111PM066|第111回 看護師国家試験 過去問

長期に大量飲酒をした後で、急に断酒した際にみられるのはどれか。

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正解: 2

正答

2.振戦せん妄 delirium tremens

この問題のポイント

アルコールによる精神・神経障害を、起こる時期と機序で区別できるかを問う問題です。鍵になるのは「長期に大量飲酒」と「急に断酒した際」の2つの条件で、これは**離脱症状(退薬症状)**を指しています。アルコール関連障害を「飲酒中」「断酒後」「長期飲酒の結果」の3つに分けて考えると、正答は振戦せん妄に絞れます。

解説

離脱症状が起こるしくみ

アルコールは中枢神経を抑制する物質です。抑制性のGABA-A受容体の働きを強め、興奮性のグルタミン酸(NMDA)受容体の働きを抑えます。長期に大量飲酒を続けると、脳はこの抑制された状態に適応します。GABA系の働きを弱め、グルタミン酸系を強めることで釣り合いをとるようになり、耐性と身体依存が形成されます。

この状態で急にアルコールが途絶えると、抑制だけがはずれ、神経が過剰に興奮します。これが離脱症状です。問題文の「長期に大量飲酒」は身体依存が形成されていることを、「急に断酒」は離脱の引き金を示しています。

離脱症状の経過

離脱症状は、出現する時期で2段階に分けて理解します。

  • 早期離脱症状(小離脱):断酒後数時間から2日以内に出現します。手指の振戦、発汗、頻脈、血圧上昇、不眠、不安・焦燥、悪心・嘔吐がみられます。一過性の錯覚や幻覚、全身性のけいれん発作(離脱けいれん)を伴うこともあります。
  • 後期離脱症状(大離脱):断酒後2〜3日目ごろ(おおむね48〜96時間)に出現するのが振戦せん妄です。

振戦せん妄の中心は意識混濁です。そのうえに次の症状が重なります。

  • 見当識障害
  • 小動物や虫がうごめいて見えるといった生々しい幻視
  • 強い不安と精神運動興奮
  • 粗大な振戦
  • 発汗、発熱、頻脈などの自律神経症状

まぶたを軽く押さえて問いかけると幻視が誘発されるリープマン現象や、ふだんの仕事の動作を繰り返す作業せん妄も特徴として知られています。

脱水、電解質異常、高体温、感染症を合併すると生命に関わるため、医学的な緊急事態として扱います。治療の中心は、ベンゾジアゼピン系薬による鎮静、輸液と電解質の補正、ビタミンB1の補給です。

なお、アルコール幻覚症は意識が清明なまま幻聴が中心となる状態で、意識混濁と幻視を主とする振戦せん妄とは区別します。

看護の実践で生きる視点

振戦せん妄は、アルコール依存症の治療入院に限らず起こります。骨折、手術、肺炎などで緊急入院し、その結果として飲酒が中断された患者にもみられます。入院2〜3日目に急に落ち着きを失い、点滴の自己抜去や転倒・転落に至ることがあります。

そのため、入院時に飲酒歴(量、期間、最終飲酒時刻)を確認し、振戦・発汗・頻脈・不眠といった早期の徴候を観察することが大切です。せん妄が起きたときは、次のケアを行います。

  • バイタルサインの頻回な観察
  • 転倒と自己抜去の予防
  • 錯覚を招きにくい照明などの環境調整
  • 穏やかな声かけによる見当識の支援

時間軸での整理

病的酩酊は飲酒中に起こる状態です。アルコール性認知症とKorsakoff症候群は、長期飲酒の結果として生じる慢性の脳障害です。急な断酒によって起こる状態は、選択肢の中では振戦せん妄だけです。

選択肢の確認

1.病的酩酊 pathological intoxication:飲酒している最中に起こる異常な酔い方であり、断酒によって生じる状態ではありません。酩酊は単純酩酊と異常酩酊に分けられ、異常酩酊には複雑酩酊と病的酩酊があります。病的酩酊は通常の酔いとは質的に異なります。急激に意識障害(もうろう状態など)が生じ、周囲の状況とかみ合わない行動をとり、後に健忘を残します。司法精神医学で責任能力が問題になる状態として問われることがありますが、起こる時期が「飲酒中」である点で区別します。

2.振戦せん妄 delirium tremens:正答。身体依存が形成された人が急に断酒したとき、断酒後2〜3日目ごろに出現する後期離脱症状です。意識混濁、見当識障害、小動物幻視、精神運動興奮に加え、粗大な振戦と、発汗・発熱・頻脈などの自律神経症状を伴います。問題文の「長期に大量飲酒」「急に断酒」という条件にそのまま合致します。

3.アルコール性認知症 alcohol-related dementia:長期間の大量飲酒によって脳萎縮や神経障害が進み、記憶力や判断力が徐々に低下していく慢性の状態です。急な断酒をきっかけに出現するものではありません。栄養障害などの関与も考えられています。断酒を続けると部分的に改善する場合があり、この点が変性疾患による認知症との違いとして挙げられます。

4.Korsakoff〈コルサコフ〉症候群 Korsakoff syndrome:ビタミンB1(チアミン)欠乏による健忘症候群で、長期飲酒に伴う栄養障害の結果として起こる慢性の障害です。多くはWernicke脳症(意識障害、眼球運動障害、小脳性運動失調の三徴)に引き続いて生じ、記銘力障害、見当識障害、作話を特徴とします。断酒による離脱症状ではありません。離脱症状の治療でビタミンB1を補給するのは、Wernicke脳症とこの障害を防ぐためでもあります。

覚えるポイント

  • アルコール関連障害は時期で整理します。飲酒中は酩酊(単純・複雑・病的)、断酒後は離脱症状(早期離脱症状・振戦せん妄)、長期飲酒の結果はアルコール性認知症、Wernicke脳症、Korsakoff症候群です。
  • 早期離脱症状は断酒後数時間〜2日以内(振戦、発汗、頻脈、不眠、離脱けいれん)、振戦せん妄は断酒後2〜3日目ごろ(おおむね48〜96時間)に出現します。
  • 振戦せん妄の特徴は、意識混濁、見当識障害、小動物幻視、精神運動興奮、粗大な振戦、発熱・発汗・頻脈です。意識清明で幻聴が中心のアルコール幻覚症と区別します。
  • Wernicke脳症の三徴は意識障害・眼球運動障害・小脳性運動失調、Korsakoff症候群の特徴は記銘力障害・見当識障害・作話です。どちらもビタミンB1欠乏が原因で、糖を含む輸液はビタミンB1の補給とあわせて行います。
  • 入院で飲酒が途絶えた患者は、2〜3日目のせん妄に注意します。入院時に飲酒歴と最終飲酒時刻を確認しておきます。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。 情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。 本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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