112PM089|第112回 看護師国家試験 過去問

Aちゃん(小学4年生、女児)は父親(40歳、会社員)、母親(40歳、会社員)、弟(小学2年生)と4人で暮らしている。交通事故で頸髄損傷となり、訪問看護を利用して在宅療養を開始した。Aちゃんはこれまで通っていた小学校に継続して通学することを希望している。Aちゃんの家族への看護師の対応で適切なのはどれか。2つ選べ。

2つ選択
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正解: 2・3

正答

2.弟の退行現象に注意するよう説明する。
3.Aちゃんが利用できる社会資源を紹介する。

この問題のポイント

頸髄損傷で在宅療養を始めた学童期の子どもと、その家族に訪問看護師がどう関わるかを問う事例問題です。手がかりは「本人が元の小学校への通学を希望している」「両親が共働きである」「小学2年生の弟がいる」の3点です。本人の希望を実現するための具体的な支援と、きょうだいを含む家族全体への配慮が求められます。判断の軸は、子どもの障害は家族全員に影響するという家族看護の考え方です。

解説

事例から読み取る情報

  • Aちゃん:小学4年生(9〜10歳)で学童期にあたります。エリクソンの発達課題では「勤勉性 対 劣等感」の時期で、友人関係や学校生活の中で自信と有能感を育てます。慣れた学校と友人のもとで生活を続けたいという希望は、発達の面からも大切にすべきものです。
  • 頸髄損傷:四肢の運動・感覚障害、排尿・排便障害、体温調節障害、呼吸機能の低下などが残りやすい障害です。通学には、移動の介助、校内のバリアフリー化、姿勢保持や排泄の支援が必要になります。損傷の程度によっては、導尿や吸引などの医療的ケアも必要です。
  • 両親:ともに会社員として働いています。ケアの担い手をどうするか、仕事とどう両立するかが課題になります。
  • 弟:小学2年生です。家族の変化の影響を受けやすい一方で、気持ちを言葉で十分に表すことはまだ難しい年齢です。

家族を1つの単位として支える

家族は、互いに影響し合う1つのシステムです。1人に重い障害が生じると、生活の時間配分、役割、経済状況、感情のすべてが変わります。Aちゃんが自宅に戻ると、両親の時間と関心はどうしてもAちゃんのケアに向きます。その結果、きょうだいは寂しさ、不安、嫉妬、「自分のせいでは」という罪悪感を抱えやすくなります。

こうした気持ちは、赤ちゃん返り、夜尿、指しゃぶり、過度の甘え、親から離れられないといった退行現象として表れることがあります。退行は防衛機制の1つで、ストレスを受けたときに、より幼い発達段階の行動に戻る反応です。

一方、登校しぶりなどの学校生活での変化や、腹痛・頭痛などの身体症状として表れることもあります。腹痛や頭痛は、心理的な負担が体に表れる反応(身体化)であり、退行とは区別します。防衛機制の分類でも、心理的な葛藤が身体症状に置き換わって表れるものは「転換」と呼ばれ、退行とは別の機制です。反対に、親に心配をかけまいと我慢して「よい子」を続ける場合もあります。

こうした反応が起こりうることを前もって家族に伝えておくと、家族は弟の変化に早く気づき、叱らずに受け止めることができます。あわせて、次のような関わりを助言すると、きょうだい支援が具体的になります。

  • 弟と1対1で過ごす時間をつくってもらいます。
  • 弟の年齢に合った言葉で、姉の状態を説明してもらいます。
  • 担任に家庭の状況を伝えておいてもらいます。

本人の希望を実現するための社会資源

元の学校への通学を実現し、家族の負担を減らすには、制度や支援を組み合わせる必要があります。看護師は、情報を提供して関係機関につなぐ役割を担います。

  • 教育:市町村教育委員会や学校との調整が中心です。具体的には、就学相談、段差の解消などの環境整備、介助を担う支援員の配置、特別支援学級などの選択肢の検討があります。障害者差別解消法に基づく合理的配慮を求めることもできます。医療的ケアが必要な場合は、医療的ケア児支援法(2021年施行)により、学校の設置者に看護師等の配置などの措置が求められています。
  • 福祉:身体障害者手帳の取得、補装具(車椅子など)の支給、日常生活用具の給付、居宅介護(ホームヘルプ)、短期入所によるレスパイト、放課後等デイサービスがあります。これらを組み合わせた利用計画は、相談支援専門員が作成します。
  • 経済・医療:特別児童扶養手当や障害児福祉手当(障害の程度や所得などの要件があります)、訪問看護、訪問リハビリテーションがあります。

