112PM071|第112回 看護師国家試験 過去問
災害時の医療を支える体制で正しいのはどれか。
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正解: 2
正答
2.災害対策基本法に防災計画の作成が規定されている。
この問題のポイント
災害医療を支える仕組みについて、4つの基本を確かめる問題です。問われているのは、どの法律が何を定めているか、誰が指定するか、トリアージは何のために行うか、支援チームは何を専門とするか、です。災害対策基本法は国から市町村までの防災計画の作成を定めています。災害拠点病院を指定するのは都道府県です。トリアージは救命可能な人を優先するために行います。精神保健医療はDPATの役割です。この4点を区別できれば正答できます。
解説
災害対策基本法と防災計画
災害対策基本法は、伊勢湾台風(1959年)の甚大な被害をきっかけに1961年に制定された、日本の防災の基本となる法律です。国・都道府県・市町村・指定公共機関などの責務を定め、次のような防災計画の体系を規定しています。
- 防災基本計画:内閣府に置かれる中央防災会議が作成する、国の最上位の計画です。
- 防災業務計画:指定行政機関(省庁など)と指定公共機関(日本赤十字社、電力・ガス会社など)が作成します。
- 地域防災計画:都道府県防災会議と市町村防災会議が、地域の実情に合わせて作成します。
- 地区防災計画:地区の居住者などが自発的に作成し、市町村地域防災計画に位置づけるよう提案できます。
同じ法律には、要配慮者(高齢者、障害者、乳幼児など)への配慮も定められています。市町村長による避難行動要支援者名簿の作成が義務です。個別避難計画の作成は努力義務です。看護職が地域で関わる要配慮者支援も、この法律の枠組みの中にあります。
これと混同しやすいのが災害救助法です。災害救助法は、発災後の応急救助(避難所、応急仮設住宅、食品・飲料水の供与、医療・助産など)を定める法律です。「計画づくりは災害対策基本法、発災後の救助は災害救助法」と整理しておきます。
災害医療の提供体制
災害時の医療は、医療法に基づき都道府県が作る医療計画の「5事業」の1つに位置づけられています。その中核が災害拠点病院で、都道府県が指定します。
- 基幹災害拠点病院:原則として各都道府県に1か所置かれます。
- 地域災害拠点病院:原則として二次医療圏ごとに1か所置かれます。
災害拠点病院には、次のような要件があります。
- 24時間の救急対応
- DMATの保有
- 耐震性の確保
- ヘリコプターの離着陸場
- 食料・飲料水・医薬品の備蓄
- 業務継続計画(BCP)の整備
病院どうしの被災状況や受入れ可否は、広域災害救急医療情報システム(EMIS)で共有されます。
トリアージ
災害時は、傷病者の数が医療資源を大きく上回ります。そこで、最大多数の傷病者に最善の医療を提供することを目的に、治療と搬送の優先順位を決めます。これがトリアージです。区分は次の4つです。
- 赤(I):最優先治療群
- 黄(II):待機的治療群
- 緑(III):保留群
- 黒(0):救命困難群・死亡群
最優先は「直ちに処置すれば救命できる」赤です。一次トリアージではSTART法が用いられます。状態は変化するため、トリアージは繰り返し行います。トリアージタッグは原則として右手首に付けます。
災害時の支援チーム
- DMAT(災害派遣医療チーム):医師・看護師・業務調整員で構成されます。発災直後の急性期から、救命医療、病院支援、搬送を担います。
- DPAT(災害派遣精神医療チーム):精神科医療と精神保健活動を専門的に支援し、支援者の支援も行います。
- JMAT(日本医師会災害医療チーム):主に急性期以降の救護所・避難所での医療を担います。
- DHEAT(災害時健康危機管理支援チーム):被災都道府県・保健所の指揮調整機能を支援します。
以上から、法律と計画の関係を正しく述べている選択肢2が正答です。
選択肢の確認
1.地域災害拠点病院は市町村が指定する。:災害拠点病院は、基幹・地域のいずれも都道府県(都道府県知事)が指定するため、この記述は当てはまりません。地域災害拠点病院は、原則として二次医療圏ごとに整備されます。二次医療圏は複数の市町村にまたがる広域の単位です。その整備は、医療計画を担う都道府県の役割です。市町村は、地域防災計画や避難行動要支援者名簿を作る主体として問われることが多いので、取り違えないようにします。
2.災害対策基本法に防災計画の作成が規定されている。:正答。災害対策基本法は、中央防災会議による防災基本計画、指定行政機関・指定公共機関による防災業務計画、都道府県・市町村による地域防災計画の作成を定めています。災害医療の体制も、これらの計画を土台として整えられます。
3.トリアージは救命困難な患者の治療を優先するために行う。:トリアージで最優先されるのは、直ちに治療すれば救命できる赤(I)の傷病者なので、この記述は当てはまりません。救命困難・死亡と判断された黒(0)は、治療の優先順位が最も低くなります。平常時の救急医療では最重症者に全力を注ぎます。災害時に同じことをすると資源が集中し、救えるはずの多くの命を失います。この「平常時との考え方の違い」が問われています。
4.災害派遣医療チーム〈DMAT〉は被災地域の精神科医療および精神保健活動を専門的に行う。:被災地域の精神科医療と精神保健活動を専門的に担うのは、災害派遣精神医療チーム〈DPAT〉なので、この記述は当てはまりません。DMATは、専門的な訓練を受けた機動性の高い医療チームで、急性期の救命医療、病院支援、域内搬送・広域医療搬送を担います。名称が似ているので、「M=Medical(医療)」「P=Psychiatric(精神)」と覚えると区別できます。
覚えるポイント
- 災害対策基本法:防災計画の体系を定めています(防災基本計画→防災業務計画→地域防災計画→地区防災計画)。避難行動要支援者名簿の作成は市町村長の義務です。
- 災害救助法:避難所・応急仮設住宅・医療・助産など、発災後の応急救助を定める法律です。
- 災害拠点病院:都道府県が指定します。基幹は原則各都道府県1か所、地域は原則二次医療圏ごとに1か所です。医療計画の「災害時における医療」に位置づけられます。
- トリアージの目的は最大多数の救命です。優先順位は赤(I)→黄(II)→緑(III)→黒(0)です。繰り返し評価し、タッグは原則右手首に付けます。
- 支援チームの役割:DMATは急性期医療、DPATは精神保健医療、JMATは急性期以降の医療、DHEATは保健所などの指揮調整支援です。
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