112PM086|第112回 看護師国家試験 過去問
高齢者の睡眠で正しいのはどれか。2つ選べ。
解答・解説を見る
正解: 4・5
正答
4.中途覚醒の回数が増加する。
5.入眠するまでに時間がかかる。
この問題のポイント
加齢に伴う睡眠の量・質・リズムの変化を問う問題です。鍵になるのは「高齢者の睡眠は浅く、途切れやすく、夜間の睡眠量が減る」という全体像です。ここから、入眠潜時の延長、中途覚醒の増加、総睡眠時間の短縮、多相性睡眠への移行がすべて説明できます。選択肢は「増える/減る」「延長/短縮」「単相性/多相性」の向きを入れ替えて作られているため、変化の方向を正確に押さえているかが問われています。
解説
睡眠の構造と加齢による変化
睡眠はレム睡眠とノンレム睡眠からなります。ノンレム睡眠は深さによって段階1〜4(現在の分類ではN1〜N3)に分けられます。段階3・4(N3)は脳波に大きくゆっくりした波(徐波)が現れる最も深い眠りで、徐波睡眠と呼ばれ、成長ホルモンの分泌や身体の回復と関係します。健康な成人では、入眠後まもなく徐波睡眠が現れ、その後ノンレム睡眠とレム睡眠が約90分の周期で一晩に数回繰り返されます。
加齢に伴い、睡眠は次のように変化します。
- 徐波睡眠(深いノンレム睡眠)が減り、浅いノンレム睡眠(段階1・2)が増える
- 眠りが浅いため、尿意・物音・痛みなどのわずかな刺激で目覚めやすくなり、中途覚醒の回数と、途中で起きている時間が増える
- 入眠潜時(床に就いてから眠りにつくまでの時間)が延長する
- 夜間の総睡眠時間が短くなり、床にいる時間のうち実際に眠っている割合(睡眠効率)が下がる
- 体内時計のリズムが前にずれて(睡眠相の前進)早寝早起きの傾向になり、早朝覚醒が増える
- 夜間の睡眠不足を補うように日中の居眠りや昼寝が増え、1日に何回かに分けて眠る多相性睡眠に近づく
変化の背景
背景には、体内時計の働きが弱まって睡眠・覚醒リズムのメリハリ(振幅)が小さくなること、夜間に分泌されるメラトニンが減ることがあります。退職などで日中の活動量や日光を浴びる機会が減ると、リズムはさらに弱まります。加えて高齢者では、夜間頻尿、関節痛などの疼痛、皮膚の掻痒、心不全や呼吸器疾患による呼吸困難、睡眠時無呼吸症候群、むずむず脚症候群、抑うつ、認知症、服用中の薬(利尿薬など)といった二次的な要因も睡眠を妨げます。
看護への生かし方
高齢者が「眠れない」と訴えたときは、まず不眠のタイプ(入眠困難・中途覚醒・早朝覚醒・熟眠障害)を確認します。あわせて、昼寝の時間帯と長さ、日中の過ごし方、夜間の排尿回数、痛みや痒みの有無、服薬内容を把握し、加齢による生理的な変化なのか、治療できる原因があるのかを見極めます。
援助の基本は、薬に頼る前の生活調整です。日中の活動と日光浴を増やすこと、昼寝は午後の早い時間に短時間(30分程度まで)とすること、夕方以降のカフェインと寝酒を控えることが中心になります。さらに、水分は日中に十分とって就寝直前の多飲を避けること、眠くなってから床に就き必要以上に長く床にとどまらないこと、寝室の温度・照明・音を整えることを組み合わせます。
睡眠薬を使う場合は注意が必要です。高齢者は薬の代謝・排泄が遅れやすく、特にベンゾジアゼピン系薬では、翌日への持ち越し、筋弛緩作用によるふらつき、せん妄が起こりやすくなります。中途覚醒でトイレに立つ場面は転倒・骨折の危険が高いため、足元灯、ポータブルトイレ、ベッドの高さ調整などの転倒予防をあわせて行うことが大切です。
以上から、眠りが浅くなることで生じる中途覚醒の増加(選択肢4)と、入眠潜時の延長(選択肢5)が正答になります。
選択肢の確認
1.単相性の睡眠になる。:単相性睡眠とは、夜間に1回まとめて眠るパターンのことで、学童期から成人期の特徴です。新生児・乳児期は1日に何回も眠る多相性睡眠で、成長とともに単相性へ移行します。高齢期には夜間の睡眠が浅く短くなり、日中の居眠りや昼寝が増えるため、再び多相性に近づきます。したがってこの記述は変化の方向が逆で、誤りです。
2.浅い眠りが少なくなる。:加齢で減るのは深い眠りである徐波睡眠(ノンレム睡眠段階3・4)で、浅い眠り(段階1・2)はむしろ増えるため誤りです。「減るのは深い眠り、増えるのは浅い眠り」と対にして覚えておくと、取り違えを防げます。
3.総睡眠時間が延長する。:高齢者では夜間の総睡眠時間は短くなるため誤りです。床に入っている時間は長くなりがちですが、寝つくまでの時間や夜中に目覚めている時間が増えるため、実際に眠っている時間は短く、睡眠効率が低下します。「床にいる時間が長い」ことと「眠っている時間が長い」ことを混同しないようにします。
4.中途覚醒の回数が増加する。:正答。徐波睡眠が減って浅い眠りが中心になるため、尿意や物音、痛みなどの小さな刺激で目覚めやすくなり、夜間に何度も目が覚めます。夜間頻尿や睡眠時無呼吸なども中途覚醒を増やす要因です。なお、予定より早く目覚めてそのまま眠れなくなる早朝覚醒とは区別して評価します。
5.入眠するまでに時間がかかる。:正答。体内時計の働きの低下やメラトニン分泌の減少、日中の活動量の低下によって、夜に向けて眠気が十分に高まりにくくなるため、入眠潜時が延長します。昼寝が長すぎたり遅い時間にとったりすると、寝つきはさらに悪くなります。
覚えるポイント
- 高齢者の睡眠は「浅い・短い・途切れる・早く目覚める」と覚えます。徐波睡眠が減り、浅いノンレム睡眠が増え、入眠潜時が延長し、中途覚醒が増え、総睡眠時間と睡眠効率が低下します。
- 睡眠リズムは前進して早寝早起き・早朝覚醒となり、昼寝が増えて多相性睡眠に近づきます(乳児期は多相性、成人期は単相性、高齢期は再び多相性に近づく)。
- 背景には、メラトニン分泌の低下、体内時計の振幅の低下、日中の活動や日光を浴びる機会の減少があります。
- 不眠の訴えには、タイプ(入眠困難・中途覚醒・早朝覚醒・熟眠障害)と原因(夜間頻尿、痛み、掻痒、呼吸困難、抑うつ、薬剤など)を確認し、まず生活調整から始めます。
- 高齢者が睡眠薬を使う場合は、ふらつき・転倒・せん妄に注意し、夜間トイレ時の転倒予防を必ずあわせて行います。
掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。 情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。 本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。
問題文・正答・解説に誤りを見つけたら、この問題の誤りを報告する([email protected])までお知らせください。確認して修正します。