第106回
106PM025|第106回 助産師国家試験 過去問
助産業務ガイドライン2019に基づき、正常分娩急変時に経産婦を助産所から搬送すべき状況はどれか。
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正解4
正答
4.破水後24時間経過したが陣痛が発来しない。
この問題のポイント
助産所で扱っている分娩の途中に起きた変化が、搬送すべき異常なのか、助産師が観察を続けてよい範囲なのかを見分ける問題です。判断の鍵は次の4点です。破水からの経過時間と上行性感染のリスク、母体発熱の基準(38.0℃)、遅発一過性徐脈が頻発しているかどうか、経産婦の分娩第2期の経過の見方です。各選択肢が、正常範囲、観察を強めて再評価する段階、搬送の対象のどれに当たるかを判定します。
解説
助産所の役割と搬送の考え方
助産所には医師がいません。そのため、分娩誘発のための子宮収縮薬の投与、抗菌薬による治療、手術など、医師の診断と指示が必要な医療は行えません。
- 保健師助産師看護師法第38条は、助産師が妊婦・産婦・褥婦・胎児・新生児に異常があると認めたときは、医師の診療を求めさせ、自ら処置をしてはならないと定めています(臨時応急の手当は除きます)。
- 医療法は、助産所の開設者に、嘱託する医師と病院または診療所を定めておくよう求めています。
日本助産師会の助産業務ガイドラインは、この枠組みを実務の基準にしたものです。妊婦を助産師が管理できるか、医師の管理が必要かを示す「妊婦管理適応リスト」や、分娩の経過中などに異常が生じたときの対応を示す「正常分娩急変時のガイドライン」が含まれています。搬送は、正常からの逸脱が明らかになり、医師による診断や処置が必要になった時点で判断します。
破水後24時間たっても陣痛が来ない場合
前期破水とは、陣痛が始まる前に卵膜が破れることです。正期の前期破水では、多くの場合、時間の経過とともに自然に陣痛が始まります。一方で、破水から時間がたつほど腟内の細菌が上行しやすくなります。その結果、絨毛膜羊膜炎などの子宮内感染や、新生児の感染症(B群溶血性レンサ球菌感染症など)のリスクが高まります。
ガイドラインは、破水後24時間を経過しても陣痛が発来しない場合を搬送の対象としています。この段階では、子宮収縮薬による分娩誘発、抗菌薬の投与、血液検査による炎症の評価が必要になります。いずれも医師の管理下で行うものなので、助産所で待機を続けることはできません。
実践では、破水を確認した時刻を記録し、羊水の色・量・臭い、母体の体温と脈拍、子宮の圧痛、胎児心拍数を定期的に観察します。内診は感染の機会になるため必要最小限にとどめます。24時間を待たずに、嘱託医療機関と情報を共有しておきます。
他の所見をどう評価するか
選択肢1〜3と5は、正常範囲の所見か、この時点だけではまだ搬送の判断に至らない所見です。頻度や閾値で基準が決められている所見は、「頻発しているか」「閾値を超えたか」で判断します。たとえば、遅発・変動一過性徐脈が子宮収縮の50%以上に伴って出現(頻発)しているか、母体の体温が38.0℃以上か、といった点です。基準に届かない段階では、観察を強めて再評価します。基準を超えたり、他の異常所見が加わったりした時点で、医師との連携・搬送に進みます。
ただし、この見方が使えるのは、こうした基準のある所見に限られます。次の所見は、1回出現しただけでも速やかに医師へ連絡し、搬送を判断します。
- 臍帯脱出
- 子癇発作
- 分娩時の異常出血
- 常位胎盤早期剥離を疑う症状(持続する腹痛、子宮の硬直、性器出血など)
- 高度の遷延一過性徐脈(15bpm以上の心拍数低下が2分以上10分未満続く遷延一過性徐脈のうち、最下点が80bpm未満のもの)
問題文の「経産婦」は、選択肢5を判断するための条件です。経産婦は初産婦より分娩の進行が速いため、分娩第2期の経過も初産婦とは分けて考えます。
選択肢の確認
1.羊水が淡黄色である。:羊水は無色透明〜淡黄色透明で、妊娠末期には胎脂や剥がれた皮膚の上皮、毳毛などが混じって乳白色に濁って見えることもあります。いずれも正常な性状です。淡黄色は異常所見ではないため、搬送の理由にはなりません。注意すべきなのは、胎便による黄緑色〜緑色の混濁です。胎児の低酸素状態を反映していることがあるため、胎児心拍数とあわせて評価し、医師との連携を判断します。「色がついている=異常」と取り違えないようにします。
