112AM103|第112回 看護師国家試験 過去問

次の文を読み103〜105の問いに答えよ。Aちゃん(2歳、男児)は両親、兄(5歳)の4人家族である。3日前から発熱が続くため、母親と一緒に外来を受診した。診察の結果、川崎病 Kawasaki disease と診断され、個室に入院となり左手背に点滴静脈内留置針が挿入された。入院中は母親が希望し、Aちゃんに付き添っている。Aちゃんにγ-グロブリン療法とアスピリンの内服が開始されることになった。看護師がγ-グロブリン療法の開始のために訪室すると、Aちゃんは不機嫌にぐずって泣いている。 γ-グロブリン療法の開始に伴う看護師の対応で適切なのはどれか。2つ選べ。

2つ選択
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正解: 4・5

正答

4.心電図モニターの装着を確認する。
5.留置針の刺入部を観察する。

この問題のポイント

川崎病の急性期に大量γ-グロブリン療法を始める場面で、投与中の安全管理として何をするかを問う問題です。判断の手がかりは次の5つです。

  • 川崎病は心血管合併症を起こしうる病気であること
  • 血漿由来の製剤を大量に、長時間かけて点滴する治療であること
  • 左手背に留置針があること
  • 2歳児が不機嫌にぐずっていること
  • 母親が付き添っていること

副作用と心合併症を早く見つけるための監視体制を整えることと、点滴ルートの安全を確認することが適切な対応になります。

解説

川崎病と治療の目的

川崎病は、主に4歳以下の乳幼児に起こる原因不明の全身性血管炎です。中小動脈、とくに冠動脈に炎症が及ぶのが特徴です。主要症状は次の6つです。

  • 発熱
  • 両側眼球結膜の充血
  • 口唇の紅潮・いちご舌
  • 不定形発疹(BCG接種部位の発赤を含む)
  • 四肢末端の変化(急性期は手足の硬性浮腫と紅斑、回復期は指先の膜様落屑)
  • 非化膿性の頸部リンパ節腫脹

出題当時の診断の手引き(改訂第6版)では発熱の日数を問わないため、発熱3日目でも症状がそろえば診断されます。急性期の児は強い不機嫌を示すことが多く、Aちゃんがぐずって泣いているのは病状の表れでもあります。

最も重要な合併症は冠動脈瘤です。瘤の中に血栓ができたり狭窄が起こったりすると、将来の心筋梗塞につながることがあります。急性期治療の目的は、発症早期に炎症を鎮めて冠動脈病変の形成を防ぐことです。

標準治療は次の2つの併用です。

  • 免疫グロブリン製剤の大量静注:体重1kgあたり2gを1回、通常12〜24時間程度かけて点滴します。
  • アスピリンの内服:急性期は抗炎症目的で中等量を用い、解熱後は血栓予防の抗血小板作用を目的に少量へ減らして続けます。

γ-グロブリン療法中に注意すること

γ-グロブリン製剤はヒト血漿から作られたたんぱく製剤で、次の点に注意が必要です。

  • アナフィラキシー・ショックや、悪寒、発熱、発疹、血圧低下などの副反応:投与開始直後から初期に起こりやすいため、開始時は速度を遅くし、状態を確認しながら上げていきます。
  • 循環への負荷:大量の製剤を点滴するため、心筋炎などを併発していると心不全を起こすおそれがあります。
  • そのほかの副作用:まれに無菌性髄膜炎や溶血なども報告されています。

さらに川崎病の急性期には、心筋炎、心膜炎、弁膜の炎症、不整脈、冠動脈病変による心筋虚血が起こりうる状態です。そのため投与中は、心電図モニターで心拍数とリズムを連続して監視します。あわせて体温、血圧、呼吸、SpO2、皮膚症状、顔色、機嫌、尿量を定期的に観察します。

2歳児の点滴管理

2歳児は点滴の必要性を理解できず、体動も多く、痛みや違和感を言葉で正確に訴えられません。長時間の持続点滴では、事故抜去、血管外漏出、静脈炎が起こりやすくなります。看護師が次の点を目で見て確認することが欠かせません。

