112PM040|第112回 看護師国家試験 過去問
創傷治癒の成熟期の状態はどれか。
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正解: 4
正答
4.瘢痕を形成する。
この問題のポイント
創傷治癒の各時期(炎症期→増殖期→成熟期)で、どの細胞が働き、組織がどう変化するかを問う問題です。鍵は「成熟期」の意味で、新しい組織を作り終えたあとに、その組織を作り直して強く安定させる時期です。各選択肢を「創を掃除する」「欠損を埋める・覆う」「組織を作り直す」のどれに当たるかで分けると、迷わず判断できます。
解説
創傷治癒の3つの時期
創傷治癒は、止血に続いて炎症期、増殖期、成熟期の順に進み、各時期は重なり合っています。止血を独立させて4期に分けることもあります。期間は創の大きさや全身状態で変わるため、目安として押さえます。
- 炎症期(受傷直後〜数日):損傷した血管から出血すると、血小板が凝集してフィブリンが析出し、止血されます。続いて血管が拡張し、透過性が高まるため、発赤・腫脹・熱感・疼痛が生じます。まず好中球が、次いで単球由来のマクロファージが創に集まり、細菌・壊死組織・異物を貪食して創を清浄化します。マクロファージは成長因子を放出し、線維芽細胞や血管内皮細胞を呼び寄せます。これが増殖期への橋渡しになります。
- 増殖期(数日後〜2〜3週間程度):線維芽細胞がコラーゲンを産生し、血管新生で新しい毛細血管が伸びて、組織の欠損部を肉芽組織が埋めていきます。健康な肉芽は鮮紅色で湿潤し、細かい顆粒状に見えます。同時に、創縁などから表皮の基底細胞が分裂・遊走して創面を覆います(上皮化)。筋線維芽細胞の働きで創が縮む創収縮も起こります。
- 成熟期(数週〜数か月、ときに1年以上):再構築期、リモデリング期ともよばれます。増殖期に急いで作られた未熟なⅢ型コラーゲンは、分解と再合成をくり返し、より丈夫なⅠ型コラーゲンに置き換わります。線維は整然と配列し直されます。毛細血管や細胞成分は減り、肉芽組織は瘢痕組織に変わります。瘢痕は初め赤く硬く盛り上がっていますが、しだいに白っぽく平らでやわらかい成熟瘢痕になります。
設問は成熟期の状態を問うているので、組織が再構築されて瘢痕化する選択肢4が正答です。
治癒の形式
- 一次治癒:縫合した清潔な切創のように、創縁が密着している場合です。肉芽は少なく、瘢痕も小さく済みます。
- 二次治癒:開放創や感染創のように、欠損を肉芽で埋めてから上皮化する場合です。治癒に時間がかかり、瘢痕も大きくなります。
- 三次治癒(遷延一次治癒):創をいったん開放して清浄化し、その後に縫合する場合です。
臨床での生かし方
- 炎症期の発赤・腫脹・熱感・疼痛は正常な反応です。この時期を過ぎても強まる場合や、排膿・発熱を伴う場合は創感染を疑います。
- 増殖期の肉芽と新生上皮は傷つきやすいため、乾燥させず適度な湿潤環境を保ちます。ドレッシング材の交換では、新生組織をはがさないように注意します。
- コラーゲン合成にはたんぱく質、ビタミンC、亜鉛などが必要です。低栄養、糖尿病、副腎皮質ステロイドの使用、感染、喫煙、血流障害は治癒を遅らせます。
- 成熟期の瘢痕は正常皮膚ほどの強度には戻らず、最終的にも元の約80%程度にとどまるとされます。
- 新しい瘢痕は紫外線で色素沈着を起こしやすいため、遮光を指導します。張力がかかる部位では、テープ固定などで緊張を減らします。
- 成熟期にコラーゲンが過剰に蓄積すると、肥厚性瘢痕やケロイドになります。
選択肢の確認
1.マクロファージが創内を清浄化する。:これは炎症期に起こる現象です。受傷後まず好中球が、続いてマクロファージが創に集まり、細菌・壊死組織・異物を貪食して創内を清浄化します。マクロファージは成長因子を放出して増殖期の開始にも関わり、増殖期にも一部残ります。しかし「清浄化」は炎症期を代表する役割として問われます。成熟期には炎症細胞は減少しているため、成熟期の状態には当たりません。
2.基底細胞が創面を覆う。:表皮の基底細胞が創縁などから分裂・遊走して創面を覆う上皮化は、増殖期の現象です。縫合した一次治癒の創では、術後2日前後という早い段階で上皮化するとされます。いずれにしても新しい組織で欠損を覆う過程であり、できあがった組織を作り直す成熟期の変化とは異なります。
3.肉芽組織を形成する。:線維芽細胞のコラーゲン産生と血管新生によって欠損部を埋める肉芽組織は、増殖期に作られます。成熟期は、この肉芽組織が瘢痕組織へと置き換わっていく時期です。そのため両者は取り違えやすく、「肉芽は増殖期、瘢痕は成熟期」と対にして覚えることが大切です。
4.瘢痕を形成する。:正答。成熟期にはⅢ型コラーゲンがⅠ型コラーゲンに置き換わり、線維が整然と再配列されます。毛細血管や細胞成分が減少して、肉芽組織は瘢痕組織に変わります。瘢痕は時間とともに赤みが消えて白く平坦になり、強度も増していきます。
覚えるポイント
- 創傷治癒は炎症期→増殖期→成熟期(再構築期・リモデリング期)の順に、時期が重なり合いながら進みます。
- 炎症期は、止血、発赤・腫脹・熱感・疼痛、好中球からマクロファージへと続く貪食による創の清浄化が特徴です。
- 増殖期は、線維芽細胞のコラーゲン産生と血管新生による肉芽形成、基底細胞の遊走による上皮化、創収縮が特徴です。
- 成熟期は、Ⅲ型からⅠ型へのコラーゲンの再構築と瘢痕形成が特徴です。瘢痕の強度は正常皮膚の約80%程度までしか戻りません。
- 肥厚性瘢痕は元の創の範囲内にとどまり、徐々に軽快しやすい瘢痕です。ケロイドは創の範囲を越えて周囲に広がります。
- 治癒を遅らせる因子は、低栄養(たんぱく質・ビタミンC・亜鉛の不足)、糖尿病、ステロイド、感染、喫煙、血流障害、創の乾燥です。
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