)が目安です。側臥位で背中を丸め、頭蓋内圧亢進時は禁忌、処置後は安静臥床で頭痛を予防します。
- 骨の指標の役割を区別します。胸骨角は第2肋骨の高さ、ヤコビー線は第4腰椎、上前腸骨棘は腹腔穿刺や殿部筋注の部位を決める目安です。
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