112PM038|第112回 看護師国家試験 過去問

便の性状と原因の組合せで正しいのはどれか。

解答・解説を見る

正解: 3

正答

3.タール便 ― 上部消化管出血

この問題のポイント

便の色や性状から、その背景にある病態(出血部位、胆汁の流れ、腸管の分泌異常など)を推定できるかを問う問題です。判断の鍵は2つあります。1つは「正常な便の色は胆汁によって決まる」こと、もう1つは「血液は消化管を通過する距離と時間によって色が変わる」ことです。代表的な異常便と、その原因となる疾患・薬剤の対応を正確に覚えているかが問われています。

解説

便の色が決まるしくみ

正常な便の黄褐色〜茶褐色は、胆汁に含まれるビリルビンに由来します。ビリルビンは腸内細菌によってウロビリノゲンに変わり、さらにステルコビリンになって便を着色します。そのため、胆汁が腸に届かなければ便の色は薄くなり、灰白色になります。

一方、便の色は、便に混じったものによっても変わります。血液が混じれば赤色〜黒色に、鉄剤を内服していれば黒色に、造影剤の硫酸バリウムが残っていれば白色になります。便の色の異常をみたときは、「胆汁の流れの異常」なのか、「便に何かが混じった」のかを分けて考えることが大切です。

出血部位と便の色

消化管出血では、出血部位が肛門から遠いほど、血液が消化液や腸内細菌の作用を受ける時間が長くなり、便は黒くなります。

  • 上部消化管(食道・胃・十二指腸)からの出血:ヘモグロビンが胃酸によって塩酸ヘマチンに変化し、腸を通過する間にさらに黒色化します。その結果、黒く粘り気があり光沢のあるタール便になります。
  • 小腸や右側結腸からの出血:暗赤色の便になることが多いです。
  • 直腸・肛門、S状結腸など肛門に近い部位からの出血:血液がほとんど変化しないまま排出されるため、鮮紅色の血液が便に付着したり混じったりします。

これはあくまで目安です。上部消化管からでも大量に出血して急速に腸を通過すれば、暗赤色〜赤色の血便になることがあります。逆に、小腸からの出血でも通過が遅ければ黒色便になることがあります。

タール便の主な原因は、胃潰瘍・十二指腸潰瘍、食道・胃静脈瘤破裂、胃癌、急性胃粘膜病変などです。非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や抗血栓薬の内服歴は、出血のリスクとして必ず確認します。

臨床での観察と対応

タール便を認めたときは、便の性状を記録するだけで終わらせてはいけません。消化管出血が続いている可能性を考え、次の点を確認して速やかに医師へ報告します。

  • 血圧低下、頻脈、冷汗、顔面蒼白などのショック徴候
  • ふらつきや息切れなどの貧血症状
  • 吐血やコーヒー残渣様の吐物の有無

一方、鉄剤の内服による黒色便は薬剤による変化であり、それ自体は出血を意味しません。黒い便をみたら、性状(タール様の粘り気や光沢があるか)とあわせて服薬歴を確認し、区別することが大切です。

以上から、組合せとして正しいのはタール便と上部消化管出血です。

選択肢の確認

1.灰白色便 ― Crohn〈クローン〉病 Crohn disease:灰白色便は、胆汁が腸管に排出されずステルコビリンがつくられないことで生じます。代表的な原因は、総胆管結石・胆管癌・膵頭部癌などによる閉塞性黄疸と、乳児の胆道閉鎖症です。乳幼児のロタウイルス感染症でも、胆汁の分泌が一時的に低下するなどして白色の水様便になることがあります。なお、バリウムを用いた消化管造影検査の後に便が白くなるのは、白色の硫酸バリウムが便に混じって排出されるためで、胆汁の流れとは関係がありません。Crohn病は、口腔から肛門までの消化管のどこにでも非連続性(スキップ)に病変ができる慢性の肉芽腫性炎症で、主な症状は腹痛、下痢、体重減少、発熱、痔瘻などの肛門病変です。灰白色便の代表的な原因ではありません。

2.鮮紅色便 ― 鉄剤の内服:鉄剤を内服すると、吸収されなかった鉄が腸内で硫化鉄となり、便は黒色になります。赤くなるわけではないので、この組合せは成り立ちません。鉄剤を開始するときは「便が黒くなることがある」と事前に説明し、患者の不安を防ぐことも看護の役割です。鮮紅色便は、痔核、裂肛、直腸癌など肛門に近い部位からの出血でみられます。

3.タール便 ― 上部消化管出血:正答。食道・胃・十二指腸からの出血では、ヘモグロビンが胃酸で塩酸ヘマチンに変化し、腸を通過する間にさらに黒色化します。その結果、黒く粘り気と光沢のあるタール便になります。消化性潰瘍や静脈瘤破裂などが原因で、ショック徴候や貧血の観察が必要です。

4.米のとぎ汁様便 ― 急性膵炎 acute pancreatitis:米のとぎ汁様便は、コレラに特徴的な白く濁った大量の水様便です。コレラ菌が産生するコレラ毒素が小腸粘膜の細胞に作用し、水と電解質を腸管内へ大量に分泌させることで生じます。腹痛や発熱は目立たないことが多い一方、急激な脱水が問題になります。急性膵炎の主症状は、背部に放散する上腹部痛と悪心・嘔吐で、血中アミラーゼ・リパーゼの上昇が特徴です。なお、膵外分泌機能の低下による脂肪便は、主に進行した慢性膵炎でみられます。

覚えるポイント

  • 正常便の色は胆汁由来のステルコビリンによる。胆汁が腸に届かないと灰白色便になる(閉塞性黄疸、胆道閉鎖症、ロタウイルス感染症)。
  • バリウム検査後の白色便は、白色の硫酸バリウムが便に混じるためで、胆汁の流れとは無関係。
  • 出血部位が口側ほど便は黒い。上部消化管はタール便、小腸・右側結腸は暗赤色、直腸・肛門は鮮紅色が目安。
  • 黒色便でも鉄剤内服によるものは出血ではない。まず服薬歴を確認する。
  • 特徴的な便と原因:米のとぎ汁様便はコレラ、イチゴゼリー状の血便は腸重積症、粘血便は潰瘍性大腸炎や赤痢、脂肪便は慢性膵炎などの膵外分泌不全。
  • タール便をみたら、血圧・脈拍などのショック徴候、貧血症状、吐血の有無を確認し、すぐに報告する。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。 情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。 本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

問題文・正答・解説に誤りを見つけたら、この問題の誤りを報告する([email protected])までお知らせください。確認して修正します。

関連問題

← 112PM037112PM039 →
学習アプリでこの問題を解く(記録・メモ・カード化)