112PM069|第112回 看護師国家試験 過去問

A病院の組織図を示す。医療安全管理を担う部門が横断的に活動する位置はどれか。

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正解: 2

正答

2.②

この問題のポイント

組織図からライン部門とスタッフ部門を見分け、医療安全管理部門が組織のどこに置かれるかを問う問題です。手がかりは2つあります。1つは設問の「横断的に活動する」という言葉です。もう1つは図の描かれ方で、②だけが①から下へ伸びる縦線の途中に横から接続され、どのライン部門の下にも入っていません。医療安全管理部門は病院長(管理者)に直属するスタッフ部門です。特定の部門から独立した立場で、全部門にまたがって活動します。

解説

図の読み取り

  • 最上段の中央に①の箱があり、その下から縦線が伸びています。
  • 縦線の途中から左へ横線が出て、②の箱の右端につながっています。
  • 縦線はさらに下へ続き、左右に広がる横線で中段の3つの箱につながっています。③はその中央の箱です。
  • 中段の各箱の下には2つずつ、計6つの箱が下段に並んでいます。④は、右側の中段の箱の下にある右端の箱です。

これはライン・アンド・スタッフ組織の典型的な描き方です。①を頂点に、中段の部門、下段の部署へと上下に連なるのが指揮命令の系統(ライン)です。②はその系統の外側で①に直接つながるスタッフです。病院に当てはめると、次のように考えられます。

  • ①:病院長などのトップ
  • 中段:診療部・看護部・事務部などの部門
  • 下段:病棟や外来など、各部門に属する部署

ライン部門とスタッフ部門

ライン部門は、診療・看護・事務といった病院本来の業務を担う部門です。指示と命令は、上位者から下位者へ1本の系統で流れます。「一人の部下は一人の上司からだけ命令を受ける」という命令一元化の原則により、責任と権限は明確になります。その反面、縦割りになりやすく、部門をまたぐ課題には対応しにくいという弱点があります。

スタッフ部門は、ラインとは別に置かれる部門です。専門的な知識や技術で、トップとライン部門を支援・助言・調整します。原則としてライン部門に直接命令する権限はもたず、トップの権限を背景に助言や勧告を行います。組織図では、トップから下へ伸びる線の途中に横から付く箱として描かれます。どのライン部門にも属さずトップにつながる位置だからこそ、全部門に等しく関わる横断的な活動ができます。

医療安全管理部門がこの位置に置かれる理由

医療事故やインシデントは、複数の部門や職種の境目で起こることが多くあります。たとえば医師の指示、薬剤部での調剤、病棟での与薬がつながる場面です。このため、1つの部門の中だけでは原因の分析も対策の実行もできません。

もし医療安全管理部門が看護部などのライン部門の下にあると、ほかの部門に改善を求めにくくなります。所属部門の利害から離れて客観的に分析することも難しくなります。そこで病院長直属のスタッフ部門として独立させ、病院全体を対象に活動できるようにします。医療安全管理者を看護師が務める場合でも、看護部の一部としてではなく、この部門の一員として全職種を対象に活動します。したがって、図の中で医療安全管理部門が横断的に活動する位置は②です。

主な業務は次のとおりです。

  • 医療安全管理の指針やマニュアルの整備
  • 職員研修の企画と実施
  • インシデント・アクシデント報告の収集と分析
  • 改善策の立案と、各部署へのフィードバック・評価
  • 医療事故が起きたときの対応
  • 安全文化の醸成

インシデント報告の目的は個人の責任追及ではありません。システムの問題を見つけて再発を防ぐことです。各部署には、部署の医療安全推進を担う担当者が置かれます(リスクマネジャーなど、呼び方は施設で異なります)。この担当者が現場の報告や改善の窓口となり、医療安全管理部門と連携します。看護師が報告したインシデントは部署を越えてこの部門に集まり、病院全体の対策として現場に戻ってきます。

