37Q76|第37回 介護福祉士国家試験 過去問
Aさん(80歳、男性、要介護3)は、介護老人福祉施設に入所している。アルツハイマー型認知症(dementia of the Alzheimer’s type)が進行している。ある日の昼食時、介護福祉職がAさんに配膳すると、「お金はこれしかありません。足りますか」と小さくたたまれたティッシュペーパーを渡してきた。 このときのAさんに対する介護福祉職の対応として、最も適切なものを1つ選びなさい。
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正解: 3
正答
3.飲食店での会計の場面であると認識して対応する。
この問題のポイント
認知症のある人とのコミュニケーションでは、事実関係をすぐに訂正するのではなく、その人が体験している状況や、言動に込められた気持ちを理解して対応します。
Aさんは、配膳された昼食を飲食店の食事、小さくたたんだティッシュペーパーを支払いに使うお金として認識していると考えられます。
解説
Aさんは「お金はこれしかありません。足りますか」と言い、たたんだティッシュペーパーを渡しています。この言動から、Aさんは現在の状況を飲食店で食事代を支払う場面として認識し、「代金が足りるだろうか」と心配していると捉えられます。
認知症のある人が事実と異なる状況を認識しているときに、「ここは施設です」「これはお金ではありません」と正しさだけを伝えると、本人は否定された、恥をかかされた、わかってもらえないと感じ、不安や混乱が強くなることがあります。
介護福祉職は、Aさんが体験している会計の場面を受け止め、「ご心配ありがとうございます。代金は大丈夫ですよ」などと安心できるように応じ、その後、自然に食事を続けられるよう支援します。大切なのは、ティッシュペーパーを本物のお金だと評価することではなく、Aさんの言動の意味と「支払わなければならない」という気持ちを理解することです。
ただし、認知症のある人の認識に常に無条件で合わせればよいということではありません。本人や周囲の安全、権利、財産に重大な影響がある場合は状況を確認し、チームで適切な方法を検討します。この場面では危険がなく、まずAさんの不安を和らげる対応が求められます。
ひっかけポイント
目に見える物だけに注目して、「ティッシュペーパーの使い方を教える」「ティッシュペーパーが足りない」と判断しないことが大切です。「お金」「足りますか」というAさんの言葉から、本人が認識している場面と感情を読み取ります。
介護実践でのポイント
認知症のある人の言動を、単なる間違いや困った行動として扱いません。表情、言葉、周囲の状況、生活歴を手がかりに意味を考え、否定や叱責を避けて安心につながる言葉を返します。
選択肢の確認
1.ティッシュペーパーは、口の周りが汚れたら拭くものだと伝える。
誤りです。 物の本来の用途を説明してAさんの認識を訂正する対応です。Aさんが感じている「支払いは足りるか」という不安に応えておらず、混乱や自尊心の傷つきにつながる可能性があります。
2.ティッシュペーパーが不足しているサインとして受け止める。
誤りです。 Aさんはティッシュペーパーの補充を求めているのではなく、それをお金として差し出し、代金が足りるかを尋ねています。言葉と場面を総合して言動の意味を捉える必要があります。
3.飲食店での会計の場面であると認識して対応する。
正しいです。 Aさんが体験している状況と、支払いを心配する気持ちを受け止める対応です。安心できる言葉を返し、自尊心を守りながら自然に食事へつなげます。
4.食事に集中するように促す。
誤りです。 食事へ注意を向けさせるだけでは、Aさんの支払いに対する心配が解消されません。まずAさんの言葉を受け止め、不安に応じる必要があります。
5.小遣いの増額を家族に相談する。
誤りです。 この場面から、実際に所持金が不足しているとは判断できません。Aさんの言動を文字どおりの金銭問題として扱うのではなく、認識している場面と気持ちを理解します。
覚えるポイント
- 認知症のある人の言動には、本人なりの意味や理由がある。
- 事実と異なる発言をすぐに否定せず、本人が体験している状況と感情を理解する。
- 表面的な物や行動だけでなく、言葉、表情、場面、生活歴を合わせて考える。
- 正しさを教えることより、安心と自尊心を守る対応を優先する。
- 危険や権利侵害のおそれがある場合は、状況を確認してチームで検討する。