112PM080|第112回 看護師国家試験 過去問
成人に経鼻経管栄養の胃管を挿入する方法で適切なのはどれか。
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正解: 4
正答
4.胃管が咽頭に達したら嚥下を促す。
この問題のポイント
経鼻胃管を挿入する基本手技を問う問題です。確認する点は、清潔の水準、体位、頸部の角度とそのタイミング、先端位置の確認方法の4つです。判断の鍵は、胃管が咽頭に達した時点で「気管ではなく食道へ進ませる」ための工夫です。嚥下の瞬間に気道が閉じて食道入口部が開くという生理を理解していれば、正答を選べます。
解説
経鼻胃管の挿入で最も重大な事故は、胃管が気管に誤って入り、そこへ栄養剤や水を注入してしまうことです。手順の一つひとつを「誤挿入と誤嚥を防ぐため」という目的から理解すると、丸暗記に頼らずに解けるようになります。
挿入前の準備
- 清潔の水準:鼻腔・咽頭・胃は、もともと常在菌がいる部位です。そのため、手指衛生と未滅菌手袋による清潔操作で行います。
- 体位:座位またはファウラー位として上体を起こします。上体を起こすと嚥下しやすくなり、挿入の刺激で嘔吐しても吐物が気道へ流れ込みにくくなります。
- 挿入の長さ:鼻尖から耳朶、耳朶から剣状突起までの長さを測り、胃管に印をつけておきます。成人ではおよそ45〜55cmが目安です。
- その他:通りのよい側の鼻腔を選び、胃管の先端に潤滑剤を塗ります。
挿入中の要点
鼻腔から咽頭までは、胃管を鼻腔底に沿わせ、顔面に対してほぼ垂直に後方へ進めます。この区間では頸部をやや後屈させておくと、鼻腔から咽頭へ曲がる走行に沿って進めやすくなります。
胃管の先端が咽頭に達したら、頸部を前屈させて嚥下を促します。嚥下の瞬間には次の動きが同時に起こります。
- 喉頭が挙上し、喉頭蓋が喉頭の入口をふさぐ
- 食道入口部(上部食道括約筋)がゆるんで開く
この動きに合わせて胃管を進めると、胃管は気管ではなく食道へ入りやすくなります。頸部の前屈にも、気道の入口を狭めて胃管を咽頭後壁側、つまり食道側へ導く働きがあります。実際には「唾を飲み込むようにごっくんしてください」と声をかけ、飲み込みに合わせて少しずつ進めます。
挿入中に激しい咳込み、呼吸困難、チアノーゼ、声が出にくいといった症状がみられたら、気管への誤挿入を疑い、ただちに抜去します。ただし、意識障害がある患者や咳嗽反射が低下した患者では、気管に入っても症状が出ないことがあります。症状がないことだけで安心してはいけません。
先端位置の確認
挿入後は、胃管の先端が胃内にあることを複数の方法で確認します。
- 胃内容物を吸引し、性状とpHを確認する(胃液は強い酸性で、pH5.5以下が目安とされます。制酸薬を使用中の患者ではpHが上がる点に注意します)
- 空気を注入し、心窩部で気泡音を聴取する
- 最も確実なのは、エックス線撮影で先端の位置を確認することです
気泡音は、胃管が気管や食道にあっても聞こえることがあります。そのため、気泡音だけで胃内と判断するのは危険で、医療安全の面から繰り返し注意喚起されています。
確認後は、鼻翼に圧迫がかからないようにテープで固定します。毎回の注入前にも、印の位置と先端位置を確認します。注入中から注入後しばらくは上体を起こした姿勢を保ち、逆流と誤嚥を防ぎます。挿入時の考え方は、日々の経管栄養の管理にもそのまま生きる知識です。
選択肢の確認
1.無菌操作で行う。:胃管が通る鼻腔や咽頭、先端が留まる胃は、もともと常在菌がいる部位です。そのため、手指衛生と未滅菌手袋による清潔操作で行えば足ります。無菌操作が必要なのは、導尿や膀胱留置カテーテルの挿入、中心静脈カテーテルの挿入のように、本来無菌である体腔や血管内に器具を入れる処置です。「体内に管を入れる処置はすべて無菌」とひとまとめにしないことが大切です。なお、胃管そのものは使用前に汚染させないよう清潔に取り扱います。
2.挿入時、患者の体位は仰臥位にする。:仰臥位では嚥下運動が行いにくく、胃管が気管へ入りやすくなります。また、挿入の刺激で嘔吐反射が起きた場合に、吐物が気道へ流れ込んで誤嚥する危険が高まります。挿入時は座位またはファウラー位として上体を起こします。上体を起こすことは、挿入時だけでなく栄養剤の注入中・注入後にも共通する誤嚥予防の基本です。
3.胃管が咽頭に達するまで頸部を前屈してもらう。:頸部の前屈は、胃管の先端が咽頭に達した時点で行う操作であり、この記述はタイミングを取り違えています。鼻腔から咽頭までは頸部をやや後屈させておくほうが、曲がった走行に沿って胃管を進めやすくなります。最初から前屈させると、咽頭への通過が妨げられます。「咽頭までは後屈、咽頭に達したら前屈して嚥下」という順序で覚えましょう。
4.胃管が咽頭に達したら嚥下を促す。:正答。嚥下の瞬間には、喉頭が挙上して喉頭蓋が喉頭の入口をふさぎ、同時に食道入口部が開きます。胃管が咽頭に達したところで唾液を飲み込むよう促し、その動きに合わせて進めることで、気管への誤挿入を防ぎながら食道へ導けます。頸部の前屈と組み合わせて行うのが基本です。
5.水を注入して胃管の先端が胃内に到達したことを確認する。:胃管が誤って気管に入っていた場合、水を直接肺へ注入することになり、誤嚥性肺炎や呼吸状態の悪化を招きます。しかも、水を入れても先端が胃内にあるかどうかは判別できず、確認方法として役に立ちません。確認は、胃内容物の吸引による性状とpHの確認と、空気注入時の気泡音の聴取を組み合わせて行います。最も確実なのはエックス線撮影です。
覚えるポイント
- 経鼻胃管の挿入は清潔操作で行います。無菌操作が必要なのは、導尿など本来無菌の部位に器具を入れる処置です。
- 体位は座位またはファウラー位です。仰臥位は誤挿入と誤嚥の危険を高めます。
- 挿入長の目安は、鼻尖から耳朶を経て剣状突起までの長さで、成人ではおよそ45〜55cmです。
- 頸部は、咽頭まではやや後屈、咽頭に達したら前屈して嚥下を促し、飲み込みに合わせて進めます。
- 咳込み、呼吸困難、チアノーゼ、発声困難があればただちに抜去します。ただし、意識障害がある場合は症状が出ないこともあります。
- 先端位置は、吸引物の性状とpH、気泡音を組み合わせて確認し、最も確実なのはエックス線撮影です。気泡音だけで判断せず、確認のために水を注入してはいけません。
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