  • 刺入部の発赤・腫脹・疼痛の有無
  • 固定の状態
  • 滴下や輸液ポンプの作動

事故抜去の予防は、まず次のような方法で行います。

  • シーネや包帯で刺入部を保護する
  • ルートの配置を工夫する
  • 母親のそばで抱っこや遊びをして気をそらす

身体抑制は、切迫性・非代替性・一時性の3要件を満たす場合に限る最終手段です。母親が付き添っているこの場面で、最初に選ぶ方法ではありません。

判断のまとめ

治療開始時の看護は、次の2点に集約されます。

  • 副作用と心合併症を早く見つけられる体制を整える → 心電図モニター装着の確認
  • 点滴ルートを安全に保つ → 刺入部の観察

選択肢の確認

1.γ-グロブリン製剤の投与中もAちゃんと売店に行けると母親に伝える。:投与中は副反応を早期に発見するため、モニター管理下で観察を続ける必要があります。とくに開始後早期はアナフィラキシーが起こりうる時期で、病棟を離れると異常時の対応が遅れます。また急性期で安静を要する時期でもあります。母親が一人で売店に行くことは差し支えありません。しかしAちゃんを連れて出るのは、投与が終わって病状が落ち着いてからです。

2.留置針の自己抜去防止のために右肘関節に抑制帯を使用する。:抑制帯は切迫性・非代替性・一時性がそろう場合に限る最終手段で、自己抜去の予防を理由に最初から使うものではありません。まず刺入部をシーネや包帯で保護し、母親の付き添い、抱っこ、遊びによる気そらしなどの代替手段を検討します。不機嫌な幼児を抑制すると苦痛と恐怖が強まり、かえって激しく動くこともあります。

3.心負荷の軽減のためにAちゃんの経口水分摂取を制限する。:川崎病の急性期は脱水に傾きやすい時期です。発熱で不感蒸泄が増え、口唇の発赤や亀裂で経口摂取も減るためです。脱水は血液の粘稠度を高め、血栓形成を助長するおそれがあります。心負荷への対応は、水分出納、体重、尿量、浮腫、呼吸状態を観察して行います。心不全の徴候があれば医師に報告し、指示のもとで水分量を調整します。看護師の判断で一律に制限するものではありません。

4.心電図モニターの装着を確認する。:正答。川崎病の急性期は、心筋炎、不整脈、冠動脈病変による心筋虚血が起こりうる状態です。そこに大量の製剤による容量負荷と、アナフィラキシーなどの副反応のリスクが加わります。そのため投与前に心電図モニターが正しく装着されているかを確認し、心拍数とリズムを連続して監視できる体制を整えます。開始前の体温、血圧、呼吸などの測定も、異常を比較する基準として重要です。

5.留置針の刺入部を観察する。:正答。体動の多い2歳児に、大量の薬液を長時間かけて点滴するため、事故抜去、血管外漏出、静脈炎が起こりやすい状況です。Aちゃんは泣いてぐずっているうえ、痛みを言葉でうまく伝えられません。そのため看護師が、刺入部の発赤・腫脹・疼痛、固定の状態、滴下を定期的に確認し、異常を早期に発見することが必要です。

覚えるポイント

  • 川崎病の最重要合併症は冠動脈瘤です。治療は大量γ-グロブリン静注とアスピリン内服の併用で、発症早期に炎症を鎮めることが目的です。
  • γ-グロブリン療法中は、アナフィラキシー(投与初期に注意し、開始時は低速)と、容量負荷による心不全に注意します。心電図モニター、バイタルサイン、皮膚症状、尿量を観察します。
  • 大量γ-グロブリン療法の後は、麻しん・風しんなどの生ワクチンの効果が落ちるため、接種まで一定期間(少なくとも6か月以上)あけます。
  • アスピリン内服中にインフルエンザや水痘にかかると、ライ症候群のリスクがあります。出血傾向や胃腸症状にも注意します。
  • 小児の持続点滴では、刺入部(発赤・腫脹・疼痛)、固定、滴下を定期的に確認します。身体抑制は切迫性・非代替性・一時性を満たすときの最終手段です。
  • 水分制限は医師の指示に基づいて行います。発熱中の幼児では、むしろ脱水に注意します。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。 情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。 本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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