112PM039|第112回 看護師国家試験 過去問

患者の足底と杖をつく位置を図に示す。両上肢の動きに制限がなく、右下肢に軽度の筋力低下がある患者の三点歩行で、歩き始めの杖の位置が適切なのはどれか。

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正解: 1

正答

1.A

この問題のポイント

1本の杖で三点歩行をするとき、歩き始めに杖をつく位置を図から選ぶ問題です。「右下肢に軽度の筋力低下」とあるので、患側は右、健側は左です。「両上肢の動きに制限がなく」とあるので、杖は原則どおり健側の左手で持ちます。そのうえで「杖は健側の足先の前方かつ外側につく」という原則を図に当てはめます。

解説

まず問題文の条件を整理します。「右下肢に軽度の筋力低下」から、患側は右、健側は左です。筋力低下は軽度なので、右下肢にもある程度は体重をかけられます。1本の杖で歩行を助けられる状態と考えられます。「両上肢の動きに制限がなく」は、左右どちらの手でも杖を握れるという意味です。つまり、杖を持つ手の原則をそのまま使ってよいという条件です。健側の腕に痛みや麻痺があると原則どおりにできないため、問題文はその可能性を先に除いています。

図は、両足をそろえて立った患者の足形(足底)と杖をつく位置を、上から見た配置で示しています。4つの図とも、つま先は上(進む方向)を向いています。左の足の下に「健側」、右の足の下に「患側」と書かれており、本問の患者の左右と一致します。杖の位置は「杖」と書かれた丸印で示されています。

  • Aの杖:健側(左)の足先より前にあり、さらに外側(左)にあります。
  • Bの杖:患側(右)の足先より前にあり、さらに外側(右)にあります。
  • Cの杖:健側の足の外側の真横にあり、足先より前には出ていません。
  • Dの杖:患側の足の外側の真横にあり、足先より前には出ていません。

4つの図は「健側か患側か」と「前方か真横か」の組み合わせです。この2点を順に判断すれば正答にたどり着けます。

三点歩行の手順

1本の杖を使う三点歩行は、杖、患側下肢、健側下肢を1つずつ順に前へ出す歩き方です。三動作歩行ともいいます。

  • まず杖を前へ出します。この間は両足で体を支えています。
  • 次に、患側の足を杖の位置まで出します。この間は杖と健側の足で支えています。
  • 最後に、健側の足を患側の足にそろえる位置か、少し前まで出します。この間は杖と患側の足で支えています。

どの時点でも常に2点以上が床についているため、安定性が高い歩き方です。筋力やバランスに不安がある人や、杖歩行を始めて間もない時期に向いています。これに対して二点歩行(二動作歩行)は、杖と患側の足を同時に出し、次に健側の足を出します。速く歩けますが、健側の足1本だけで支える時期があるため、よりよいバランス能力が必要です。

杖を持つ手とつく位置

杖は健側の手で持つのが原則です。本問では左手で持つので、杖は左側につきます。理由は、三点歩行の最後の段階、つまり健側の足を振り出し、患側の足で体重を支える時期を考えると分かります。

  • 杖が健側にあれば、杖と患側の足が左右に離れます。そのため支持基底面(床との接地点で囲まれた、体を支える範囲)が広くなり、体重を杖と患側下肢で分け合えます。
  • 患側の手で持つと、杖と患側の足が同じ側に寄ります。支持基底面が狭くなって体が患側へ傾き、転倒しやすくなります。
  • 健側の手の杖と患側の足が組になって前へ出る動きは、普段の歩行で左腕と右足が同時に前へ出るのと同じ対角の組み合わせです。そのため自然なリズムで歩けます。

この時点で、患側に杖があるBとDが外れます。

杖をつく位置は、健側の足先の前方かつ外側です。杖の長さを合わせるときも、杖先を足先の前方約15cm・外側約15cmについて確認するのが目安です。これが杖をつく基本の位置になります。

  • 前につくのは、支持基底面を前へ広げ、重心を前へ移しやすくするためです。三点歩行では次に患側の足を杖の位置まで出します。杖が先に前へ出ていないと、患側の足を踏み出すときに前方の支えがありません。
  • 外側につくのは、支持基底面を左右にも広げるためです。また、振り出した足が杖に当たってつまずくのを防ぐためでもあります。

これで真横に杖があるCも外れます。健側の足先の前方外側に杖があるAが正答です。

実践で生かす関連知識

  • 杖の長さ:握りが大転子の高さ、または杖先を上の位置についたときに肘関節が約30度曲がる長さに合わせます。
  • 介助の位置:歩行を介助するときは、患者が崩れやすい患側のやや後方に立ちます。
  • 階段:昇りは杖→健側→患側、降りは杖→患側→健側の順です。足の出し方は「昇りは健側から、降りは患側から」と覚えます。
  • 免荷の場合:患側下肢に体重をかけられない(免荷の)場合は、1本の杖では支えきれないため、両松葉杖などを使います。
  • 用語の混同に注意:両松葉杖の「三点歩行」は、両松葉杖と患側下肢を同時に前へ出し、次に健側下肢を出す歩き方です。1本杖の三点歩行とは手順が違います。

選択肢の確認

1.A:正答。杖が健側(左)の足先より前で、さらに外側に示されています。左手で持った杖を前方外側につく正しい位置です。支持基底面が前と外側へ広がるので、次に患側の足を杖の位置まで踏み出すときも、杖と健側の足の2点で体を安定して支えられます。

2.B:杖が患側(右)の足先の前方外側に示されており、杖を右手、つまり患側の手で持つことになります。前方外側という位置の考え方は合っていますが、持つ手が逆です。健側の足を振り出して患側の足で立つ時期に、杖と患側の足が同じ側に並びます。支持基底面が狭くなり、体が患側へ傾きやすくなります。「次に出すのは患側の足だから、杖も患側の前へ」と考えると選んでしまいやすい誤りです。

3.C:杖は健側についているので持つ手は正しいものの、足の真横にあって足先より前に出ていません。支持基底面は左右には広がっても、前方には広がりません。そのため、重心を前へ移して患側の足を踏み出すときの支えになりません。三点歩行の最初の動作である「杖を前へ出す」ことにもなっていません。

4.D:杖が患側(右)の足の真横にあり、患側の手で持つ点と、前に出ていない点の両方が原則に反しています。選択肢2と同じく、患側の足で立つ時期に体が患側へ傾きやすくなります。選択肢3と同じく、前方への支えもありません。歩き始めの杖の位置として適切ではありません。

覚えるポイント

  • 杖は健側の手で持ちます。健側の足を振り出して患側の足で立つ時期に、杖と患側の足が左右に離れて支持基底面が広がるためです。
  • 歩き始めの杖は、健側の足先の前方かつ外側(目安は前方約15cm・外側約15cm)につきます。前方は重心を前へ移すため、外側は左右の安定とつまずき防止のためです。
  • 1本杖の三点歩行(三動作歩行)は杖→患側→健側の順で、常に2点で支えます。二点歩行(二動作歩行)は、杖と患側を同時に出してから健側です。両松葉杖の三点歩行は、両松葉杖と患側を同時に出してから健側です。
  • 杖の長さは、握りが大転子の高さ、または肘関節が約30度曲がる長さです。
  • 階段は、昇りは杖→健側→患側、降りは杖→患側→健側の順です。
  • 杖歩行の介助者は、患側のやや後方に立ちます。

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