112AM115|第112回 看護師国家試験 過去問

次の文を読み115〜117の問いに答えよ。Aちゃん(6歳、男児)は父親(50歳、会社員)、母親(48歳)、姉(11歳)と4人で暮らしている。Duchenne〈デュシェンヌ〉型筋ジストロフィー Duchenne muscular dystrophy で身体障害者手帳(肢体不自由1級)が交付されている。喀痰吸引、胃瘻による経管栄養が必要で、訪問看護を週に2回利用している。まばたきの回数で「はい」と「いいえ」の意思表示はできるが、視線や上肢の動きには誤動作もあり、構音障害もあるため家族以外では意思の判断が難しい。また、手指での細かい操作はできない。Aちゃんは次年度から姉と同じ小学校の特別支援学級に通い、通常の学級の児童と交流の予定がある。入学時に担任がAちゃんの意思を確認する方法で最も適切なのはどれか。

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正解: 3

正答

3.閉じた質問〈closed question〉をしてAちゃんのまばたきの回数を確認する。

この問題のポイント

重度の運動障害と構音障害がある児の意思を、家族以外の担任が入学時に確かめる方法を選ぶ問題です。手がかりは、「まばたきの回数で『はい』と『いいえ』の意思表示はできる」「視線や上肢の動きには誤動作もある」「手指での細かい操作はできない」「家族以外では意思の判断が難しい」という4つの記述です。本人が今確実に使える表出手段を見きわめ、その手段で答えられる形に質問を工夫するという、意思疎通支援の原則が問われています。

解説

事例の情報を整理する

  • 本人:6歳男児です。Duchenne型筋ジストロフィーで、身体障害者手帳(肢体不自由1級)が交付されています。喀痰吸引と胃瘻からの経管栄養を必要とする医療的ケア児です。
  • 表出の手段:確実に使えるのは、まばたきの回数による「はい」「いいえ」です。視線と上肢には誤動作があり、手指の細かい操作はできません。構音障害があるため、発語で意思を伝えることも難しい状態です。
  • 場面:入学時です。担任は、まだAちゃんとのやりとりに慣れていない「家族以外の人」にあたります。
  • 環境:訪問看護を週2回利用しています。次年度から姉と同じ小学校の特別支援学級に通い、通常の学級の児童とも交流する予定です。

意思疎通の手段を選ぶ原則

障害のある人の意思を確認するときは、本人が今、確実に使える表出手段に合わせるのが原則です。疲れにくいことと、受け取る側が誰であっても同じように読み取れることも大切な条件です。

発語や書字を補ったり、その代わりになったりする方法を、拡大・代替コミュニケーション(AAC)といいます。AACは次の3つに分けて整理されます。

  • ノンテク:道具を使わない方法です。まばたき、うなずき、表情、身振りなどのサインがあたります。
  • ローテク:電気を使わない道具を使う方法です。文字盤、絵カード、コミュニケーションボードなどがあたります。
  • ハイテク:電子機器を使う方法です。VOCA(音声出力コミュニケーション機器)、視線入力装置、パソコンやタブレット端末を使う意思伝達装置などがあたります。文字を入力する使い方のほかに、絵・写真・シンボルを選んで伝える使い方もあり、文字を読めない子どもにも使われます。

どれが優れているかで選ぶのではありません。本人の運動機能、認知や言語の発達段階、使う場面や相手に合うかどうかで選び、いくつかを組み合わせて使います。

Aちゃんの場合、指さしを使う方法は、手指の障害のため使えません。視線を使う方法は、誤動作があるため読み取りの誤りが起こりやすくなります。これに対して、まばたきによる「はい」「いいえ」は、道具も機器の練習も要りません。家族以外の人でも回数を数えれば読み取れるため、最も確実な手段です。

閉じた質問で意思を確かめる

質問には2つの型があります。

  • 開かれた質問〈open question〉:「今日は何をしたい?」のように、自由に答えてもらう質問です。答えるには、発語や書字など、言葉を自由に組み立てて伝える手段が必要です。
  • 閉じた質問〈closed question〉:「のどが渇いた?」のように、「はい」「いいえ」または限られた選択肢で答えられる質問です。

表出が「はい」「いいえ」に限られるAちゃんには、閉じた質問を組み立てれば、本人の意思を直接確認できます。担任がこの方法を使うときは、次の工夫で確実さが高まります。

  • どの回数が「はい」で、どの回数が「いいえ」かという約束を、あらかじめ家族に確認しておく
  • 1回に1つのことだけを、短い言葉で尋ねる
  • 自然なまばたきと区別できるよう、答えを急がせずに待つ
  • 大事な内容は、言い方を変えて聞き直す
  • 疲れの様子に気を配る

候補を1つずつ示し、当てはまるところで合図してもらえば、「はい」「いいえ」だけでも伝えられる内容を広げられます。この合図のルールは、交流する通常の学級の児童とも共有しやすい点でも適しています。家族や、日頃から関わっている訪問看護師が、合図のルールや読み取り方を前もって学校に伝えておくと、入学直後から担任が意思を確かめやすくなります。