2.母体の体温が37.8 ℃である。:搬送の目安となる母体の発熱は38.0℃以上で、37.8℃はこの基準に達していません。分娩中は、陣痛や努責、脱水、室温などでも体温が軽く上がることがあります。この段階では水分補給を促し、時間をおいて再検します。あわせて、母体の脈拍、子宮の圧痛、羊水や腟分泌物の臭い、胎児の頻脈の有無を観察します。臨床的絨毛膜羊膜炎は、38.0℃以上の発熱に、母体頻脈、子宮の圧痛、腟分泌物や羊水の悪臭、白血球増加などを組み合わせて診断します。体温が上昇を続けたり、感染徴候が加わったりすれば、搬送の対象になります。
3.単発の遅発一過性徐脈がある。:遅発一過性徐脈は、子宮収縮に伴って心拍数が緩やかに(下降の開始から最下点まで30秒以上かけて)低下し、その最下点が子宮収縮の最強点より遅れて現れる一過性徐脈です。多くの場合、下降の開始・最下点・回復が、それぞれ子宮収縮の開始・最強点・終了より遅れます。最下点が子宮収縮の最強点とほぼ一致するものは、児頭圧迫によって起こる早発一過性徐脈です。両者は、最下点の時間的な位置で区別します。遅発一過性徐脈は、子宮胎盤循環の不全による胎児の低酸素を示唆する所見です。ただし、一過性徐脈は種類(早発・変動・遅発・遷延)、程度(軽度・高度)、心拍数基線、基線細変動を組み合わせ、胎児心拍数波形のレベル分類で評価します。遅発・変動一過性徐脈は、頻発している場合に判定の対象とします。1回だけの出現で、ただちに胎児機能不全として搬送するものではありません。まず側臥位への体位変換などを行い、分娩監視装置で連続して監視し、心拍数基線、基線細変動、その後の子宮収縮に伴う徐脈の有無を確認します。頻発するようになれば、医師への連絡と搬送の対象になります。基線細変動の減少を伴う場合は、さらに重く評価します。
4.破水後24時間経過したが陣痛が発来しない。:正答。破水から時間がたつほど上行性感染のリスクが高まるため、ガイドラインは破水後24時間を経過しても陣痛が発来しない場合を搬送の対象としています。分娩誘発や抗菌薬の投与は医師の管理下で行うもので、助産所の対応範囲を超えます。
5.子宮口全開大から1時間経過したが分娩が進行しない。:経産婦の分娩第2期は初産婦より短いのが一般的です。しかし、全開大から1時間の時点で進行がみられないというだけでは、ただちに搬送すべき状況とはいえません。この段階では、陣痛の強さと間隔、児頭の下降度と回旋、膀胱の充満、母体の疲労、胎児心拍数を評価します。排尿を促したり体位を工夫したりしながら、経過を観察します。進行が止まった状態が続く場合は、回旋異常などが隠れていることもあるため、早めに嘱託医療機関と情報を共有します。遷延が明らかになったときや、胎児心拍数の異常を伴うときは、搬送を判断します。
覚えるポイント
- 破水後24時間を過ぎても陣痛が発来しなければ、上行性感染のリスクが高まり、分娩誘発や抗菌薬投与が必要になるため搬送します。破水時刻の記録、体温・脈拍・羊水の観察、内診を最小限にすることが基本です。
- 搬送を判断する代表的な状況として、妊娠37週未満の破水や陣痛発来、母体の38.0℃以上の発熱、頻発する遅発一過性徐脈などの胎児心拍数波形の異常を押さえます。
- 羊水は無色透明〜淡黄色で、乳白色に濁ることもありますが正常です。黄緑色〜緑色の混濁(胎便)は、胎児の低酸素を疑う所見です。
- 遅発一過性徐脈は最下点が子宮収縮の最強点より遅れ、早発一過性徐脈は最下点が最強点とほぼ一致します。一過性徐脈は、種類・程度・心拍数基線・基線細変動を組み合わせてレベル分類で評価します。遅発・変動一過性徐脈は、頻発(子宮収縮の50%以上に伴う)かどうかが要点です。
- 頻度や閾値で基準が決まる所見は、基準に届かなければ観察を強めて再評価します。ただし、臍帯脱出、子癇発作、異常出血、常位胎盤早期剥離を疑う症状、高度の遷延一過性徐脈(最下点80bpm未満)は、1回でも速やかに医師へ連絡し、搬送を判断します。
- 保健師助産師看護師法第38条により、助産師は異常を認めたら医師の診療を求めさせ、自ら処置はしません(臨時応急の手当は可能です)。
掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。
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