第105回

105AM019|第105回 助産師国家試験 過去問

助産業務と規定する法律の組合せで正しいのはどれか。

解答・解説を見る

正解1

正答

1.臍帯切断 ― 保健師助産師看護師法

この問題のポイント

助産業務やそれに関わる事項が、どの法律に根拠を持つかを問う問題です。助産師の定義、業務の範囲、業務上の禁止とその例外は保健師助産師看護師法が定めています。母子保健事業は母子保健法、不妊手術・人工妊娠中絶・受胎調節実地指導は母体保護法、助産所という施設のルールは医療法が定めています。「業務そのもの=保助看法、事業=母子保健法、施設=医療法」と整理できるかが鍵です。

解説

業務の根拠は保健師助産師看護師法

保健師助産師看護師法(以下、保助看法)は、第3条で助産師を「厚生労働大臣の免許を受けて、助産又は妊婦、じよく婦若しくは新生児の保健指導を行うことを業とする女子」と定義しています。助産は、助産師と医師にしか認められない業務独占の行為です。業務の範囲や、助産師が負う義務もこの法律に置かれています。

第37条は、保健師・助産師・看護師・准看護師に対し、主治の医師または歯科医師の指示がある場合を除いて、医師が行わなければ衛生上危害を生ずるおそれのある行為を禁じています。例として、診療機械の使用、医薬品の授与、医薬品についての指示が挙げられています。そのうえで、ただし書きで次の行為を例外として認めています。

  • 臨時応急の手当をすること
  • 助産師が「へその緒を切り、浣腸を施しその他助産師の業務に当然に付随する行為」をすること

臍帯切断は、この「助産師の業務に当然に付随する行為」の代表例として、条文に明記されています。

第38条は、助産師が妊婦・産婦・じょく婦・胎児・新生児に異常を認めたときは医師の診療を求めさせ、自ら処置してはならないと定めています。ここでも臨時応急の手当は除外されています。この2つの条文には、助産実践の基本構造が表れています。

  • 正常な経過は助産師が自律して扱う
  • 異常があれば医師につなぐ
  • 医師の到着を待てない緊急時(新生児の蘇生や分娩時の出血への初期対応など)は応急の手当を行う

この構造を理解しておくことは、医療安全と法的責任の両面で欠かせません。

保助看法には、助産師に固有の義務も定められています。

  • 応召義務
  • 出生証明書・死産証書・死胎検案書の交付義務(自ら分娩介助や検案をしないで交付することは禁止)
  • 妊娠4か月以上の死産児に異常を認めたときの、24時間以内の所轄警察署への届出
  • 助産録の記載と5年間の保存

その他の法律の守備範囲

  • 母子保健法:妊娠の届出、母子健康手帳の交付、妊産婦・乳幼児の健康診査、新生児・妊産婦・未熟児の訪問指導など、市町村が中心となって行う母子保健事業を定めています。助産師は訪問指導の担い手になりますが、事業の根拠はこの法律です。
  • 母体保護法:不妊手術と人工妊娠中絶を定めています。実施者の要件は両者で異なります。不妊手術は医師が行うことができると定められ、指定医師に限られていません。人工妊娠中絶は、都道府県医師会が指定する医師(指定医師)だけが行えます。受胎調節実地指導もこの法律に定めがあり、医師のほか、都道府県知事の指定を受けた助産師・保健師・看護師が行えます。
  • 医療法:助産所に関するルールを定めています。主な内容は次のとおりです。助産所は妊婦・産婦・じょく婦10人以上の入所施設を持てません。助産師が開設した場合は、開設後10日以内に届け出ます。分娩を扱う助産所は、嘱託医師と嘱託医療機関を確保しなければなりません。広告も制限されています。
  • 地域保健法:保健所や市町村保健センターの設置、地域保健対策の基本指針など、地域保健の体制を定めています。

選択肢の確認

1.臍帯切断 ― 保健師助産師看護師法:正答。保助看法第37条のただし書きは、助産師が「へその緒を切り、浣腸を施しその他助産師の業務に当然に付随する行為」をすることを、医師の指示がなくても行える行為として明記しています。臍帯切断は助産に不可欠な処置であり、根拠法は保助看法です。

2.臨時応急の手当 ― 母子保健法:臨時応急の手当を定めているのは母子保健法ではなく保助看法です。第37条(医行為の禁止の例外)と第38条(異常時に自ら処置してはならないことの例外)の両方に出てきます。第37条の例外は、助産師だけでなく保健師・看護師・准看護師にも共通です。母子保健法は、市町村が行う健康診査や訪問指導などの「事業」を定める法律で、個々の医療行為を行ってよいかどうかは規定していません。

3.妊産婦の訪問指導 ― 母体保護法:妊産婦の訪問指導は、母子保健法に基づく事業です。健康診査を行った市町村長が、保健指導を必要とする妊産婦のもとへ医師・助産師・保健師などを訪問させて行います。母体保護法は、不妊手術・人工妊娠中絶・受胎調節実地指導を定める法律です。「母体」という名称や、助産師が受胎調節実地指導を担えることから混同しやすいので注意します。

4.助産所に関する広告 ― 地域保健法:助産所は医療法に定められた施設です。助産師の業務や助産所について広告できる事項の限定、虚偽広告の禁止も医療法に置かれています。地域保健法は、保健所や市町村保健センターの設置などを定める法律です。助産所への立入検査の実務を保健所が担うことがあるため結びつけやすいのですが、立入検査の根拠も医療法です。

覚えるポイント

  • 助産師の定義・業務範囲・禁止行為とその例外は保健師助産師看護師法が定めます。第37条の例外は、臨時応急の手当と、へその緒を切る・浣腸などの当然付随行為です。第38条により、異常時は医師へつなぎ、臨時応急の手当だけは行えます。
  • 保助看法にある助産師の義務:応召義務、出生証明書等の交付義務、異常死産児(妊娠4か月以上)の24時間以内の警察署への届出、助産録の5年間保存。
  • 母子保健法は市町村の母子保健事業を定めます(妊娠の届出、母子健康手帳、健康診査、新生児・妊産婦・未熟児の訪問指導)。
  • 母体保護法は次の3つを定め、それぞれ実施者が異なります。不妊手術は医師、人工妊娠中絶は都道府県医師会の指定医師、受胎調節実地指導は医師または知事指定の助産師・保健師・看護師です。
  • 医療法は助産所を定めます(入所は9人まで、助産師開設は開設後10日以内に届出、嘱託医師・嘱託医療機関、広告の制限)。地域保健法は保健所・市町村保健センターの設置の法律です。
  • 守秘義務の根拠は職種で異なります。保健師・看護師・准看護師は保助看法ですが、助産師は医師と同じく刑法(秘密漏示罪)です。

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