112AM036|第112回 看護師国家試験 過去問

臨死期の身体的変化はどれか。

解答・解説を見る

正解: 3

正答

3.不規則な呼吸が出現する。

この問題のポイント

臨死期(死が目前に迫った時期)の身体変化と、死亡後に起こる変化を区別できるかを問う問題です。判断の軸は次の3つです。

  • 循環が落ちると、末梢から機能が失われる。
  • 筋は硬直ではなく弛緩する。
  • 腎血流が減り、尿は減る。

臨死期の代表的な徴候は、呼吸のリズムと深さが乱れることです。

解説

臨死期に起こること

臨死期には心拍出量と血圧が低下し、全身の臓器への血流と酸素供給が減ります。その結果、脳・腎・末梢組織の機能が次々に落ちていきます。系統ごとに整理すると理解しやすくなります。

  • 呼吸:呼吸中枢の機能が低下し、リズムと深さが一定でなくなります。
    • チェーン・ストークス呼吸:浅い呼吸から深い呼吸へ、また浅い呼吸へと周期的に変化し、その間に無呼吸をはさみます。
    • 下顎呼吸:下顎を動かしてあえぐように息をします。死が間近であることを示す重要なサインです。
    • 死前喘鳴:分泌物を飲み込んだり出したりできなくなり、咽頭でゴロゴロと音がします。
  • 循環:血圧が下がり、脈拍は微弱で不整になります。末梢の血流から先に失われるため、四肢の冷感、爪床や口唇のチアノーゼ、皮膚の網目状のまだら模様が現れます。脈は末梢の細い動脈から触れにくくなり、中枢に近い太い動脈ほど最後まで触れます。
    • 目安として、橈骨動脈が触れれば収縮期血圧はおよそ80mmHg以上、頸動脈しか触れなければおよそ60mmHg程度と教えられます。ただし実際には個人差が大きい点に注意します。
  • 腎・排泄:腎血流の低下により尿量が減り、乏尿から無尿に至ります。一方で括約筋がゆるむため、失禁がみられることがあります。
  • 意識:傾眠から昏睡へと意識レベルが低下します。聴覚は最後まで保たれやすいといわれています。
  • 筋・外観:全身の筋緊張が低下し、下顎が下がって口が開きます。まぶたが完全には閉じないこともあります。

死後の変化との区別

死後硬直は死亡後の変化です。

  • 機序:ATPが枯渇し、アクチンとミオシンが結合したまま離れなくなることで起こります。
  • 経過:死亡後数時間で顎関節付近から始まり、上から下へ全身に広がり、その後時間とともに緩解します。

死斑も死後の変化で、血液が重力で身体の下側にたまって生じます。臨死期にみられる末梢のまだら模様とは別のものです。

なお、死の三徴候は次の3つです。

  • 呼吸停止
  • 心拍停止
  • 瞳孔散大と対光反射の消失

正答に至る判断

臨死期には、尿量は減り、筋は弛緩し、脈は末梢から触れなくなります。この筋道で考えると、選択肢1・2・4はいずれも臨死期の変化と逆の内容です。呼吸の規則性が失われることを示す選択肢3が正答です。

看護での生かし方

不規則な呼吸や死前喘鳴は、家族には「苦しそう」に見えやすい変化です。意識が低下した段階では本人の苦痛は少ないとされ、自然な経過であることを伝えると家族の不安が和らぎます。

  • 死前喘鳴への対応:深い吸引を繰り返すと本人の負担になります。顔を横に向けるなどの体位の工夫、口腔内の分泌物をやさしく拭うこと、口腔の保湿を中心に行います。
  • 家族への支援:聴覚は残りやすいとされるため、家族が声をかけたり手を握ったりできるよう支援します。
  • エンゼルケア:死後硬直が進む前に眼と口を閉じ、体位を整えます。

選択肢の確認

1.尿量が増加する。:臨死期には心拍出量の低下により腎血流と糸球体濾過量が減るため、尿量は減少し、乏尿・無尿に向かいます。尿量が増えるのは、輸液過剰、利尿薬の投与、尿崩症、急性腎障害の回復期(多尿期)などです。括約筋の弛緩による失禁を「尿が増えた」と取り違えないようにします。

2.全身の筋肉が硬直する。:臨死期には筋緊張が低下して全身の筋は弛緩し、下顎が下がって口が開きます。全身の筋が硬くなるのは死後硬直で、死亡後に顎関節付近から始まる変化です。臨死期の所見と死後の所見を混同させる選択肢です。

3.不規則な呼吸が出現する。:正答。呼吸中枢の機能低下により、チェーン・ストークス呼吸、下顎呼吸、無呼吸をはさむ呼吸など、リズムや深さが一定でない呼吸が現れます。特に下顎呼吸は死が間近であることを示す徴候で、家族を呼ぶ判断にもつながります。

4.頸動脈が触れなくなった後、橈骨動脈が触れなくなる。:血圧が低下すると、末梢の細い動脈である橈骨動脈から先に触れなくなり、中枢に近い太い頸動脈は最後まで触れます。記述は順序が逆です。心肺蘇生で成人の脈拍を頸動脈で確認するのも、太い中枢の動脈のほうが低い血圧でも触知しやすいためです。

覚えるポイント

  • 臨死期の呼吸は、チェーン・ストークス呼吸・下顎呼吸・死前喘鳴です。下顎呼吸は死が間近であるサインです。
  • 循環は末梢から破綻し、四肢冷感・チアノーゼ・まだら模様が出ます。脈は橈骨動脈から触れなくなり、頸動脈が最後まで残ります。
  • 腎血流の低下で尿量は減少(乏尿→無尿)します。括約筋の弛緩による失禁はありえます。
  • 臨死期は筋弛緩です。死後硬直と死斑は死後の変化で、死の三徴候は呼吸停止・心拍停止・瞳孔散大と対光反射消失です。
  • 死前喘鳴には深い吸引より体位と口腔ケアで対応し、自然な経過であることを家族に説明します。聴覚は残りやすいため、声かけを勧めます。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。 情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。 本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

問題文・正答・解説に誤りを見つけたら、この問題の誤りを報告する([email protected])までお知らせください。確認して修正します。

関連問題

← 112AM035112AM037 →
学習アプリでこの問題を解く(記録・メモ・カード化)