112PM079|第112回 看護師国家試験 過去問
血液透析について正しいのはどれか。
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正解: 3
正答
3.導入初期には不均衡症候群 disequilibrium syndrome が起こる。
この問題のポイント
血液透析の原理、合併症、食事療法、導入の原因疾患をまとめて確認する問題です。判断の手がかりは、「血液透析」と「腹膜透析」を区別すること、そして選択肢3の「導入初期」という時期を示す言葉です。不均衡症候群が起こる仕組み、食事で制限する項目、導入原因の第1位が糖尿病性腎症であることを押さえていれば、正答を選べます。
解説
血液透析のしくみ
血液透析は、血液を体外に取り出してダイアライザー(透析器)に通し、半透膜をはさんで透析液と接触させる治療です。
- 尿素、クレアチニン、カリウムなどの小さな分子は、濃度の差による拡散で血液から透析液へ移ります。
- 余分な水分は、圧力の差による限外濾過で取り除きます。
- 透析液には重炭酸が含まれており、代謝性アシドーシスを補正します。
標準的には週3回、1回4時間程度行います。血液を十分に取り出すため、多くは前腕に内シャント(動静脈瘻)をつくります。
不均衡症候群が導入初期に起こる理由
透析を始めたばかりの時期は、血中の尿素などの濃度が高い状態です。透析をすると血液中の尿素はすぐに除去されますが、脳の組織は血液脳関門があるため、尿素の減り方が遅れます。その結果、脳のほうが血液より浸透圧が高くなり、水が脳へ移動して脳浮腫が起こります。
- 症状:頭痛、悪心・嘔吐、血圧の変動、倦怠感、不穏などです。重症になると、けいれんや意識障害が起こります。
- 時期:透析の後半から終了後半日程度にかけて現れます。
- 予防:導入初期は、透析時間を短くし、血流量を少なくし、膜面積の小さいダイアライザーを使って、回数を多くしながら少しずつ除去します。必要に応じて、高浸透圧の薬剤を使います。
体が透析に慣れると起こりにくくなるため、「導入初期」に特徴的な合併症といえます。看護では、透析中から透析後まで、頭痛や悪心、血圧、意識の状態を観察します。
血液透析のほかの合併症
- 透析中:除水による血圧低下、筋けいれん
- シャント:狭窄、閉塞、感染。スリルやシャント音で開通を確認し、シャントのある腕での血圧測定、採血、圧迫を避けます。
- 長期:腎性貧血(エリスロポエチン不足)、CKD-MBD(高リン血症、低カルシウム血症、二次性副甲状腺機能亢進症)、透析アミロイドーシス(β2-ミクログロブリンの沈着による手根管症候群など)、心血管疾患
食事療法
透析では体内に水分や電解質がたまりやすいため、食塩(1日6g未満)、水分、カリウム、リンを制限します。たんぱく質は、保存期ほど厳しく制限せず、適量をとります。エネルギーは十分にとるよう指導します。
選択肢の確認
1.合併症は腹膜炎 peritonitis が多い。:腹膜炎は、腹膜透析の代表的な合併症です。腹膜透析では腹腔にカテーテルを入れたままにするため、バッグ交換のときの接続操作などから細菌が入り、排液の混濁、腹痛、発熱が起こります。血液透析は腹膜を使わないため、腹膜炎は代表的な合併症ではありません。血液透析で問題になる感染は、シャントやカテーテルの感染です。2つの透析方法の合併症を取り違えないよう注意しましょう。
2.食事はカルシウムを制限する。:透析患者は、腎臓でビタミンDを活性化できず、さらにリンが体内にたまるため、血中カルシウムが低くなりやすい状態です。そのため、カルシウムは制限の対象ではありません。活性型ビタミンD製剤や、カルシウムを含むリン吸着薬で補うこともあります。制限するのはリンです。乳製品を控えるよう指導されるのはリンを多く含むためで、カルシウムが理由ではありません。ただし、カルシウムをとりすぎると血管の石灰化を招くため、血中の値を見ながら調整します。
3.導入初期には不均衡症候群 disequilibrium syndrome が起こる。:正答。導入初期は血中の尿素が急速に除去され、脳との間に浸透圧の差が生じて脳浮腫が起こります。そのため、頭痛、悪心・嘔吐、重症ではけいれんや意識障害が現れます。予防として、導入期は短時間・低血流量の透析から始めます。
4.導入の原因疾患は IgA 腎症 IgA nephropathy が最も多い。:透析導入の原因疾患で最も多いのは糖尿病性腎症です。日本透析医学会の統計調査では、出題当時の新規導入患者で糖尿病性腎症が第1位、次いで腎硬化症、慢性糸球体腎炎の順でした。IgA腎症は、日本で最も多い慢性糸球体腎炎ですが、慢性糸球体腎炎の中の一疾患にすぎず、導入原因の第1位ではありません。「慢性糸球体腎炎の中で最多」と「透析導入の原因で最多」を混同しないようにしましょう。
5.透析に用いる半透膜はタンパク質が通過する。:ダイアライザーの半透膜は、尿素、クレアチニン、電解質などの小さな分子と水を通します。一方、アルブミンなどの血漿タンパク質や血球は基本的に通さないように作られています。タンパク質が通過すると低栄養や低アルブミン血症を招くためです。β2-ミクログロブリンのような比較的小さなタンパク質を除去できるよう改良された膜もありますが、体に必要なタンパク質を通すものではありません。なお、腹膜透析では、排液中にタンパク質が失われやすいという違いがあります。
覚えるポイント
- 不均衡症候群は血液透析の導入初期に起こります。溶質が急速に除去されて脳浮腫が起こり、頭痛、悪心・嘔吐、けいれん、意識障害が現れます。予防は、短時間・低血流量で緩やかに始めることです。
- 腹膜炎は腹膜透析の合併症です。血液透析の合併症は、血圧低下、筋けいれん、シャントトラブル、腎性貧血、CKD-MBD、透析アミロイドーシスです。
- 透析の食事は、食塩・水分・カリウム・リンを制限します。たんぱく質は適量、エネルギーは十分にとります。カルシウムはむしろ不足しやすい栄養素です。
- 透析導入の原因疾患の第1位は糖尿病性腎症です。IgA腎症は「慢性糸球体腎炎の中で最多」であることと区別します。
- 血液透析では、溶質は拡散で、水分は限外濾過で除去します。半透膜は小さな分子を通し、アルブミンなどのタンパク質や血球は通しません。
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