35Q79|第35回 介護福祉士国家試験 過去問
Eさん(87 歳,女性,要介護3 )は,介護老人福祉施設に入所していて,認知症(dementia)がある。ある日,担当のF介護福祉職がEさんの居室を訪問すると,Eさんは,イライラした様子で,「私の財布が盗まれた」と言ってベッドの周りをうろうろしていた。一緒に探すと,タンスの引き出しの奥から財布が見つかった。F介護福祉職は,Eさんのケアカンファレンス(care conference)に出席して,この出来事について情報共有することにした。 Eさんの状況に関する報告として,最も適切なものを 1 つ選びなさい。
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正解: 5
正答
5.「Eさんは,財布が盗まれたと言って,ベッドの周りをうろうろしていました」
この問題のポイント
介護における報告では、職員の推測や診断的な決めつけではなく、実際に見聞きした事実を具体的に伝えることが基本です。
本人が話した言葉はそのまま引用し、観察した行動を正確に報告すると、ほかの職員も状況を共通して理解し、適切なアセスメントにつなげられます。
解説
事実とは、「Eさんが『私の財布が盗まれた』と言った」「ベッドの周りをうろうろしていた」「タンスの引き出しの奥から財布が見つかった」など、実際に確認できた発言や行動です。
一方、「認知機能が低下した」「誰かに怒っていた」「もの盗られ妄想がある」「安心していると思う」は、観察した事実を基に職員が行った解釈や判断です。解釈が必要な場面もありますが、事実と混同して報告すると、ほかの職員に先入観を与え、本人の状態を誤って理解する原因になります。
選択肢5は、Eさんの発言をそのまま引用し、実際に観察した行動を具体的に伝えています。カンファレンスでは、この事実に加えて財布が見つかった場所、その後の表情や発言、同様の出来事の有無などを共有し、背景や必要な支援をチームで検討します。
ひっかけポイント
「もの盗られ妄想」は認知症でみられることのある症状ですが、一度の出来事だけで確定的に表現するのは適切ではありません。実際に財布が見当たらず不安になった可能性もあります。まず事実を報告し、その後にチームで経過や背景を分析します。
介護実践でのポイント
本人が「盗まれた」と訴えたときは、すぐに否定したり、認知症だからと片づけたりせず、不安な気持ちを受け止めて一緒に探します。記録や報告では、発生日時、本人の言葉、表情・行動、周囲の状況、職員の対応、見つかった場所、その後の反応を具体的に残します。職員の評価を書く場合は、観察事実と明確に分けます。
選択肢の確認
1.「Eさんの認知機能が低下しました」
誤りです。
一回の出来事だけでは、認知機能が以前より低下したとは判断できません。認知機能の低下という評価を行う前に、具体的な発言や行動、頻度、経過などの事実を共有する必要があります。
2.「Eさんは,誰かに怒っていました」
誤りです。
Eさんが特定の誰かに怒っていたことは、問題文から確認できません。「イライラした様子」や「財布が盗まれた」という発言から、報告者が推測した内容です。
3.「Eさんには,もの盗られ妄想があります」
誤りです。
一度財布が見つからずに訴えた出来事だけで、もの盗られ妄想があると断定するのは不適切です。まず本人の言葉と行動を事実として報告し、同様の出来事の反復や背景を検討します。
4.「Eさんは,財布が見つかって,安心していると思います」
誤りです。
「安心していると思います」は介護福祉職の推測です。安心したと判断するなら、表情が和らいだ、落ち着いて座った、本人が「よかった」と話したなど、その根拠となる観察事実を報告します。
5.「Eさんは,財布が盗まれたと言って,ベッドの周りをうろうろしていました」
正しいです。
Eさんが実際に話した言葉と、介護福祉職が観察した行動を具体的に報告しています。推測や診断的な表現を加えていないため、状況を正確に共有できます。
覚えるポイント
- 報告では、事実と解釈を区別する。
- 本人の重要な発言は、できるだけそのまま引用する。
- 一度の出来事だけで認知機能低下や妄想と断定しない。
- 日時、状況、対応、その後の変化まで一連の経過を共有する。
- 本人の訴えを頭から否定せず、不安な気持ちを受け止める。