第105回
105AM044|第105回 助産師国家試験 過去問
次の文を読み44〜46の問いに答えよ。Aさん(38歳、初産婦)は妊娠40週3日。胎児心拍数陣痛図で変動一過性徐脈を認め、吸引分娩で3,800 gの男児を出生した。出生直後の児は、啼泣がなく、筋緊張は低下し、羊水混濁は認めなかった。直ちに蘇生を行った。バッグ・マスク換気による人工呼吸を継続していたところ、上腹部の腹部膨満を認めたため、胃管を挿入することとした。胃管挿入の手技として正しいのはどれか。2つ選べ。
解答・解説を見る
正解2・5
正答
2.胃管を自然開放する。
5.鼻の付け根から外耳孔までの長さと外耳孔から剣状突起と臍の中間までの長さを足した長さを挿入する。
この問題のポイント
新生児蘇生でバッグ・マスク換気中に起こる胃膨満に対して、胃管をどう挿入し管理するかを問う問題です。「上腹部の腹部膨満」は、換気で送った空気が食道から胃へ流れ込んだサインです。胃管の目的は胃を減圧して換気を改善することであり、経路・太さ・挿入長・挿入後の管理をこの目的と結びつけて理解しているかが鍵になります。
解説
事例の整理
Aさんは38歳の初産婦で、妊娠40週3日です。胎児心拍数陣痛図で変動一過性徐脈(臍帯圧迫を示す所見)を認め、吸引分娩で3,800gの男児が生まれました。児は出生直後に啼泣がなく、筋緊張も低下しています。これは「元気でない新生児」にあたるため、直ちに蘇生の対象になります。羊水混濁はありません。
日本版新生児蘇生法(NCPR)では、まず初期処置として保温、体位保持、気道開通、皮膚乾燥と刺激を行います。その後、自発呼吸がない(あえぎ呼吸を含む)か、心拍数が100/分未満であれば人工呼吸を始めます。開始の目標は生後60秒以内で、換気回数は1分間に40〜60回です。本問はこの人工呼吸を続けている場面です。
なぜ胃が膨れ、なぜ減圧が必要か
マスクによる陽圧換気では、送った空気の一部が気管だけでなく食道にも入ります。換気が長引いたり換気圧が高かったりすると胃が膨らみ、次の問題が起こります。
- 膨らんだ胃が横隔膜を押し上げ、肺が十分に広がらず換気効率が落ちる
- 胃内容物が逆流し、嘔吐や誤嚥を起こすおそれがある
そのため、マスク換気が数分以上続く場合や腹部膨満が見られた場合には、胃管を入れて胃の空気と内容物を抜きます。
蘇生時の胃管挿入の手順
- 経路は口から:新生児は主に鼻で呼吸し、鼻腔も細いです。鼻から管を入れると鼻腔の一部がふさがれて気道抵抗が増え、換気の妨げになります。
- 太さは8Fr程度:Fr(フレンチ)は外径(mm)の3倍にあたる単位で、8Frは外径約2.7mmです。細すぎる管は空気の排出が遅く、内容物で詰まりやすくなります。
- 挿入長は体表で測る:鼻の付け根(鼻根部)から外耳孔まで、さらに外耳孔から剣状突起と臍の中間点までを足した長さにします。挿入前にこの長さを測り、胃管に印をつけておきます。
- 挿入後は吸引してから開放:シリンジで胃内の空気と内容物を吸引して減圧します。吸引できることは、先端が胃内にあることの確認にもなります。その後シリンジを外し、胃管の端を開放したままにします。こうすると換気中に入り続ける空気が自然に抜けます。胃管は頬などにテープで固定します。
- 換気の中断は最小限に:挿入後はすぐにマスク換気を再開し、胸の上がりと心拍数を評価し直します。
臨床では、腹部膨満に気づいたら胃管で減圧するとともに、マスクの密着や頭部の位置、換気圧が適切かも見直すと、有効な換気を保ちやすくなります。
選択肢の確認
1.鼻から挿入する。:新生児は鼻呼吸が主体で鼻腔も細いため、経鼻の管は鼻腔を一部ふさいで気道抵抗を増やし、蘇生中の換気を妨げます。蘇生中の減圧を目的とする胃管は、口から入れるのが原則です。NICUで状態が安定した児の栄養チューブなどでは経鼻を選ぶ場面もあるため、「蘇生中の減圧なら経口」と目的と組み合わせて覚えます。
2.胃管を自然開放する。:正答。バッグ・マスク換気を続ける限り、空気は胃へ入り続けます。吸引で一度減圧した後も胃管の端を閉じずに開放しておけば、それが空気の逃げ道になります。これにより再び膨満するのを防ぎ、横隔膜の動きを保って換気を助けます。
3.4Frの胃管を選択する。:4Frは外径約1.3mmと非常に細く、空気を抜くのにも吸引にも時間がかかります。内容物で詰まりやすいため、減圧の目的を果たせません。蘇生時の胃の減圧には8Fr程度の胃管を用います。数字だけを入れ替えた選択肢に惑わされないよう、「8Fr」を確実に覚えておきます。
4.胃内容物の吸引を避ける。:胃管を入れる目的は、胃の空気と内容物を抜いて減圧することです。そのため挿入後はシリンジで吸引し、同時に先端が胃内にあることも確認します。なお、出生直後の元気な児に対する咽頭の奥や胃のルーチン吸引は、迷走神経反射による徐脈や無呼吸を招くため勧められていません。ただしこれは、本問のように膨満を減圧する必要がある場面とは別の話です。
5.鼻の付け根から外耳孔までの長さと外耳孔から剣状突起と臍の中間までの長さを足した長さを挿入する。:正答。これは新生児の胃管挿入長の標準的な測り方で、鼻根部から外耳孔、外耳孔から剣状突起と臍の中間点、の順に体表で測ります。成人でよく使われる「鼻から耳、耳から剣状突起まで」の測り方を新生児に当てはめると、先端が食道下部にとどまりやすくなります。剣状突起と臍の中間まで取ることで、先端を確実に胃内に置けます。
覚えるポイント
- マスク換気が長引いたり腹部膨満が見られたりしたら、胃管で減圧します。目的は、横隔膜の押し上げによる換気障害と、嘔吐・誤嚥を防ぐことです。
- 蘇生時の胃管は「経口・8Fr程度」です。経鼻は、鼻呼吸が主体の新生児の気道抵抗を増やします。
- 挿入長は「鼻根部〜外耳孔」+「外耳孔〜剣状突起と臍の中間点」です。
- 挿入後は、吸引で減圧→シリンジを外して開放のまま→テープ固定の順に行い、換気の中断は最小限にします。
- NCPRの基本数値:人工呼吸は、無呼吸(あえぎ呼吸を含む)または心拍数100/分未満で開始し、生後60秒以内を目標に、40〜60回/分で行います。有効な人工呼吸を30秒行っても心拍数が60/分未満なら胸骨圧迫を加え、圧迫と換気の比は3:1です。
掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。
問題文・正答・解説に誤りを見つけたら、この問題の誤りを報告する(medixmatch2025@gmail.com)までお知らせください。確認して修正します。
解いた記録を残して、苦手な問題をもう一度。
学習アプリなら、この問題の解答記録・メモ・暗記カード化を使えます。