正答に至る判断

この場面の看護師の対応は、次の4つの視点で評価できます。

  • 本人の意思を尊重しているか
  • 家族全員に目を配っているか
  • ケアの負担を分散できるか
  • 家族が気持ちを表出できるか

これらを満たすのは、きょうだいへの影響を予測して伝える選択肢2と、通学の希望を支えて負担を軽くする選択肢3です。反対に、選択肢1は本人の意思の尊重に、選択肢4は負担の分散に、選択肢5は気持ちの表出に反します。

選択肢の確認

1.特別支援学校に転校するよう勧める。:本人の「元の小学校に通い続けたい」という希望を、検討もせずに退ける対応です。2013年の学校教育法施行令改正以降、就学先は障害の状態だけでは決まりません。本人・保護者の意見、専門家の意見、学校の体制などを踏まえて、市町村教育委員会が総合的に判断します。その際、本人・保護者の意向はできる限り尊重されます。十分な情報を得たうえで、本人と家族が医療的ケアの体制などを考え、特別支援学校を選ぶことはありえます。しかしそれは、本人と家族が教育委員会や学校と相談しながら選ぶものであり、看護師が一方的に勧めるものではありません。

2.弟の退行現象に注意するよう説明する。:正答。両親の関心がAちゃんに集中すると、弟は寂しさや不安を抱えやすくなります。その結果、赤ちゃん返り、夜尿、甘えなどの退行現象や、腹痛・頭痛などの身体症状を示すことがあります。起こりうる反応を前もって伝えておけば、家族が早く気づいて受け止めることができ、家族全体の安定につながります。

3.Aちゃんが利用できる社会資源を紹介する。:正答。通学を実現し、在宅療養を続けるには、多くの支援が必要です。たとえば、教育委員会・学校との調整、合理的配慮、学校での看護師等の配置、身体障害者手帳、補装具、居宅介護、短期入所、各種の手当などです。これらを紹介して関係機関につなぐことは、本人の希望の実現と、共働きの両親の負担軽減の両方に役立ちます。

4.Aちゃんのケアは主に母親が行うよう助言する。:両親はともに働いています。母親1人にケアを集中させると、心身の疲労や離職につながりやすく、在宅療養を長く続けることも難しくなります。在宅療養では主にケアを担う人(主介護者)を把握しますが、それは看護師が特定の家族にケアを割り当てることとは違います。母親が担うものという前提で助言するのではなく、家族で話し合って役割を決められるよう支えます。ケアは、父親を含む家族での分担と社会資源の活用で支えるのが基本です。仕事との両立には、育児・介護休業法の介護休業なども選択肢になります。また、Aちゃん自身ができることを増やしていく視点も大切です。

5.事故については家族の間で話題にしないよう指導する。:事故の話題を避けさせると、家族それぞれが悲しみや怒り、罪悪感を1人で抱え込みやすくなります。弟が「自分のせいかもしれない」などと誤って理解したままになるおそれもあります。障害の受容には時間がかかるので、無理に話させる必要はありません。ただし、話したいときに話せる雰囲気を保ち、気持ちを表出できるよう支えることは看護師の役割です。

覚えるポイント

  • 子どもの病気や障害は家族全体に影響するため、きょうだいも看護の対象です。きょうだいの反応は、退行現象(赤ちゃん返り、夜尿、指しゃぶり、甘え)、身体症状(腹痛・頭痛)、学校生活での変化(登校しぶりなど)、「よい子」として我慢すること、に分けて整理します。
  • 退行は、より幼い発達段階の行動に戻る防衛機制です。葛藤が身体症状に置き換わる転換や、心理的な負担が腹痛・頭痛として表れる身体化とは区別します。
  • 学童期の発達課題は「勤勉性 対 劣等感」です。元の学校生活を続けることは、友人関係と自己肯定感を支える発達支援になります。
  • 就学先は、本人・保護者の意向を最大限尊重したうえで、市町村教育委員会が総合的に判断します。医療的ケア児が在籍する場合、学校の設置者は医療的ケア児支援法に基づき、看護師等の配置などの措置を講じます。
  • 社会資源は、次の4つに分けて整理します。教育(教育委員会・合理的配慮)、福祉(手帳・補装具・居宅介護・短期入所・相談支援)、経済(手当)、医療(訪問看護)です。
  • ケアは特定の家族に集中させず、家族内での分担と社会資源の活用で支えます。気持ちの表出は抑えさせず、家族のペースを尊重して支えます。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。 情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。 本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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