一方、選択肢1・2のように文字を使う方法は、文字の習得が前提になります。選択肢2の視線入力装置では、これに加えて機器の調整(キャリブレーション)や操作の練習も必要です。そのため、どちらも入学時に担任がすぐ頼れる手段ではありません。ハイテクAACは、言語聴覚士や作業療法士などの専門職と協力し、本人に合う使い方を探りながら、段階的に導入を検討します。

関連知識

Duchenne型筋ジストロフィーの特徴は次のとおりです。

  • X連鎖潜性(劣性)遺伝で、ジストロフィンの欠損により起こり、主に男児に発症する
  • 血清CKの著明な上昇、登攀性起立(Gowers徴候)、腓腹筋の仮性肥大が特徴
  • 知的障害や発達障害を合併することがある
  • 進行性で、呼吸不全と心筋障害が生命予後に大きく関わる

医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律(2021年施行)は、学校の設置者が、在籍する医療的ケア児に適切な支援を行う責務を有することを定めています。

選択肢の確認

1.五十音の文字盤を用いてAちゃんが指でさした文字を1文字ずつ読み取る。:Aちゃんは手指での細かい操作ができず、上肢の動きにも誤動作があるため、指さしで文字を選ぶことができません。大まかに指さしを試みても、誤動作のために隣の文字と区別しにくく、読み違いが起こりやすくなります。1文字ずつの伝達は時間がかかって疲れやすく、就学前の6歳児がひらがなを確実に読めるとも限りません。なお、文字を習得した後であれば、介助者が行や文字を順に読み上げ、本人がまばたきで合図する使い方ができます。この使い方なら、文字盤も閉じた質問の応用として役立てられる場合があります。

2.視線で入力できる意思伝達装置を用いてAちゃんに文字を入力してもらう。:Aちゃんは視線に誤動作があるため、視線入力では意図しない文字が選ばれやすく、現時点では確実な手段とはいえません。視線入力装置を使うには、機器の調整(キャリブレーション)や操作の練習が必要です。さらに、文字を入力する使い方では文字の習得も前提になります。そのため、入学時に担任がすぐ使える方法ではありません。視線入力装置は、眼球運動が安定して保たれている人、たとえば筋萎縮性側索硬化症(ALS)の人などには有力な手段です。重度障害者用意思伝達装置は障害者総合支援法の補装具費の支給対象で、Aちゃんにも今後、専門職と調整しながら導入を検討する価値はあります。ただし、「入学時」に「最も適切」な方法ではありません。

3.閉じた質問〈closed question〉をしてAちゃんのまばたきの回数を確認する。:正答。まばたきの回数による「はい」「いいえ」は、問題文で確実に使えると示されている表出手段です。家族以外の担任でも、回数を数えれば読み取れます。閉じた質問にすれば、この手段だけで本人の意思を直接確かめられます。道具や練習も要らないため、入学時からすぐに使えます。約束の回数を家族に確認し、1問ずつ短く尋ね、答えを待つことで、さらに確実になります。

4.感情を絵で表現したカードを見せてAちゃんが指でさしたカードを確認する。:絵カードは文字を読めない幼い子どもにも使えるローテクAACですが、この方法は指でさす動作を前提としています。手指の細かい操作ができず、上肢に誤動作のあるAちゃんには適しません。また、感情カードで伝えられる内容は気持ちに限られます。担任がカードを1枚ずつ示して「これ?」と尋ね、まばたきで答えてもらう形に変えれば、閉じた質問の一つとして活用できます。

覚えるポイント

  • 意思疎通の手段は、本人が今、確実に・疲れにくく使え、相手が誰でも読み取れるものを選びます。
  • 表出が「はい」「いいえ」に限られる人には閉じた質問を使い、1回に1つずつ短く尋ねて答えを待ちます。開かれた質問は、発語や書字などで言葉を自由に組み立てて伝えられる場合に向いています。
  • AACは次の3つに分けて整理されます。道具を使わないノンテク(まばたき・うなずき・身振り)、電気を使わない道具を使うローテク(文字盤・絵カード)、電子機器を使うハイテク(VOCA・視線入力装置など)です。
  • 文字盤や絵カードは、本人の動かせる部位に合わせて使い方を変えます。たとえば、指さしや視線で選ぶ方法のほかに、介助者の読み上げとまばたきを組み合わせる方法があります。
  • 視線入力装置などのハイテクAACは、機器の調整や操作の練習が必要なため、段階的に導入します。文字を入力する使い方では文字の習得も前提になります。ただし、絵やシンボルを選ぶVOCAのように、文字の習得を前提としないハイテクAACもあります。重度障害者用意思伝達装置は、障害者総合支援法の補装具費の支給対象です。
  • Duchenne型筋ジストロフィーの要点:X連鎖潜性遺伝、ジストロフィン欠損、CK高値、Gowers徴候、腓腹筋仮性肥大、呼吸不全と心筋障害。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。 情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。 本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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