制度上の位置づけ

医療法は、病院・診療所・助産所の管理者に、医療安全を確保する措置を義務づけています。医療法施行規則が求めるのは次の4つです。

  • 医療安全管理のための指針の整備
  • 医療安全管理委員会の設置(病院、有床診療所、入所施設のある助産所)
  • 職員研修の実施
  • 事故報告などに基づく改善の方策

通知では、委員会を月1回程度開催すること、職員研修を年2回程度定期的に行うことが示されています。一般的な役割分担は次のとおりです。

  • 委員会:各部門の安全管理の責任者などで構成し、方針や対策を審議する場
  • 医療安全管理部門:日常の実務を担う常設の部署

特定機能病院では、医療安全管理部門の設置と専従職員の配置が求められています。診療報酬の医療安全対策加算でも、医療安全管理部門の設置と、研修を修了した医療安全管理者の配置が要件です。なお、次のようなチームも、各部門の職員が部門の枠を越えて活動する横断的な組織です。

  • 感染制御チーム(ICT)
  • 栄養サポートチーム(NST)
  • 褥瘡対策チーム
  • 緩和ケアチーム

選択肢の確認

1.①:最上段中央の箱は指揮命令の出発点となる組織の頂点で、病院長などトップの位置です。医療法が医療安全の措置を義務づけている相手は病院等の管理者です。そのため「医療安全の最終的な責任者はどこか」と問われれば、この位置になります。しかし医療安全管理部門はトップそのものではなく、トップに直属し、その権限を背景に全部門へ働きかける部門です。責任者と、実務を担って横断的に動く部門とを取り違えないようにします。

2.②:正答。トップから下へ伸びる縦線に横から接続し、中段のどの部門の下にも属さない、スタッフ部門の位置です。病院長に直属し、特定の部門から独立した立場にあります。そのため、全部門からのインシデント報告の収集・分析、改善策の周知、職員研修などを横断的に行えます。感染制御部門や医療の質を管理する部門なども、組織図ではこの位置に描かれることが多くあります。

3.③:中段中央の箱は、トップの下に並ぶライン部門の1つで、診療部や看護部などにあたる位置です。ここに置くと、ほかの2つの部門と同列の一部門になり、隣の部門の業務に関わる立場がありません。そのため病院全体を横断する活動には向きません。看護部の中の安全対策のように、1つの部門の内部で完結する活動なら、この部門の責任で行われます。しかし、病院全体の医療安全管理部門の位置ではありません。

4.④:下段右端の箱は右側のライン部門に属する部署で、病棟や外来のような現場の単位にあたります。上位部門の指揮命令を受ける立場で、活動もその部署の中にとどまります。部署ごとのリスクマネジャーは、こうした現場で報告や改善の窓口を担います。しかし、病院全体を横断して活動する医療安全管理部門の位置ではありません。

覚えるポイント

  • ライン部門は上から下へ1本の指揮命令系統で結ばれます(命令一元化の原則)。スタッフ部門はトップに直属し、専門的な助言・支援・調整を行います。原則としてライン部門への命令権はもちません。
  • 組織図では、トップからの縦線の途中に横から付く箱がスタッフ部門です。医療安全管理部門は病院長直属のスタッフ部門で、特定の部門から独立して全部門を横断的に扱います。
  • 独立させるのは、部門や職種の境目で起こる問題を、所属部門の利害にとらわれず病院全体の視点で分析・改善するためです。
  • 組織形態の違いも整理しておきます。ライン組織は責任が明確ですが、横の連携が弱くなります。ファンクショナル組織は職能ごとの管理者が指示するため、命令系統が複数になります。マトリックス組織では、職能と事業など2系統から命令を受けます。プロジェクトチームは、特定の課題のために部門横断で一時的に編成されます。
  • 医療法に基づく医療安全管理体制の柱は4つです。指針の整備、医療安全管理委員会(月1回程度)、職員研修(年2回程度)、事故報告などに基づく改善の方策です。インシデント報告の目的は責任追及ではなく、再発防止です。

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