112PM041|第112回 看護師国家試験 過去問

成人への与薬方法で正しいのはどれか。

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正解: 4

正答

4.点眼薬は下眼瞼結膜の中央に滴下する。

この問題のポイント

筋肉内注射、直腸内与薬(坐薬)、口腔粘膜からの与薬(バッカル錠)、点眼の基本手技を、部位・深さ・使い方の観点から問う問題です。それぞれの手技には理由があります。神経損傷の回避、肛門括約筋との位置関係、肝臓の初回通過効果の回避、角膜への刺激の回避です。この理由から考えると、数字や部位を丸暗記していなくても判断できます。

解説

与薬の手技は「薬を確実に目的の部位に届け、吸収させること」と「患者に害を与えないこと」の両方を満たすように決められています。4つの方法を、この2つの視点で整理します。

点眼
下眼瞼を指で軽く下へ引き、患者に上方を見てもらいます。露出した下眼瞼結膜(下結膜嚢)の中央に1滴を滴下します。

  • 角膜は知覚が非常に鋭敏です。直接滴下すると刺激で反射的にまばたきや流涙が起こり、薬液が流れ出てしまいます。
  • 1滴で結膜嚢に保持できる量を満たすため、何滴もさしても目の外にあふれるだけです。
  • 容器の先端は、まつげ・眼瞼・眼球に触れないようにします。容器内の汚染や角膜損傷を防ぐためです。
  • 点眼後はまばたきを繰り返さずに静かに閉眼し、目頭(涙嚢部)を軽く押さえます。これにより薬液が鼻涙管から鼻腔へ流れて全身に吸収されるのを減らし、眼局所にとどまる時間を延ばせます。緑内障治療に使うβ遮断薬の点眼では、全身吸収による徐脈や気管支攣縮に注意が必要で、この操作の意味が大きくなります。
  • 複数の点眼薬を使うときは、先の薬が洗い流されないよう5分程度の間隔をあけます。眼軟膏は最後に使います。

筋肉内注射
部位選択の条件は「筋層が厚い」「太い神経や血管が近くを走っていない」ことです。成人では主に次の2か所を用います。

  • 中殿筋:クラークの点、四分三分法、ホッホシュテッターの部位で位置を決めます。
  • 三角筋:肩峰から約3横指下の三角筋中央部です。これより下では腋窩神経や橈骨神経を損傷する危険があります。

大殿筋の深部には坐骨神経が走行しています。そのため大殿筋に注射すると、下肢のしびれ、運動麻痺、疼痛を残すおそれがあります。

坐薬
肛門管は内肛門括約筋と外肛門括約筋に囲まれています。浅く入れると括約筋の収縮で押し戻されてしまいます。成人では内肛門括約筋を越えて直腸内に達する深さ(目安として3〜5cm程度)まで挿入します。

  • 体位:左側臥位で膝を曲げてもらいます。
  • 挿入時:口呼吸を促して腹圧を抜き、括約筋をゆるめます。
  • 挿入後:しばらく肛門部を押さえて排出を防ぎます。
  • 直腸下部から吸収された薬の一部は門脈を経由せずに体循環に入るため、経口より初回通過効果を受けにくい面があります。

バッカル錠
臼歯と頬の間(歯肉と頬の間)に挟み、唾液で徐々に溶かして口腔粘膜から吸収させる製剤です。粘膜から直接静脈に入り、肝臓を経由せずに全身へ届くため、初回通過効果を受けません。かみ砕いたり飲み込んだりすると消化管からの吸収に変わり、期待した効果が得られなくなります。

口腔内で用いる剤形は区別して覚えます。

  • 舌下錠(ニトログリセリンなど):舌の下で溶かし、口腔粘膜から吸収させます。
  • 口腔内崩壊錠(OD錠):唾液で崩壊させて飲み込み、消化管から吸収させます。
  • トローチ:なめて溶かし、口腔・咽頭に局所的に作用させます。
  • チュアブル錠:かみ砕いて飲み込みます。

以上から、手技として正しいのは点眼の記述です。臨床では、患者が自宅で点眼や坐薬を正しく使えるよう指導する場面が多くあります。手順だけでなく「なぜそうするのか」を説明できると、患者の理解と実行につながります。

選択肢の確認

1.筋肉内注射は大殿筋に行う。:大殿筋の深部には坐骨神経が走行しており、針や薬液で損傷すると下肢のしびれや運動麻痺を残すおそれがあるため、筋肉内注射の部位には選びません。殿部に注射する場合は、大殿筋の上外側にある中殿筋を、クラークの点・四分三分法・ホッホシュテッターの部位で確認して刺入します。成人ではほかに三角筋も用います。「殿部の注射=大殿筋」と思い込むと誤るため、筋の名前で「中殿筋」と覚えることが大切で、この記述は誤りです。

2.坐薬は肛門から1cm挿入する。:1cmでは肛門管の入り口付近にとどまり、括約筋の収縮で坐薬が押し戻されて排出されやすくなります。成人では内肛門括約筋を越えて直腸内に達する深さ(目安3〜5cm程度)まで挿入し、挿入後はしばらく肛門を押さえます。小児では体格に応じて挿入の深さが浅くなりますが、成人で1cmは明らかに浅すぎるため誤りです。

3.バッカル錠は、かんでから飲み込む。:かんでから飲み込むのはチュアブル錠の使い方で、バッカル錠とは異なります。バッカル錠は臼歯と頬の間に挟んで唾液で徐々に溶かし、口腔粘膜から吸収させて初回通過効果を避ける製剤です。かんだり飲み込んだりすると消化管吸収に変わり、効果が減弱するため誤りです。口腔内崩壊錠(唾液で崩して飲み込む)や舌下錠(舌下で溶かす)との混同にも注意します。

4.点眼薬は下眼瞼結膜の中央に滴下する。:正答。下眼瞼を軽く引いて下結膜嚢を露出させ、その中央に1滴を滴下します。角膜に直接落とすと強い刺激でまばたきや流涙が起こり、薬液が流出してしまいます。容器の先端は眼やまつげに触れさせず、点眼後は静かに閉眼して目頭(涙嚢部)を軽く押さえます。

覚えるポイント

  • 筋肉内注射の部位は、成人では中殿筋(クラークの点、四分三分法、ホッホシュテッターの部位)と三角筋(肩峰から約3横指下)です。大殿筋は坐骨神経損傷の危険があるため避けます。
  • 坐薬は内肛門括約筋を越える深さ(成人で目安3〜5cm程度)まで挿入します。左側臥位で口呼吸を促し、挿入後は肛門を押さえます。
  • 口腔内で用いる製剤の使い方
    • バッカル錠:臼歯と頬の間で溶かす(初回通過効果を回避)
    • 舌下錠:舌下で溶かす
    • 口腔内崩壊錠:崩して飲み込む
    • チュアブル錠:かんで飲み込む
  • 点眼は下結膜嚢の中央に1滴です。容器の先端を触れさせず、点眼後は閉眼して涙嚢部を圧迫します。複数の点眼薬は5分程度あけ、眼軟膏は最後に使います。
  • 与薬手技は「確実な吸収」と「神経・粘膜などの損傷回避」の2つの根拠で判断すると、初めて見る選択肢にも対応できます。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。 情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。 本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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