112PM061|第112回 看護師国家試験 過去問
産褥期の生理的変化で正しいのはどれか。
解答・解説を見る
正解: 1
正答
1.児が乳頭を吸啜することによってオキシトシンが分泌される。
この問題のポイント
産褥期に起こる生理的変化について、4つの視点から確認する問題です。視点は、授乳にかかわるホルモン、子宮復古の時期、水分代謝(尿量)、胎盤由来ホルモンの推移です。次の3点を押さえていれば、確実に正答できます。
- 吸啜刺激により、下垂体後葉からオキシトシンが分泌される。
- 胎盤がなくなると、エストロゲン・プロゲステロンは急減する。
- 妊娠中にためた水分は、産褥早期に尿と汗で排出される。
解説
産褥期とは、分娩が終わってから、妊娠・分娩で変化した母体(主に生殖器)が非妊時の状態に戻るまでの期間です。おおむね産後6〜8週間を指します。この時期の変化は、「胎盤娩出によるホルモン環境の急変」と「授乳の開始」を起点に考えると整理しやすくなります。
授乳とホルモンの変化
児が乳頭を吸啜すると、その刺激が知覚神経を通じて視床下部に伝わります。その結果、次の2種類のホルモンが分泌されます。
- オキシトシン(下垂体後葉):乳腺の腺房を取り囲む筋上皮細胞を収縮させ、乳汁を乳管へ押し出します(射乳反射)。同時に子宮平滑筋を収縮させ、子宮復古を促します。授乳中に下腹部が痛む後陣痛はこの作用によるもので、経産婦で強く感じやすい傾向があります。
- プロラクチン(下垂体前葉):乳腺での乳汁の産生を促します。
オキシトシンは乳汁を「出す」、プロラクチンは乳汁を「つくる」と区別すると混同しません。オキシトシンは児の泣き声などの心理的刺激でも分泌されますが、痛み・不安・緊張では抑制されます。授乳時にリラックスできる環境を整えることや、早期からの頻回授乳が大切なのはこのためです。これらは母乳分泌と子宮復古の両方を助けます。
妊娠中のエストロゲンとプロゲステロンは、主に胎盤から大量に分泌されています。胎盤が娩出されると供給源がなくなるため、両ホルモンは分娩後に急速に低下します。
- 妊娠中は、高濃度のエストロゲン・プロゲステロンがプロラクチンの乳汁産生作用を抑えています。
- 分娩後はこの抑制が外れ、産褥3日前後から乳房の緊満や乳汁の増加がみられるようになります。
- 急激なホルモン低下は、マタニティブルーズ(産褥数日〜10日ごろに一過性にみられる涙もろさや気分の落ち込み)の一因とも考えられています。
子宮復古
子宮底の位置は、次のように変化します。
- 胎盤娩出直後:臍下2〜3横指付近
- 分娩後12時間ほど:臍高付近まで上昇(骨盤底の緊張回復などによる)
- その後:1日におよそ1横指ずつ下降
- 産褥10日〜2週ごろ:腹壁の上から触れなくなる
ただし、触れなくなった時点で子宮がもとの大きさに戻ったわけではありません。子宮の大きさや重量が非妊時にほぼ戻るのは産褥6〜8週ごろです。
水分代謝と排尿
妊娠中は循環血液量や細胞外液が増え、体内に水分とナトリウムが貯留しています。分娩後はこれらが体外へ排出されるため、分娩後数日間は尿量が増え(生理的多尿)、発汗も多くなります。
一方、分娩直後は尿意を感じにくく、排尿困難や残尿が起こりやすい時期です。原因は次のようなものです。
- 児頭の通過による膀胱・尿道の圧迫や浮腫
- 麻酔の影響
充満した膀胱は子宮収縮を妨げ、弛緩出血の原因にもなります。そのため看護師は、尿意がなくても早めに排尿を促し、膀胱の充満と子宮底の高さ・硬さをあわせて観察します。「尿が出にくい」ことと「尿量が減る」ことは別の現象です。
選択肢の確認
1.児が乳頭を吸啜することによってオキシトシンが分泌される。:正答。吸啜刺激が視床下部に伝わり、下垂体後葉からオキシトシンが分泌されます。オキシトシンは筋上皮細胞を収縮させて射乳を起こします。あわせて子宮も収縮させ、子宮復古や後陣痛にかかわります。同じ吸啜刺激で下垂体前葉から出るプロラクチン(乳汁産生)と取り違えないよう注意しましょう。
2.子宮が非妊時の大きさに戻るのは分娩後約2週である。:子宮が非妊時の大きさにほぼ戻るのは産褥6〜8週ごろで、約2週の時点ではまだ復古の途中です。産褥10日〜2週ごろは、子宮底が腹壁の上から触れなくなる時期です。この選択肢は、「外から触れなくなる時期」と「大きさがもとに戻る時期」の混同をねらっています。
3.分娩後は一時的に尿量が減少する。:妊娠中に貯留した水分とナトリウムが排出されるため、分娩後数日間は尿量が一時的に増加し、発汗も増えます。分娩直後に起こりやすいのは、尿意の鈍麻や浮腫による排尿困難・残尿です。尿の生成量そのものが減るわけではありません。
4.プロゲステロンが増加する。:プロゲステロンは妊娠中は主に胎盤から分泌されており、胎盤の娩出によって分娩後は急速に低下します。エストロゲンも同様に低下し、これが乳汁分泌の本格化やマタニティブルーズの背景になります。プロゲステロンが上昇するのは、産後に排卵が再開した後の黄体期や、次の妊娠が成立したときです。
覚えるポイント
- 吸啜刺激では、下垂体後葉からオキシトシン(射乳反射・子宮収縮・後陣痛)、下垂体前葉からプロラクチン(乳汁産生)が分泌される。
- 胎盤娩出後はエストロゲン・プロゲステロンが急減し、乳汁分泌の本格化とマタニティブルーズの背景になる。
- 子宮底は、分娩12時間後に臍高付近 → 1日約1横指ずつ下降 → 産褥10日〜2週で腹壁上から触れなくなる → 非妊時の大きさに戻るのは産褥6〜8週。
- 産褥早期は生理的多尿と発汗増加がみられる。分娩直後の問題は尿量減少ではなく、尿意鈍麻による排尿困難・残尿である。膀胱充満は子宮収縮を妨げるため、早めの排尿を促す。
- 授乳中はプロラクチンの作用で排卵・月経の再開が遅れやすいが、月経再開前に排卵が起こることもある。
掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。 情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。 本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。
問題文・正答・解説に誤りを見つけたら、この問題の誤りを報告する([email protected])までお知らせください。確認して修正します。