112PM087|第112回 看護師国家試験 過去問
高齢者の血液検査の結果で成人の基準値と比較して値が高くなるのはどれか。2つ選べ。
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正解: 2・4
正答
2.尿素窒素
4.食後血糖値
この問題のポイント
加齢による臓器機能の変化が血液検査値にどう表れるかを問う問題です。鍵は腎機能(糸球体濾過量)の低下と耐糖能の低下の2点です。前者は尿素窒素の上昇、後者は食後血糖値の上昇として現れます。血球数や肝逸脱酵素のように、加齢だけでは大きく変わらない項目と見分けることが求められます。
解説
問題文の手がかり
問われているのは「成人の基準値と比較して値が高くなる」項目です。加齢で機能が低下した結果、血中にたまる物質や、上がったあと下がりにくくなる物質を探します。その代表が、腎臓から排泄される老廃物と、インスリンによって処理されるブドウ糖です。
腎機能の低下と尿素窒素
- 加齢によってネフロン(糸球体)の数が減り、腎血流量と糸球体濾過量(GFR)が低下します。
- 尿素窒素(BUN)は、たんぱく質の分解で生じたアンモニアから肝臓で合成される尿素の窒素分です。腎臓から排泄されるため、GFRが低下すると排泄が滞り、値が上昇する傾向になります。
- 高齢者は口渇感が鈍く、体内の水分量も少ないため、脱水になりやすい特徴があります。脱水のような腎前性の要因でもBUNは上がり、BUN/クレアチニン比が大きくなります。高齢者のBUN上昇をみたら、腎機能だけでなく脱水や消化管出血などの可能性も考えます。
- 血清クレアチニンは、筋肉量が減ると産生量も減るため、GFRが下がっていても値があまり上がりません。そのため、血清クレアチニンが基準範囲内でも腎機能は低下していることがある点が重要です。一方、クレアチニンクリアランスは加齢とともに低下します。
臨床では、腎排泄型の薬剤が高齢者で蓄積しやすく、副作用が出やすいことにつながります。投与量の調整や、副作用症状の観察の根拠になる知識です。
耐糖能の低下と食後血糖値
- 加齢によって、食事に反応して出るインスリン(追加分泌)の立ち上がりが遅れ、分泌量も低下します。
- 筋肉量の減少、内臓脂肪の増加、身体活動量の低下などによって、インスリン抵抗性も増します。
- その結果、空腹時血糖の変化は比較的小さいのに対し、食後血糖は上がりやすく、下がりにくくなります。
高齢者の耐糖能異常は空腹時血糖だけでは見逃されやすく、食後の値、75g経口ブドウ糖負荷試験の2時間値、HbA1cを合わせて評価します。また、高齢者の糖尿病は口渇・多飲・多尿といった典型的な症状が目立ちにくいため、検査値の推移を追うことが大切です。
加齢だけでは大きく変わらない項目
- 血球:加齢で骨髄は脂肪に置き換わり、造血の予備能は低下します。しかし安静時の血小板数や白血球の総数は大きくは変わりません。白血球で変化するのは主に機能で、好中球の遊走能・貪食能やT細胞機能が低下します。このため高齢者では、感染症があっても白血球増加や発熱が目立たないことがあります。数値が正常でも、食欲低下や活気のなさ、意識状態の変化などに注意を払います。
- 肝機能:肝重量や肝血流量は減少し、薬物の代謝は遅くなります。しかしAST・ALTのような逸脱酵素は、加齢だけでは基準値を超えません。上昇していれば、何らかの組織障害を疑います。
選択肢の確認
1.血小板数:血小板は骨髄の巨核球から産生され、その数は加齢でほとんど変化せず、成人の基準値より高くなる傾向はありません。血小板が増えるのは、鉄欠乏性貧血や炎症、出血後などの反応性の増加や、本態性血小板血症などの骨髄増殖性腫瘍のような病的な場合です。反対に減少するのは、肝硬変に伴う脾機能亢進、特発性血小板減少性紫斑病、播種性血管内凝固などです。いずれも加齢変化とは区別して考えます。
2.尿素窒素:正答。加齢によるネフロン数の減少と糸球体濾過量の低下で排泄が減るため、BUNは成人より高めになります。高齢者では脱水も加わりやすく、上昇がさらに強まることがあります。同じ腎機能の指標でも、血清クレアチニンは筋肉量の減少で上がりにくく、クレアチニンクリアランスは低下する、という違いを整理しておきます。
3.白血球数:白血球の総数は加齢で大きく変化せず、成人の基準値より高くなることはありません。加齢で低下するのは、好中球の遊走能・貪食能やT細胞の働きといった免疫の機能です。白血球が増えるのは、細菌感染症、副腎皮質ステロイドの投与、強いストレスなどの場合です。高齢者はむしろ感染時にも増加が目立たないことがあり、数値だけで感染を否定しないようにします。
4.食後血糖値:正答。加齢によってインスリン追加分泌の低下・遅延とインスリン抵抗性の増大が起こり、食後の血糖が上がりやすく、下がりにくくなります。空腹時の値は変化が小さいため、同じ血糖でも空腹時と食後を区別して覚えることが得点の分かれ目です。高齢者の糖代謝異常を見逃さないためには、食後や負荷後の値、HbA1cも含めて評価します。
5.AST〈GOT〉:ASTは肝細胞、心筋、骨格筋、赤血球に含まれる酵素で、細胞が壊れると血中に出てくる逸脱酵素です。加齢で肝重量や肝血流量は減りますが、ASTは通常基準範囲内に保たれ、加齢だけで高くなることはありません。上昇していれば、肝炎や薬剤性肝障害、心筋梗塞、横紋筋融解などの筋障害、溶血といった病的な原因を考えます。
覚えるポイント
- 加齢で高くなりやすい検査値・生理的指標は、尿素窒素、食後血糖値、収縮期血圧、残気量です。
- 加齢で低くなりやすいのは、クレアチニンクリアランス(GFR)、肺活量、血清アルブミン(軽度)、ヘモグロビン(軽度)です。
- 血清クレアチニンは筋肉量の減少で上がりにくく、基準範囲内でも腎機能低下が隠れていることがあります。腎排泄型薬剤の副作用に注意が必要です。
- 高齢者の耐糖能低下は「空腹時はあまり変わらず、食後が上がる」のが特徴です。口渇・多尿などの症状も出にくいと覚えます。
- 血小板数・白血球の総数・ASTは加齢だけでは大きく変わりません。白血球は数ではなく機能が低下するため、感染時にも白血球増加や発熱が目立たないことがあります。
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