112PM088|第112回 看護師国家試験 過去問

精神保健における三次予防はどれか。2つ選べ。

2つ選択
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正解: 1・4

正答

1.うつ病 depression 患者のリワーク支援を行う。
4.精神障害者の長期入院による自発性の低下を予防する。

この問題のポイント

精神保健の活動を一次・二次・三次予防に分けられるかを問う問題です。見るべき点は、その活動が「誰を対象に」「何を目的として」行われるかです。すでに発症して治療や療養の経過にある人について、機能の回復、二次的な障害の防止、再発防止、社会復帰を目指す活動が三次予防です。選択肢に「予防する」という語があっても一次予防とは限らない点も、この問題の注意点です。

解説

精神保健における予防の3段階

精神保健の予防の3段階は、キャプラン(Caplan, G.)が予防精神医学として体系化した考え方がもとになっています。

  • 一次予防:まだ発症していない人や地域住民全体を対象に、精神障害の発生を減らす段階です。心の健康についての普及啓発、ストレス対処の教育、職場や地域の環境改善、支援者の育成などが当てはまります。
  • 二次予防:発症初期の人や危機状態にある人を早く見つけ、早く治療や介入につなげる段階です。病気の期間を短くして重症化を防ぐことを目指します。相談窓口での把握、スクリーニング、受診勧奨、自殺の危険性の評価と危機介入などが当てはまります。
  • 三次予防:発症して治療を受けた人を対象に、能力障害や二次的な機能低下を防ぎ、再発を防いで、社会復帰と社会参加を支える段階です。デイケア、社会生活技能訓練(SST)、作業療法、就労支援、復職支援、退院支援や地域移行支援などが当てはまります。

問題文の手がかりと判断

選択肢1の「うつ病患者」「リワーク」からは、対象がすでに発症して休職している人であり、目的が職場への復帰と再休職の防止であることが読み取れます。したがって三次予防です。

選択肢4の「長期入院による自発性の低下」は、**施設症(ホスピタリズム)**を指します。これは病気そのものの症状ではなく、刺激や役割が少なく、自己決定の機会も乏しい入院環境が長く続くことで生じる二次的な障害です。意欲や自発性の低下、依存、社会生活技能の低下などが現れます。入院中の人にこうした低下が加わるのを防ぎ、地域生活へ戻る力を保つ取り組みは、「予防」という語が使われていても三次予防にあたります。

日本は精神病床の入院期間が長いことが課題とされてきました。そのため「入院医療中心から地域生活中心へ」という方針(精神保健医療福祉の改革ビジョン)のもとで、早期退院支援や地域移行支援が進められています。病棟の看護師は、入院早期から退院後の生活を見据え、生活リズムの維持、病棟内での役割、本人が自分で決める機会を意識して関わります。

一方、選択肢3は対象者が自殺未遂者ですが、行為は「希死念慮を確認する」ことです。これは今ある自殺の危険性を評価し、危機を早くとらえて治療や介入につなぐための行為なので、二次予防に分類されます。段階を判断するときは、対象者の状態だけでなく行為の目的まで見る必要があります。選択肢2と選択肢5は、発症していない住民や支援者に向けた活動なので一次予防です。

関連して問われやすい知識

職場のメンタルヘルスでは、労働安全衛生法にもとづくストレスチェック制度の主な目的は一次予防です。労働者が自分のストレスに気づくことと、職場環境を改善することが中心になります。これに対して、心の健康問題で休業した労働者の職場復帰支援は三次予防です。

選択肢の確認

1.うつ病 depression 患者のリワーク支援を行う。:正答。リワーク(復職支援)は、精神疾患で休職中の人を対象とする支援です。医療機関のデイケアや地域障害者職業センターなどで行われます。生活リズムの立て直し、集中力や作業能力の回復、再発のきっかけへの対処の学習を通して、円滑な復職と再休職の防止を目指すため、三次予防の典型例です。

2.災害時の精神的支援を行うボランティアを育成する。:災害が起きる前、あるいは被災者に心の不調が生じる前に、支援の担い手と体制を整えておく活動なので、一次予防に分類されます。同じ災害時の精神保健活動でも、被災後に不眠や強い不安を訴える住民を見つけて医療につなぐ活動は二次予防になります。災害後の心的外傷後ストレス障害と診断された人の生活再建や社会復帰を支える活動は三次予防になります。

3.自殺企図をして未遂だった人の希死念慮を確認する。:自殺未遂者は再び自殺を企図する危険が高い人です。その人の今の危険性を評価して、危機を早く見つけ介入や治療につなげる行為なので、二次予防にあたります。「すでに企図が起きた後だから三次予防」と考えやすい点に注意が必要です。治療を経た人の生活の立て直しや社会参加を支える内容であれば、三次予防の考え方に近づきます。

4.精神障害者の長期入院による自発性の低下を予防する。:正答。長期入院で生じる施設症(ホスピタリズム)は、発症後に加わる二次的な機能低下です。これを防いで生活能力を保ち、退院と地域生活につなげる取り組みは三次予防です。具体的には、早期退院支援、作業療法、社会生活技能訓練、病棟での役割づくりなどがあります。

5.統合失調症 schizophrenia のアンチ・スティグマ・キャンペーンを行う。:一般住民に正しい知識を広めて偏見や差別を減らす普及啓発活動なので、一次予防に分類されます。偏見が減れば受診しやすくなり、退院後に地域で暮らしやすくなるという効果もあります。ただし、活動そのものは患者本人への治療やリハビリテーションではなく、住民全体への働きかけです。

覚えるポイント

  • 一次予防は発生を防ぐ段階です(普及啓発、健康教育、ストレス対処教育、環境整備、支援者育成、アンチスティグマ活動)。
  • 二次予防は早期発見と早期介入の段階です(相談、スクリーニング、受診勧奨、自殺の危険性の評価、危機介入)。
  • 三次予防は機能回復、二次障害の防止、再発防止、社会復帰の段階です(リワーク、デイケア、SST、作業療法、就労支援、退院支援、地域移行支援)。
  • 段階は「対象者の状態」と「行為の目的」の両方で判断します。「予防」という語や「すでに起きた出来事」だけで決めつけないようにします。
  • 施設症(ホスピタリズム)は、長期入院の環境で生じる意欲や自発性の低下、依存、生活技能の低下です。これを防ぐことは三次予防です。
  • ストレスチェック制度の主目的は一次予防です。休業した労働者の職場復帰支援は三次予防です。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。 情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。 本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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