112PM008|第112回 看護師国家試験 過去問

エリクソン Erikson, E. H. が提唱する発達理論において、学童期に達成すべき心理社会的課題はどれか。

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正解: 3

正答

3.勤勉性対劣等感

この問題のポイント

エリクソンの心理社会的発達理論(ライフサイクル論)の8段階と、各段階の心理社会的危機(課題)を対応づけられるかを問う問題です。鍵となる語は「学童期」です。学校生活の中で知識や技能を身につけ、やり遂げる経験を積む時期だと思い出せば、「勤勉性」にたどり着けます。発達段階の順序と、似た言葉(自律性と自主性など)の区別が得点の分かれ目になります。

解説

エリクソンの理論の骨組み

Erikson は、フロイトの精神分析的発達論を土台にしつつ、人と社会との関わりに注目して、誕生から老年期までを8段階に分けました。各段階には、社会からの要請と本人の成熟とのあいだで心理社会的危機が生じます。危機は「肯定的な側面 対 否定的な側面」という対の形で表されます。

ここでいう危機は「破局」ではなく「分かれ目」という意味です。否定的な側面をまったく経験しないことが目標なのではありません。肯定的な側面が上回る形で乗り越えることが健全な発達とされます。乗り越えた結果として得られる力は「基本的な強さ(徳)」と呼ばれ、学童期では有能さ(competence)にあたります。また、前の段階の達成が次の段階の土台になるという考え方(漸成説)に立っています。

8段階の一覧

  • 乳児期:基本的信頼 対 不信
  • 幼児前期:自律性 対 恥・疑惑
  • 幼児後期(遊戯期):自主性(積極性) 対 罪悪感
  • 学童期:勤勉性 対 劣等感
  • 青年期:自我同一性の確立 対 自我同一性の拡散
  • 成人前期:親密性 対 孤立
  • 成人期(壮年期):生殖性(世代性) 対 停滞
  • 老年期:統合 対 絶望

学童期の課題が勤勉性である理由

学童期はおおむね小学校の時期にあたり、子どもの活動の中心は家庭から学校へと広がります。子どもは読み書きや計算、運動、集団のルールなど、社会で必要とされる知識と技能を学びます。課題を最後までやり遂げ、それを教師や友人、親に認められる経験を重ねることで、「努力すればできる」「自分は役に立つ」という実感が育ちます。これが勤勉性です。

一方でこの時期は、同じ課題に取り組む仲間と自分を比べる機会が増えます。失敗が続いたり、努力が認められず否定されたりする経験が重なると、「自分は劣っている」という劣等感が強まります。同性の仲間で結束の強い集団をつくる「ギャングエイジ」もこの時期の特徴です。仲間集団の中での役割や承認も、勤勉性を支える要素になります。

看護での活かし方

学童期の子どもが入院・療養すると、学習や友人との活動が中断します。「みんなより遅れる」「何もできない」という体験から、劣等感を抱きやすくなります。勤勉性を支えるために、看護では次のような関わりを行います。

  • 院内学級や訪問教育などを利用し、学習を続けられるよう調整する
  • 服薬や記録などセルフケアの一部を、本人の役割として任せる
  • できたことを具体的に認める
  • 友人や学校とのつながりを保てるよう支援する

また、この時期はピアジェの具体的操作期にあたり、目に見える具体物をもとにした論理的思考ができるようになります。処置の説明に模型・絵・実物などを用いると、理解が進み、本人の主体的な参加も得やすくなります。

選択肢の確認

1.親密対孤立:これは成人前期の課題です。青年期に自己像を確立したあと、パートナーや友人と深く親密な関係を築けるかどうかが問われます。確立した自我同一性を失わずに他者と深く関われることが親密性であり、それができないと人間関係を避けて孤立に陥ります。学童期の仲間関係は、この段階の親密性とは質が異なるので、取り違えないようにします。

2.自律性対恥・疑惑:おおむね1歳半〜3歳頃の幼児前期に取り組む課題です。歩行や言語の発達、トイレットトレーニングを通じて、自分の意思で身体や行動をコントロールできる感覚(自律性)を獲得します。失敗を過度に叱られると、恥や自分への疑惑が生じます。幼児後期の「自主性(積極性) 対 罪悪感」と混同しやすいので、「自律性=自分でコントロールする」「自主性=自分から始める」と区別して覚えます。

3.勤勉性対劣等感:正答。学童期は、学校生活の中で知識や技能を身につけ、課題をやり遂げて周囲に認められる経験を重ねることで、「やればできる」という勤勉性を獲得する時期です。努力が認められない経験や、他者との比較で否定される経験が重なると、劣等感が生じます。

4.自我同一性〈アイデンティティ〉の確立対自我同一性〈アイデンティティ〉の拡散:思春期を含む青年期に取り組む課題です。第二次性徴による身体の変化や進路選択を経験しながら、「自分とは何者か」「社会の中でどう生きるか」という一貫した自己像を確立することが求められます。確立できないと、自分の役割や目標を見失う同一性拡散に陥ります。社会的責任を猶予される心理社会的モラトリアムもこの時期の概念です。学童期の次に来る段階であり、順序を取り違えないことが大切です。

覚えるポイント

  • エリクソンの8段階は「信頼→自律性→自主性→勤勉性→同一性→親密性→生殖性(世代性)→統合」の順です。否定側の「不信→恥・疑惑→罪悪感→劣等感→同一性拡散→孤立→停滞→絶望」と組にして覚えます。
  • 幼児前期の自律性(自分でコントロールする)と幼児後期の自主性(自分から始める)は、混同しやすい頻出ポイントです。
  • 学童期は勤勉性を獲得する時期で、フロイトでは潜伏期、ピアジェでは具体的操作期にあたります。ギャングエイジもこの時期です。
  • 学童期の入院児には、学習の継続、役割やセルフケアの付与、達成を認める関わりで劣等感を防ぎます。
  • 危機は、肯定的側面が否定的側面を上回る形で乗り越えるものです。前の段階の達成が次の段階の土台になります(漸成説)。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。 情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。 本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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